中編3
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ズリズリさん・10

雨の中を全速力で走ったので、すっかり服が汚れてしまった。

石段を駆け上がり、鳥居をくぐり、お宮の中へ逃げ込む。

何時もの公園付き神社には誰も居なくて、何だか精彩を欠いているような気がした。

「着いたね。」

ピザポがポツリと呟いた。

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・・・・・・・・・。

持ってきたスポーツタオルだけでは追い付かず、結局、僕らはお宮の縁側でジャージへと着替えた。

我が校のジャージは見た目がダサいことで有名なので、学校の外で着るのは酷く恥ずかしかった。

「雨、夜には止むって。そしたら帰れるよ。」

携帯電話を確認したピザポが、僕の方を向いて言う。

「うん。」

どこかぼんやりと雨粒が落ちるのを見ながら、僕は頷いた。

全力疾走したからだろう。体が酷く重く、眠たかった。

雨はまだ暫く止まなさそうだ。少し眠るぐらい大丈夫だろう。

僕はお宮の外壁に寄り掛かり、目を閉じた。

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・・・・・・・・・。

揺すぶられて目を覚ました。

目の前を見ると、薄い茜色の空が見えた。

「思ったより早く上がった。」

横でピザポが言ったのは、恐らく独り言だろう。

「帰るか。」

「うん。」

どちらともなく立ち上がり、ゆっくり歩き出す。

少し先を歩いているピザポが言った。

「聞かないの?」

「何を。」

「ズリズリさんのこと。」

ピザポが立ち止まり、ゆっくりと此方を向く。

振り返った彼は、軽く目を伏せていて、決まり悪そうにしていた。

「聞いてほしいのか。アレはなんなのかって。」

「うん。」

「じゃあ、聞く。アレは、何だ。」

ピザポは小さく頷き、答えた。

「ズリズリさんは、神様だよ。」

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・・・・・・・・・。

「淋しい子供を助けるのが、ズリズリさん。」

「どういうことだ?」

「普通の子供とかにとっては妖怪だけど、いじめられっ子とかぼっちにとっては助けてくれる神様的なポジション。祠っぽいのがあって、其処に何か供えるんだ。」

「何かって・・・」

「何でもいいんだよ。お菓子でも、花でも・・・文房具供えた奴も居たみたいだし。俺は三角飴。またまポケットに入ってた奴。」

「ああ、だから・・・・・・。」

「さっきコンちゃんにあげたのも同じ奴。友達が出来たら助けてくれなくなる。」

「助けてくれるって・・・。どうやって。」

「いじめられてる子なら、そのいじめてる相手を引き摺ってくれる。ぼっちには友達になってくれる・・・ってさ。」

「友達ってそれ、アレが友達って。」

「慣れだよ。慣れ。コンちゃんも最初からミズチ様大丈夫だったわけじゃないじゃん。」

「・・・へぇ。」

「高校入ってから実家帰ってなかったからかな。放置しすぎて来ちゃったみたい。」

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・・・・・・・・・。

僕らは喋りながらも、また歩き出していたのだが、僕はピザポの言葉に驚き、思わず立ち止まってしまった。

「帰ってない・・・まさか、一回もか?」

「そう。必要性も分からなかったし。別に楽しくもないし。」

何でもないようにピザポはそう言った。

確かに彼には色々あったのだろうし、あまり帰りたくはないのかも知れないけど・・・。

其処まで嫌なのだろうか。

僕が呆然としていると、ピザポはまた笑って歩き出した。

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「さっき、彼女、どうして僕らを追い掛けてきたんだ。」

無理矢理話を変えると、ピザポはもう一度、あっけからんとして言ったのだ。

「だって俺、もうぼっちでも、況してやいじめられっ子でもないし。ズリズリさんからしても助ける必要無いじゃん。だからもう、俺は引き摺る対象にしかならない。」

その一言は、何故だろう、何だかとても怖かった。

Concrete
コメント怖い
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紫音さんへ
コメントありがとうございます。

ええ。色々あったので、此処に書き込んでも違和感は無いと思いますし。

運営側、ですか。
確かに消されたのはアンチコメントでした。
だとしたら、そうかもしれませんね。

メッセージボードにまで・・・。
構ってちゃんか歪んだファンかは知りませんが、随分とねちっこいアピールですね。
其処までしてくるのはもう逆に好かれてたんですよ。
面倒ではありますが。
全部削除するのは大変だったでしょう。
お疲れ様です。

本当ですね。恥ずかしいですし・・・。
夜中のテンションで可笑しな事をするものではないですね。

其れでは、色々と有り難う御座いました。

返信

去年の夏に帰省されてたんですね。

その時の話、待ってますね(´∀`*)

作者さん以外でも削除されていたとなると・・・内容が規則に違反していたとかで、運営側で削除とかの可能性がありますね。

作者さんが、自作品に書かれたコメントを削除出来るかを何故知っているかと言うと、私の作品全て、そしてメッセージボードにまで、ほぼ同じ内容の誹謗中傷的なコメントを書かれていた事があり、そのコメントの最後に『削除する』『アカウントをブロックする』って書いてあったので・・・

自分がしたコメントも削除出来るようになればいいんですけどね

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

謎というか、地雷というか・・・。

今でもたまに、信用されていない気がしてしまいます。多分被害妄想だとは思いますけどね。

大切にされるのは嬉しいけど、されっぱなしは何だか悔しいし、情けないですね(笑)
少しずつ返せたら、と思っています。

返信

まっしろさんへ
コメントありがとうございます。

有り難う御座います。遡って読んでくださったなんて、何だか照れますね。

フリーゲームで・・・。
案外ポピュラーな存在なのでしょうか。因みに、原型とされるヒキコさんは普通に妖怪です。

だとしたら俄然切なくなりますね。切なさ乱れ撃ちです。ピザポ帰郷の際、一緒にお参りに行きましたが・・・。
神様は寂しいことが多いんでしょうか。
兄から話してもらった話でも、そうでしたし・・・。
益々切ないですね。

有り難う御座います。
宜しければ、次回もお付き合いください。

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紫音さんへ
コメントありがとうございます。

一瞬前までは《友人》だった相手なのに・・・と思ったのですが、やはり人とは感覚が違うのでしょうか。

あ、去年の夏に帰りましたよ。僕達も付いて行きました。後々に書きます。

返信も頂いてしまったし、其れは頼み難いですね・・・。
前に僕の所に来ていたコメントが何時の間にか消えていたので、勝手に第三者でも消せるものと勘違いをしていました。
教えてくださり、有り難う御座いました。

返信

百合野さんへ
コメントありがとうございます。

そう・・・何でしょうね。やっぱり。

だとしたら、あれまで僕は友人として認められていなかったのでしょうか。
いえ、一年近くの事ですし、今となってモヤモヤしても仕方無いんですけどね。はい。

有り難う御座います。
宜しければ、またお付き合いください。

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裂久夜さんへ
コメントありがとうございます。

そうかも知れません。自分から首を突っ込むことを多いので、一概に決められませんが(笑)

申し訳無いです。台詞を間違えました・・・。
会話が成立しませんよね、あれでは。
でも、裂久夜さんの読んだ方の台詞も、ちゃんと言ってました。
気にしないことにします(笑)

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やっぱり謎が多いピザポさん…少し前にピザポさんとの出会いの頃のお話を読み直してみました。
過去に色々あった方だからこそ、紺野さんが危ない時など恐ろしいキャラになったりして…本当に大切に守っていきたいんだろうな…と思いました(つд`)

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