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これは私の友達が体験した奇妙な話。
私の友達、由美香(仮)は私と同じく霊感がある人間だ。
しかし、由美香が見るものは私とは随分異なったものばかり。
私はウェディングドレスを着た老婆を見たり、首を傾けて歩く半透明の霊を見たりと、何かと物騒なものが見えてしまうが…
あ、気になりますか?この話はまた後日お話するとして…
とにかく由美香は私が見ているようなものとは別のものが見える。
例えば、頭がパンジーの人を見たり体から4本の手が生え頭には触覚がついている虫人間を見たり大きな卵に足が生えているものが歩いていたり。
見たら見たで気持ちが悪いのだろうが、私とは異なり、少しだけファンタジーなものを見ているようだ。
そんな由美香がある日私に相談があると言ってきた。
「今日も朝の人がいたの!」
「朝の人?」
そんなものを聞いたのは初耳で私は聞き返した。
「朝の人って一体何?今日もって?」
すると由美香は肩を竦めて少々俯きながら話し始めた。
「毎日決まった時間になると私の目の前に男が現れるの、朝と昼と夜にね」
「ストーカー?」
「違うの…その男は朝も昼も夜も同じ顔をしているけど体型がまるで違うの…それから、着てる服も。」
「え、気持ち悪い」
俄に信じ難い話…
でも由美香がそう言うなら間違いないだろう。
私も俄に信じ難い体験を何度もして来たからだ。
その体験の中には由美香を巻き込んでしまったこともあるし、また由美香に巻き込まれたこともあるし、お互いその点に関しては信頼出来る仲だ。
「朝は赤いTシャツを来ていて体型はガリガリ、身長はだいたい180cmくらい、昼は黄色いTシャツを着ていて太っている、身長は120cmくらい、」
「ほー、私より低い」
「夜は青いTシャツを着て身長は160cmくらい体型は普通…みんな同じ顔、同じ髪型。奴らは瞬きをしないのよ。それで決まった時間になると私がどこにいても現れるの!」
「それはストレスだね…」
「奴らは何をするわけでもなく私のことを少し遠くからひたすら見つめてくるのよ。」
どうやら由美香は朝昼晩、ある時間に外にいる、または外を見ている時その男達を目撃するらしい。
「でもただ見てくるだけなら最悪放っておけばいいんじゃないの?」
「それが気づいちゃったのよ」
「なにに?」
「あいつらはどんどん近づいてきてる」
「はぁ?」
「意識してみるようになったのは最近の話、でも以前から私の周りを付きまとっていたみたいなの」
そういって由美香は中学時代の写真を出してきた。
体育祭、由美香を入れた仲良し3人組が写ってる微笑ましい写真だが、右奥にとても小さくだが黄色いTシャツを着た背の低い男が映り込んでいた。
「うわぁっ!」
見つけてしまった瞬間私は小さく声を上げた。
「ね?いたでしょ?でも今はこれよりずっと近い距離で私を観察しているの…」
この人達は由美香に一体何をするつもりなのか…。
「ねえ、由美香お願いだから危ないことはしないでよ?」
私は急に心配になり由美香に言った。
「危ないことって?」
「自分からそいつらに接触しようとするとかさ…」
「する訳ないじゃん!気持ち悪いんだから!」
「そう、ならいいんだけど…」
由美香は由美香が見る奇妙なものたちになるべく干渉しないようにしているらしい。
何故なら干渉しなければ特に害はないからだ。
しかし、今回ばかりは由美香もそうはいかないらしかった。
この話を聞いてから数日、また由美香に呼び出された。
「もう!限界!」
ずっと見られているのは精神的にかなり辛いらしく、由美香は珍しく疲れた顔をしていた。
「私、やっぱりあいつらにガツンと言ってやる!」
「いきなり何を言い出すの!?危険だってば!」
「もう我慢出来ないの…今日、夜の人に言ってやるの!もう私を見るんじゃねぇ!って」
由美香はどうやら本気のようだった。
「なら、私もついていくよ…」
私は由美香が見ている男達を見ることが出来ない。
由美香が見せてくれた中学時代の写真に映り込んでいた男は確認できたが、画質も悪く、辛うじて認識できる程度だったが、その写真をしばらく眺めているうちに青白い肌にちょび髭で目はバッチリ開いていて
まるで死人のようなやつを写真でなら私も確認することができた。
私達は夜の人を公園で待つことにした。
夜の人が現れる時間になるまで丁度あと15分くらいの時、由美香が言った。
「私にもしもの事があっても泣かないでね。だってあなたには私が見えるでしょ?必ず化けて出てきてあげる。」
由美香は、覚悟を決めているようだった。
「縁起でもないこと言わないでよ…」
すると由美香の表情が変わった。
「来た。」
どうやら由美香は夜の人を見つけたらしい。
「どこにいるの?」
「あの滑り台のところ…」
私と由美香はゆっくりと滑り台に近づく
そしてついに由美香は夜の人に向かって話し始めた。
「あなた達一体何なの!?いっつも私につきまとッ………………」
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shake
「………………」
「由美香?」
一瞬にして由美香の姿が消えた。
「由美香!!」
呼んでも誰も返事をしない。
その日、由美香は行方不明になった。
由美香の母親は最後まで諦めることは無かったが今日まで由美香は見つかることは無かった。
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「ねぇ、由美香…あなたはどこに行ったの?」
「それがねー…わからないのよ。私が見ていた奇妙な者たちの世界に連れていかれたみたいなんだけどね。私の肌には合わなかったらしく、すぐに死んでしまったの。」
「…だそうです。」
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由美香は今、私と共にいる。
でもそれは周りの人間には見ることは出来ないだろう。
由美香はもう、幽霊になってしまったのだから。
作者さ とうあ み
顔が同じって不気味ですよね