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私が小学6年生の時に体験した不思議な話です。恐いというより、いまでも不思議な出来事です。
うちの小学校は給食の後に、掃除の時間がありました。角の教室で教室のまん前がトイレなので、教室組、廊下組、トイレ組と3グループに分かれて掃除をすることになっていました。
私はその日はトイレを掃除するグループにいたのですが、一人ではなくAちゃん、Mちゃん、Rちゃん、私の4人で清掃を行っていました。たいして広くもないトイレを4人で分担するので、負担は軽く皆でおしゃべりをしながら楽しく掃除していました。特にAちゃんはピアノも上手だし、運動神経は抜群、勉強もできるクラスのリーダー的な子でどこにいても目立つ存在でした。どこにいても。
清掃用具は基本、教室内のロッカーにありそれを持ち出して清掃することになっていました。その日もトイレ掃除が終わり、私がバケツと雑巾を片づけることになったので教室まで戻りロッカーにバケツと雑巾を片していました。すると、うしろからAちゃんが来て教室清掃用のほうきを一緒に入れてと近づいてきたので、私は「教室の分まで用具片づけるなんてえらいね。」と思わず返しました。
すると、Aちゃんは不思議そうな顔をして言うのです。Aちゃん:「私、今日教室の当番だから教室を掃除してたんだけど…。」私:「?!、え、一緒にトイレ掃除して男子の話とかしてたじゃん!」Aちゃん:「え!私ずっと教室で掃除してたよ、M先生(担任の先生)とも話してたし…。」私:「その間、トイレの方に来なかった?」Aちゃん:「ううん、ずっと教室にいたよ。」
shake
私(え?どういうこと?Aちゃん私をからかってるの??)
ロッカーの前でずっと話し込んでいた私たちに気付いた周りの子がどうしたの?と寄ってきました。その子たちは教室を掃除していた子たちだったので私は思わず聞きました。
私「Aちゃんって今日、教室掃除だった?ずっと教室にいた?」教室掃除の子たち「うん、みんなで5時間目の道徳の話しながら机運んだりして、Aちゃんは掃き掃除してたよー。」そんなバカな…、じゃあトイレで一緒に掃除していたAちゃんは何者?Aちゃんは双子とかではないので、うちのクラスにも学年にも同じ顔をしてる人はいないはず…。困惑している私の下に一緒にトイレ掃除をしていたMちゃん、Rちゃんが現れたので私はすごい勢いで傍により確認するかのように捲し立てました。
私「ねえ!今日トイレ掃除でAちゃんと一緒だったよね??男子の話とかしたよね??」必死な様子の私に少し驚きながらも、Mちゃん、Rちゃんは口をそろえて言いました。
Mちゃん:Rちゃん「うん。いたよー!だって、○○(男子の名前)の話して盛り上がったじゃん!」そうだよね、確かにAちゃんはいたよね。と、すがるように二人に話を合わせていると当のAちゃんは…A「私、トイレにも行ってないし、ずっと教室にいたよ。」私、Mちゃん、Rちゃんはそんなはずはないという顔でAちゃんを見ていました。その時、異変に気付いた担任のM先生が何があったのか割って入ってきました。
先生はAちゃんの言うとおり、掃除の時間にAちゃんと会話をしていたようでずっと教室にいたと認識しているようです。しかし、私たちトイレ掃除側は絶対にAちゃんはトイレにいたと言い張り、廊下掃除グループもトイレにいるAちゃんを見たと援護(?)してきました。いつの間にか人の輪は広がり、Aちゃんは教室にいた派 VS Aちゃんはトイレにいた派のような図になっていました。
不思議なことに誰も嘘をついているように見えないのです。それぞれの主張が本当だとわかるのです。論争は次第に大きくなり、5時間目の道徳の時間は潰れ、先生も交えたAちゃんどこにいたか論争の場になってしまいました。皆それぞれの主張を言う中、クラスで一番頭のよかったSくんがポツリと言いました。
Sくん:「同じ人が同時にその場に現れる現象って、ドッペルゲンガーとかいうらしいよ。」
小学生にはあんまり聞き覚えのない言葉に、皆が頭に?マークを浮かべているとSくんは続けて少し気まずそうに言いました。
Sくん:「…そのドッペルゲンガーに会うと…、その人死んじゃうらしいよ…。」
次の瞬間、教室にAちゃんの泣き声に近い叫び声が響き渡りました。私、死んじゃうの?どうすればいいの??と困惑するAちゃんを見て、皆もこの話をこれ以上続けてはいけないのではと黙り始め…、担任のM先生が「今日は皆Aちゃん家に近い子は一緒に帰ってあげるように!」と、無理やり明るく場を収めたところで5時間目終了のチャイムがなりました。
その後、Aちゃんには特別悪いことも起こらず、クラスの皆もその話を忘れて行くようになりました。でも、いまだに思い出しても私はAちゃんとトイレ掃除をしてたのです。教室にもAちゃんはいたのです。時が流れても、皆の記憶には鮮明で同窓会でその話を出すと未だに教室にいた派とトイレにいた派に分かれます。教室にいたというAちゃん…私が一緒にトイレ掃除をしたAちゃんは何者だったのだろう…。今も不思議でなりません。
作者高井聰子
私が小学生の時に体験した実話です。
恐いというより、不思議な体験でした。