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朝を知らせるベルが鳴っている、でもまだ夢から覚めきらない。
一回止めた目覚まし時計がスヌーズ効果でまたベルをならす。今度は起きれた、しかし暑さのせいではない汗をびっしりかいて。
最悪の夢だ、まさに悪夢。
夢の中の私は殺人者だった、いや暗殺者だったのかもしれない。背後からしのびより文字通り寝首をかく、飛び散る血しぶきゴトンと転がり落ちる頭部。浴びた血しぶきで目の前は真っ赤だった。
また別のシーン、ためらいなく懇願する目の前の人物を銃で打った。2回、いや3回だったかもしれない。ものいわぬ人形のようにたおれこむ人影。私の足元は血だまりで紅く染まった。
そんな悪夢をみた。リアルな感触が手に残るくらいの。朝なのに夜のように私の心は真っ暗だ。だんだん意識が覚醒しても夢の2つのシーンだけ忘れられない、夢なんて大抵すぐ忘れるのに。
汗を拭うより、シャワーを浴びた方が早いと思い風呂場に向かう。蛇口をきゅっとひねり、温かくなるのを待たず体に浴びせる。ぬるりとしたものが段々と落ちていき気持ちも浄化されるようだ。
ああ、そうだ、夢なんだ。そう、単なる悪夢だったんだ。覚醒する意識がハッキリするにつれ、夢の中から覚めていく安堵感をかみしめていた。
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だって
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まるで大根を包丁でさっくり切るように首なんか切れないし、アルミ風船を打つように肩になんの反動もなくパンパンと銃を片手でうてるわけないとしってるのだから。
もうちょっとリアルな夢にならないものかと少し笑みを浮かべ、蛇口をしめた。ぬるりとした汗はすっかり流されていた。
作者高井聰子
実際に見た夢の体験から初めて創作してみました。
お読みいただきありがとうございます。