~~~
さて、前回の粗筋。
一学期も終わりに近付いて来たある日、俺は、メノフィリア(生理血フェチ)の友人、田中から《ダラダラ子》なる幽霊の噂を聞いた。
足の間からダラダラと血を流す小学生の霊。其れが《ダラダラ子》なのだそうだ。
変態田中は其のダラダラ子に興味津々らしく、見に行こう見に行こうと五月蝿い。
更に、隣のクラスの三島までが加わりたいと言い出した。この三島言う男、言動が色々と危ない。
興奮でテンションの可笑しくなった田中と、ナチュラルボーンでヤバいオーラを漂わせている三島。
そんな二人は今日の放課後、早速、ダラダラ子が出るという公園に行ってみるらしい。
「本当に血、流してんのかな・・・。だとしたら、カメラ・・・いや、流石にアウトか?」
「小学生だとしたら、やっぱり高学年かな。生理始まっちゃってるんだし。高学年かぁ・・・。」
nextpage
見知らぬ彼女の貞操が心配になった俺は、二人との同行を決意したのだった。
nextpage
~~~
「・・・で、どうして私を巻き込んだんですか。このクソ猿が。」
同行を決意したは良いものの、あの変態共を一人でセーブする自信の無い俺は、オカルト柄みの事に強い知り合いを巻き込んだ。
「おい聞いてるんですか。クソ猿。」
・・・いや、今更ではあるのだが、抑、どうして俺が、そこまでして、あの変態二人を止めねばならないのだろうか。
「クソ猿、クソ猿ってば。」
でも、此処で放っておいて奴等が何かやらかしたら、良心が痛む。非常に申し訳無い。
「とうとう言語まで忘れたか。此のクソ猿が。」
「おい。返事しろ。」
「・・・・・・・・・チッ!」
隣の奴が盛大に舌打ちをした。
・・・これ以上無視を決め込んでいたら、帰られてしまうかも知れない。
俺は小さく溜め息を吐き、言った。
「クソは止めろ。狐目。」
「じゃあ、馬鹿猿が。」
「其れも止めれ。」
「・・・・・・駄猿が?」
「・・・よし許す。駄猿は許す!」
「で、理由はなんですか。駄猿。巻き込むのなら話せ。そうでないなら今すぐ帰らせろ。」
不遜な態度でそう言って、目の前の狐目・・・基、昔からの知り合い《木葉》は大きく鼻を鳴らした。
nextpage
~~~
俺が説明を終えると、木葉は露骨に嫌そうな顔をした。
「アレを見に行くんですか。悪趣味な。」
「見たことがあるのか。」
木葉は更に嫌そうな顔で頷く。
「ええ。嫌なものを見てしまいました。」
「嫌なものって・・・グロいとか?」
首を横に振る。若干涙目になっている気さえした。
「いいえ。見た目は普通です。比較的には。」
「危険だとか。」
「いいえ。何もしてきませんよ。」
「じゃあ、何が・・・」
「後悔しますよ。きっと。私は別に構いませんけどね。」
言葉を遮った声は、重かった。
nextpage
~~~
ダラダラ子が出るという公園は、夕暮れに照らされながら静まり返っていた。
古びていて、今にも崩れてしまいそうなブランコ。池とも呼べない人工の浅い水溜まり。滑る所が錆でガビガビになっている滑り台。
其処に設置されている遊具は、どれもこれも時代に取り残されたような物ばかりだ。
おまけに、公園なのに、子供どころか俺達以外誰も居ない。
「静かだね。他の子供はどうしたんだろう。」
三島が言う。
答えたのは木葉だ。
「もう五時を過ぎていますからね。家に帰ったのでしょう。」
威嚇的な言い方だ。気が立っているのだろう。
「彼女は、此方に居ます。」
そう言い放ってさっさと歩き出す。
見たことがあると言うだけあって、場所を知っているらしい。
田中が携帯電話を手に、真っ先にイソイソと付いて行った。
nextpage
~~~
此の公園は一寸した林の中に有る。いや、公園の中に林っぽいスペースが有ると言った方が正しいか。
木葉が俺達を連れて来たのは、そんな林スペースの隅に設置されている東屋・・・の裏手の茂みだった。
見ると、壁の向こうに、小さな頭の上の部分が見える。
暫く見ていると、東屋から誰かが出てきた。
nextpage
~~~
出てきたのは小学校低学年くらいに見える、小さな女の子だった。
色褪せたピンクの安っぽいワンピース。
ボロボロでブカブカのサンダル。
「・・・アレが《ダラダラ子》ですよ。」
木葉が小さな声で呟く。
彼女の白い足を、赤い液体が伝っていた。
作者紺野-2
どうも。紺野です。