此れは、僕が高校2年生の時の話だ。
ガラス瓶の金魚・2の続きです。
nextpage
・・・・・・・・・。
家に帰って一眠りしたが、頭痛も気怠さも全く減らなかったが、熱だけは下がっていた。
起きたのは夜中の三時過ぎ。空腹で目が覚めたのだ。
枕元を見ると、金魚が瓶の中でふよふよと浮かんでいる。魚は眠ったりしないのだろうか。
今から食事を摂る訳にもいかないし、退屈凌ぎに携帯電話を弄ってみる。
ふと金魚の方を見ると、金魚も、僕のことをじっと見ていた。単に此方を向いているだけなのだろうが・・・。
近付いて指をガラスに付けてみると、金魚はパクパクと口を動かし、また数回瞬きをした。
可愛い。
そんな愛くるしい見た目の生物でもないのに、何故だかそんな思いが沸き上がる。
優しくなれそう・・・と言うのも近いだろうか。
小動物や赤ん坊を前にした時と同じ、相手の命を自分が握っている緊張と、其れに伴う愛しさ。
魚類に感じるのは初めてだったが、久し振りに自分で飼う生き物だ・・・
ふと思い立って、金魚の育て方をネットで検索してみる。序でに、さっき気になった金魚の眠り方も。
「・・・あ。」
飼育サイトに書かれていた一文。
《金魚は目を開いたままで泳ぎながら眠ります。目を閉じようにも瞼が無いからです。勘違いをしてちょっかいを出し、ストレスを感じさせないようにしましょう。》
瞼が無い。
でも、さっき・・・。
慌ててもう一度、ガラス瓶の方を見る。
nextpage
金魚は、目を閉じて眠っていた。
nextpage
・・・・・・・・・。
休みの間、ずっと不調は続いた。
病院に行っても原因は分からず、普通の風邪薬を処方された。
あの金魚を、何回捨てようと思ったことだろう。
少なくとも普通の金魚じゃない。其れはもう確かなのだ。
なのに、僕は其の金魚を捨てられなかった。
情が移るにしたって早すぎる。斎藤に押し付けられてから、まだ三日も経っていないのだ。
僕が無類の生き物好きなら未だしも、此れは明らかに可笑しい。
其れでも、捨てられなかった。
可哀想で可愛くて、自分が守ってやらなきゃならない、という気持ちがぐるぐると胸の中で渦を巻いて、結局何も出来ない。
思い切って右手を伸ばしてみるも、今度は罪悪感が邪魔をする。
頭痛でズキズキする頭を回転させ、必死に考えようとしたが、無理だった。
せめて自然に死ぬのを待つのならば、罪悪感も消えるかと放置をしてみたが、死なない。二日では餓死は無理なのだろう。
川か何かに流そうかとも思ったが、外に出る気が起きなかった。
金魚を見ると、今日も今日とて水中に浮かんでいる。時折、瞬きをしながら。
明日は学校だ。休んでしまおうかとも思ったが、そうもいかない。薄塩とピザポに、助けを求めてみるのだ。
でも・・・・・・。
そうしたら、此の金魚はどうなるのだろう。
殺されてしまわないだろうか。
もし、そうだとしたら・・・。
逡巡している内に、愛着は強くなる。
どうすれば良いのか分からない。
横目で見た金魚が、また瞬きをして、泡を一つ吐き出した。
作者紺野-2
どうも。紺野です。
一応、次回で終わらせられればと考えております。
オチがオチなので、上手く纏められるかは分かりませんが。
宜しければ、最後までお付き合いください。