私は、今誰かから追われている。
気のせいだと最初は思っていた。
怖い話を聞いたあとや、ホラー映画を見たあとなど、なんとなく後ろが気になってしまう。
そんな感覚、誰にだってあるだろう。
しかし、今、私の状況からして、そういう臆病風に吹かれている状況では全く無いのだ。
何となく、突然、視線を感じたのだ。
こんな感覚は初めてだ。
何度となく、振り向いたところで、誰も居はしない。
足音が聞こえるわけでもなく、姿も形も無い、何かの目に私は追われているのだ。
今まで、ただの一度も、霊感があるとか、思ったことは無い。
テレビで見る、不確かな画像や映像を「おわかりいただけただろうか」と言われても、「はあ?」という感じだった。見ようによってはこじつければそういう風に見えないでもないけどね、なんて、醒めた目で見ていたのだ。
押入れの隙間が開いているのは、なんとなくそこから誰かが覗いているようで怖い。
それとは、また違う感覚。
誰かが見ている。徐々に恐怖は私の中に色濃く滲んで行くのだ。
だれ?誰が見てるの?
もういい加減にしてよ。
私にかまわないで!お願い!
私は夜の道をひた走る。
私の家はどこだっけ?
何故か、自分の帰る家まで思い出せなくなってしまった。
家に帰れば、この感覚から逃れられると思ったのに。
私の家が思い出せない。嘘、なんで?私は記憶喪失になっているの?
きっと見えない目に見つめられている所為だわ。
心臓の音で私の足音すら聞こえなくなった。
そもそもこれは私の鼓動なのだろうか?
何もわからなくなってきた。
ただただ、私はこの視線から逃れるために、夜をひた走るのだ。
お願い。助けて。
この永遠の夜を終わらせて。
何を見てるのよ。
そうよ、あなた。
この視線から逃れるためには、方法は一つしかないわね。
それは、あなたを殺すこと。
待っててね。
shake
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もうすぐ行くよ。
作者よもつひらさか