【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
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居場所

私メリー

今公園にいるの。

「こんなのが来たのよ。」

目の前で煙草を吸ってる彼に携帯画面を見せた。

「ふーん。公園にいるのかぁ。それで?」

彼は全く興味を示さない。

「気持ち悪いでしょ?」

「まぁ、そうだね。既読スルーしてんの?」

「そりゃそうでしょ。返事なんてしないよ。」

そう返すと、彼は私の携帯を素早くとり、流れるような手つきで返信した。

「あー!!!なにすんの?!」

「返事。既読スルーは可哀想だろ?ははっ」

なんて、笑いながら言いやがった。

机の上にある彼のライターで前髪を炙ってやろうかと本気で思った。

『どこの公園?』

彼の返信内容。

「どこの公園にいるかわからないと近いのか遠いのかわからないだろ?」

あまり的外れなことを言ってる訳じゃないから反論に困る。

そもそも、彼に口で勝てるとは思っていないけど。

「ま、返事を待ってなさいよ。怖がるのはそれからでも遅くないさ。メリーさんの送り間違えってこともあるしな。」

私メリー

A公園にいるわ

返事がきた

ただ、私の文章に既読はついてない。

私のってより、彼が送ったものだけど。

A公園、私の家に一番近い公園。

どうしよう。いや、迷ってる暇なんてない

トゥルルル

「…どした。」

寝ていたのだろう。声に元気がない。

けど、私も切羽詰まってる

付き合わせよう。

「メリーさんから返事が来た…」

「…そうか。今から行く。」

30分ほどして彼がうちに来た。

寝起きで急いで身支度して来てくれたのだろう。

長めの髪がボサボサになってる。

そして、大きめの段ボール箱を抱えている。

「ねぇ、その箱何?」

「気にするな。…返事見せてくれ。」

「あ、うん。」

彼に携帯を渡す。

「ふーん。」

「あ!また!」

彼はまた勝手に返信をした。

公園になんていないで、うちに来なさい。

これが彼の送った内容。

「何でこんなこと?!」

「近づいてくるから怖いんだろ?だったら、いっそのこと呼んでしまった方が早いだろ。」

彼らしい理屈。

「メリーさんが来る前に少し話をしようか。

メリーさんが家に来てしまったらどうなると思ってる?」

「それは、最後はメリーさんに殺される。」

「そう、それがそもそもの問題だ。メリーさんってのは人形だ。

人形ってのは、ともに時間を過ごし、ともに遊び、ともに感情を共有したりするものだろ?どうして人を殺す必要がある?」

「それは、相手にされなくなったから?」

「考えられないことではないな。でも、殺すのが目的ならさっさと殺してしまえばいい。目的地の家の場所を知ってるんだからさ。」

「だんだん近づいてくる恐怖を味あわせたい?」

「殺すのが目的なら自分の居場所なんて言わないさ、逃げられちまうからな。

メリーさんが家に『来てしまったら』殺されてしまう。その方が人の記憶に残る話になる。」

ヴーっ

携帯にメッセージが届く。

私メリー

今あなたの家の前にいるの

「来たか。」

「どうしたらいいの?」

「入ってこいって言えばいいさ。鍵なんて関係ない、鍵で拒めたりはしないよ。」

入っておいで。

そう返事をした。

ガチャ

入ってきた。

トン…トン…トン…

近づいてくる。

キーっ…

ドアが開く。

そこには、綺麗な女の子の人形が立っていた。

「やぁ、いらっしゃい。」

彼はそう言った。

「お招きありがとう。」

メリーさんは小さくお辞儀をした。

ホントに来た…

「どうして私だったの?!」

聞きたくて仕方なかったこと、言いたかった言葉を投げ掛けた。

「あなたを選んだのはたまたまなのよ?あなたが目についただけ。」

想像していたメリーさんとは全くちがった。

私の中のメリーさんは人に恨みをもち、憎んでいるものだと思ってた。

「そもそも、人とともに過ごす人形は人を殺したりはしない。人を殺すために作られたものじゃないからな。

…さて、メリーさん。彼女は君が怖い。それは仕方がないと割りきってくれ。」

「はい…。」

はぁ…

彼が小さくため息をついたように見えた。

「人形を壊すってのは、いい気がしない。だから、メリーさん、うちに来るか?」

え?彼はとんでもないことを口にした。

「え?!」

私よりもメリーさん自身が驚いた。

「居場所がないってのは…辛いからな。」

ガサゴソ…

持ってきていた段ボールを開き中からなにかを取り出した。

ドールハウス…

「きみはもう一人じゃない。

もとの持ち主じゃなくて寂しいかもしれないが、

俺がいる。」

そう彼が言うと。

メリーさんはドールハウスへ吸い込まれるように入った。ように、私には見えた。

いらっしゃい。メリーさん。

彼は小さく、ドールハウスへ語りかけた。

「さ、これでおしまいだ。」

「え?!メリーさんは?!」

「見てたろ?この中だ」

彼はそう言ってドールハウスを持つ手を上げた。

「子供は成長し、いつしか人形を忘れてしまう。人形自身も覚悟はしてただろうけど、やっぱり寂しかったのさ。汀は人形とかぬいぐるみ好きだろ?ホントに偶然で偶々、そんな汀を相手にメリーさんが憑いたのさ。

…居場所がないなら、作ってやればいい。迎えてやればいい。ただ、それだけだ。」

彼の言った言葉を頭のなかで整理しようとした。

言われたことの意味はわかる。けど、どこか見たもの等が現実離れしたように思えて、理解できなかったりした。

「んじゃぁ、これ。よろしく。」

4800円…彼が寄越して来たドールハウスの領収書だけは理解した。

君は人形には優しいのに、私のお財布には優しくないのね…

そうだ、

一人でドールハウス買いに行ったのかな?……今度聞いてみよう。そう思った。

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SANTA様
ありがとうございます!
人と一緒に過ごすための人形が人を襲うのはなんか違うんじゃないかって昔から思ってて
こういう話があっても良いじゃないかってことで書かせていただきました\(^^)/

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心温まる話ですね( ^ω^ )

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