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中編3
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死んでしまうということ

music:5

おじいちゃんのお葬式の日

私はおじいちゃんが死んでしまったことを

まだ受け入れられずにいた。

おじいちゃんは手先が器用な人だった

おじいちゃんは無口な人だった

おじいちゃんの身体は小さいし痩せていただけど心は誰よりも深い人だった。

おじいちゃんはチョコレートの小さな包み紙をさらに小さく切って少しのズレもない完璧な鶴を折ったり、家の台所におく作業机を作ったり、包丁を研いだり、とにかくマメな人だった。

でも幼き私は折り紙なんて見向きもしないで流行りのゲームばかりやっていたし

その後も友達と遊ぶほうが楽しくて

あまりおじいちゃんとお話しできなかった。

だから私はおじいちゃんから飛行機の折り方を教われなかったことや無口なおじいちゃんの好きな色、好きな食べ物を聞いたり

生きてる間にしとけばよかったなってことが涙と一緒にこみ上げてきて溢れ出した。

おじいちゃんの遺影はすごくいい写真だ

にこにこしていてとても優しい表情だった。

この笑顔はもう見ることができない。

いつか聞けばいいや、いつでも聞けると思っていた私はなんて哀れなんだ。

私は思わずトイレに駆け込んだ

うつ向いて隠していた泣き顔がもう隠すのに限界なほど酷くなってしまったからだ。

泣いてる顔は誰にも見せたくなかった

家族にも、そして遺影の中で笑うおじいちゃんにも。

トイレで呼吸を整え、自分の顔を2回ほど叩き喝を入れた。

泣いてはダメだおじいちゃんだってきっと私の泣き顔より笑顔のほうが好きなはず。

そう言い聞かせて戻ろうとしたとき

見覚えのある後ろ姿があった。

すぐにわかった。

おじいちゃんだ。

おじいちゃんはお葬式の様子をじっと見ていた。

そして振り返ってこう言った

「飛行機はちゃんともったぞ」

見るとおじいちゃんは紙飛行機を手にしていた。それはとても綺麗とは呼べない不恰好な紙飛行機だった。

それだけ言うとおじいちゃんは消えてしまった。

その時はなんのことかわからなかった。

その意味が分かったのは火葬場でのこと

おじいちゃんの棺に不恰好な紙飛行機が入っていた。きったない字で私の名前が書かれていた。

どうやら私は一度飛行機の折り方を教わっていたようだ。

何年も何年も前、私自身も忘れてしまうような昔に作った紙飛行機。

それをおじいちゃんは大事にとっておいてくれたのだ。

私は何もしてあげられなかったのに

おじいちゃんは私の事をちゃんと思っていてくれた。

それから7年という月日が流れ

私はもう大学生だ。

勉強し、サークル活動に汗を流し

家族といる時間も大切にしてるつもりだ

今の私をみたらおじいちゃんはなんて言ってくれるだろうか。

いや、言ってくれないかもしれない

無口な人だったから。

今もどかで見ているかも知れない。

そう思うと自然と背筋が正される。

ありきたりな言葉かもしれないが

人がほんとうに死んでしまうという事は

その場で生命活動が途絶えてしまう事ではなく、関わった人々の心の中から消えてしまう事なのではないだろうか。

逆を言えば、その人を思う気持ちがあれば

心の中で永遠に生き続ける。

だから私の中で今も確かにおじいちゃんは存在している。

ちゃんと存在しているのだ。

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どんぐりさんコメントありがとうございます。
いつか、私も死んでしまいます。
それは10年後かもしれないし明日かもしれない。そうなったとき、私は私のおじいちゃんのように誰かの心の中で生き続けることができるのか。
ふと、そんなことを考えます。

返信

お袋の亡くなった時の事
思い出しました
あれから20年

子供の頃可愛がられた事
喧嘩した事
反抗期でろくすっぽ会話もしなかった事
亡くなってから
亡きがらに向かって
親不孝もので済みませんでしたと
頭下げた事
そして
いくつかの不思議な出来事…

今でも心にいます
きっと
同じように
誰の胸にも
誰かがいるのでしょうね。

返信

来道さんコメントありがとうございます。
自分でも亡くなったはずの祖母が現れたときはびっくりしました。でもあの時は不思議と現状を受け入れることができたのです。
亡くなってしまっても自分が覚えてる限りその人は生き続けます。

返信

怖いわけではなく、心揺さぶられて。

返信