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私の趣味は絵を描くことだ。
今日、お店で筆を買った。
上質っぽい、程よい固さの漆黒の毛。
見た瞬間買おう!!!と思った。
しかしあの店員、無愛想だったなあ。
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まあそんなことはどうでもいい。
とにかくわたしはこの筆を早く使いたいのだ。
チャポン
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と、いい
音を鳴らして筆は水を飲んで行く。
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絵の具をつけ、キャンバスに筆を走らせてみる。
ああ、なんと心地いい感覚だろう。
この筆を買って正解だったな。
そうして私は作品を進めていった。
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よし、今日はこのぐらいか。
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紙パレットをちぎり捨て、筆を置いて私は眠りについた。
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翌日、会社から帰るときに昨日のお店に寄ろうと思ったが、シャッターが閉まっていた。
閉店したのかな..?と思い、シャッターに近づくと張り紙があった。
[◯◯市◯◯通りに変わりました。ごめんなさい!(^◇^;)]
...これはあの無愛想な店員が書いたのか?
いや、あんな黒髪のぼさぼさ..そうだな、貞子と言った言葉が合うような人がこんなハイテンションに顔文字をつけるわけがないよな。
そんなことを思いながら帰路につく。
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家に帰るとすぐさま飯をくい、キャンバスの前に座った。
続きはどうしようかと想像を張り巡らせ、紙パレットの絵の具を筆につけた。
ここはこうして..あ、ここもこうしよう...
ぶつぶつ独り言を言っている私は多分おかしいと思われるだろう。
だが、それほど絵を描くのは楽しいのだ。
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気がつけば夜中の1時過ぎ。
そろそろ終わって風呂に入ろうと思い、筆を置き、
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紙パレットを破いて風呂場に向かった。
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シャワーを体に浴びながら、
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「そういえば紙パレット..昨日捨てなかったっけな?いや、でも捨ててないとしても絵の具が固まってなかったし...??
.........まあいいや。」
と、またもや独り言を言う。
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ふろから上がり、からだを拭く。
ふいに、部屋の方から
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何かが落ちる音がした。
見に行くと筆がキャンバスのまえに落ちていた。
転がったのかな、、と思い、紙パレットの上に置こうとしたとき、異変に気づいた。
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「あれ?」
パレットに絵の具が出ている...。
それに、心なしかその下のぐちゃぐちゃとなった絵の具がなにかの絵に見える。
君が悪くなり、
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破いて捨てた。
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次の日も、いつも通り会社から帰って絵の続きを描こうとおもい紙パレットと筆を持つ。
...やはり紙パレットに絵の具が出されている。
きのうよりはっきり見える。
人..?
わたしはそれが何なのか、一体これを描いている「もの」はなにを伝えたいのか気になり、
キャンバスを置いておくことにした。
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そんな日が続き、1ヶ月ほど経った。
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紙パレットの絵は完成に近づいていた。
それは、女の人だった。
黒髪の女の人の横顔だった。
その絵を見た瞬間、私はなぜか
(この絵の完成をみてはいけない)
と確信した。
それと同時に、あの店に聞きに行ってみようという決心がついた。
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翌日、丁度日曜日で会社が休みだった私は、なるべく早く聞きに行きたいと思い、急いであのお店にいった。
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カランカラン
カフェ風の鐘がなる。
奥から30代前半ぐらいの女の人が出てきた。
「いらっしゃいませ〜!」
...やけにハイテンションだ。
「...あの、この筆なんですが...」
包みを開き、筆を見せる。
とたんに女の人の顔が歪んだ。
「それ...みっちゃんの筆じゃ...」
「みっちゃん?」
女の人は、ええ、といいながら、ポケットの手帳から写真を抜き取り、渡してきた。
「あ、この人。」
そこに写っていたのは高校生ほどの女の子。
まえの無愛想な店員だった。
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「みっちゃん、ガンで去年死んじゃったの。わたしの一人娘よ。」
女の人は目を赤くしながら続けた。
「薬でどんどん髪の毛が抜けちゃうの。みっちゃん、黒いサラサラな髪がとても綺麗で、ずっと伸ばしていたの。髪の毛が抜けて、床に落ちていってね、みっちゃんは絵を描くのが好きだったから、筆にして使ったらどうっていってね、筆を作ったのよ。」
「その筆が..」
「そう、多分それね。どこかに行ったと思ってたんだけど..どこで見つけたの?」
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見つけたって...買ったんだけどな。でも、あのこがもう亡くなってるとしたら私は誰から買ったんだ..?
とにかく、この筆が絵を描いている。そのえは女の人の横顔。みてはいけない気がする。
などの説明をしたのち、その筆は引き取ってもらった。
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家に着くとドッと疲れが出てきた。
幽霊にあったかもしれないなんて考えられない..が、実際におこったことなのだ。
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紙パレットの絵は捨てた。もう彼女は家に帰れたのだ。この絵は必要ないだろう..。
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真夜中。
腕の痛さに目がさめる。
金縛りにあっているようで、体が動かない。
腕の痛さは増していく。
爪のようなものが皮膚に食い込む。
あまりの痛さに叫びながら飛び起きると、もう朝になっていた。
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なんでだ?どうしてだ?わたしは彼女の筆をたまたま買ってしまっただけだ!家にも返しただろう!何がしたいんだ私に何をして欲しいんだ!!
そしてハッと、パレットを思い出した。
キャンバスのまえのパレットを取った時、私は絶句した。
この絵は女の人の横顔だけで完成ではなかったのだ。
女の人が絡みついているその先には
私がいた。
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足元に、漆黒の筆が落ちてきた。
作者私-2