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中編4
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ポスト

『こないだのお礼をしようと思うんだ。』

先日のメリーさんの件があり、今日は彼に夕飯をご馳走しようと思った

「料理なんかできるのか?」

彼はテーブルに肘をつき私の漫画を読んでいる

「任せてよ~、漫画で読んで知識はあるんだから!おはだけさせてやる」

「おはだけ?」

「特別な材料や調味料なんてないから簡単なものだけしか作れないけどね~」

サラダ、肉じゃが、オムライス、和と洋が入りまじってるけど良いだろう

彼はそんなこと気にしないだろう

「おあがりよ」

結構良くできた…つもり

「おぉー、意外と良さげだなぁ」

パチン

彼は目を閉じ手を合わせる

「いただきます。おぉー、うまいじゃないか」

彼は笑いながらそう言ってくれた

「素直な感想だねぇ」

正直意外な反応だった

茶化したり、憎まれ口を聞くかと思ったけど

「ん?作ってくれる人には素直に感謝を伝えるさ、飯を作るって大変だし、めんどくさいもんだからなぁ」

彼の食生活は正直心配になるときがある

めんどくさがりなところがあるから

煙草吸ってると食欲がおさまる気がしてねぇ

なんて言ってたりする

たぶん、夕飯とかは平気で抜いてるんだろう

心配だ

「そうだ知ってる?

最近ポストにイタズラされる人が多いらしいよ

イタズラの規模は様々なんだけどさ

同じチラシを何十枚も入れられたり

ポストの中身を全部出されてたり

変なもの入れられてたりさ」

「そりゃ迷惑な話だなぁ」

私の友達も被害にあった子がいる

「でもさ、学生向けのアパートにあるポストなんかには鍵がないのが多いし、自分でつけなきゃいけねぇなぁ

他人のポストにそんなことする神経がわからんなぁ」

「私も外に設置されてるポストには鍵つけたよ~」

「それがいいな」

それからは他愛もない話をして夕飯を食べた

パチン

「ごちそうさまでした。洗い物くらいは俺がしよう」

「え、いいよ~」

「いいって、任せなさい」

……………………………………………………

このスポンジめっちゃ泡たつなぁ

いいなぁ

汀の家の台所は玄関を入ってすぐ右にある

玄関越しに外の音が入ってくる

コツコツコツコツ…

外を歩く音

カタン…

玄関のドアにポストがくっついてるやつがある

汀宅のドアがまさにそれ

何かポストに入ったらしい

あぁ、うちのポストにもたまってるんだろうなぁ

やたらとチラシを放り込まないでもらいたいな

「洗い物終わったよ」

「ありがとう~」

時間は22:00

「そろそろ帰るな、今日はありがとう」

「いいえ~」

そう伝え、玄関まで向かう

「あ、また何か広告かなぁ

やめてほしいなぁ」

腰を屈め靴紐を結ぶ俺を尻目に汀がポストを開けようとする

「汀!!」

とっさだった

俺は前にいた汀を自分の方に抱き寄せる形で尻餅をついた

「え?え?なに?!」

「すまん。…汀、離れてろ」

ガタンっ!

ポストを蹴りあげた

「なにしてんの?!」

カタンカタンカタン…

「汀、バスタオルを2枚ほど貸してくれ」

「私のバスタオルを何に使うの…?」

いかがわしいものを見る目で俺を見る汀

「そんな目で見るな…いいから貸せ」

受け取ったバスタオルを右腕に巻きポストを開ける

カタン…カタカタカタ…

「ナイフ…?」

「あのまま開けてたら…」

「開けた衝撃で落ちてきて腕を切ってたかもな、最悪刺さってたろうな」

ポストの入れ口にナイフを挟み、開けた衝撃で滑り落ちるように仕組まれていた

「どうしてわかったの?」

「汀はポストに平行から見てたけど、俺は靴紐も結んでたからな、汀より下から見上げる形でポストを見たのさ。そしたら、鈍く光る刃が見えたのさ」

汀宅のポストは普通より少し高くつけられていて、開け口は透明プラスチックでできている

ナイフは平行目線からは見えず、下から覗きこむと見えるようになっていた

「どうして、私に…」

「さっき汀が話してたのと同じやつの仕業なら偶々だろうな。ここまでくると、イタズラじゃすませられない」

そういって、警察に電話をした

状況説明など一通り終わり、解散した

「もう大丈夫さ、同じ家に何度も仕掛けるようなリスキーなことはしないさ」

「うん。ありがとう」

「ちゃんと寝ろよ。またな」

俺は家へ帰った

1つだけ、汀には伝えていないことがある

あの時、俺がポストを見たとき

挟んだナイフの隣の隙間から誰かが覗いていた

やつはたぶん、ナイフが落ち、刺さるところを見ようとしたのだろう

俺が気づいたことに気づいた奴の恨みのこもったような、激しい怒りのようなあの目を忘れられない

Concrete
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