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中編3
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私の子供

 子がよく消える。

 私たち夫婦の間に出来た子供は消えてしまう。そしてニュースにもならず、未解決事件として闇に放られるのである。それがたまらなく厭だった。ここが田舎だからってニュースにしないのだろうか。私たちの悲劇はどうでもいいのか。 

 十年前、子が一人できた。女の子だ。名を凛と言う。夏のとても暑い時期に生まれた。初めての子だったので、私たちはとても喜び、これからどんな子になるのかと、想像した。しかし。

 その五年後。凛は行方不明になった。五歳の誕生の日だった。凛は外で遊び回る元気な子だった。得に畑で虫を追いかけるのが大好きだった。そう、その日も凛は畑に行くと言ったのだ。畑は家の裏にあり、裏口の戸から出ればもうそこにあるのだ。家と畑の先には、平地が広がっており、どちらにせよ目が届く。

 パーティー前だったから、すぐ帰ってこいよと私は言った。

 妻と私はにこにことそんな天真爛漫に出て行く凛を見届けた。しかし、それが凛の最後の姿だった。

 幾ら探しても凛は居なかった。警察にも電話して、捜して貰ったのだけど、矢張り見つからない。

 暫くショックから立ち直れなかった。だけど、私たちだっていつまでもくよくよしていられない。そう思ってできたのが。

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 淳二である。男の子だ。淳二は四年前に生まれた。丸っこい顔で凛の面影が何処かにあった。私たちは凛の生まれ代わりだと思って、甘やかして育てた。だからだろうか、少しぽっちゃり体形であった。しかし、二年前、忽然と消えたのである。夜、淳二にお休みと告げて、私は居間でテレビを見ていたのだ。確か。妻は買い物に行っていたのだっけ。界隈にスーパーなんてないから、車を走らせて結構な距離の所へ行っていた。

 しかし、何気なく淳二の顔を見に行くと――無かった。淳二の姿が。毛布だけはきちんと淳二が居たときのように布団にかけられていたのだけど、そこで寝ていた者がない。急いで毛布をはぐるも、矢張り淳二の姿はない。布団を触るとやけに冷たかった。最初から誰も居なかったかのように。

 家中や近所を走り回ったけど、淳二の姿はない。まだ二歳。それ程、遠くに行くわけもない。

 結局、凛と同じように淳二は見つからなかったのである。

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 そして現在。加奈子が生まれた。これは絶対に美人になる。

 もう、子供を無くしたりなんてしない。私たちはそう決意して、加奈子を育てる。

 凛は今年で十歳になる。

 淳二は今年で四歳になる。

 加奈子はまだ零歳だ。

 庭へ出る。加奈子を抱きかかえて。ふいに凛のことを思い出して涙が溢れた。

『わあ、私たちの妹よ淳二』

『・・・』

 そんな姿の二人が見えるようである。今、生きていたらそんな会話も本当にあったかもしれない。

『可愛いね、淳二。私より可愛い』

『・・・』

 淳二はまだ四歳だもんな喋れないよな。

『お父さん。今度はその子を土に埋めないでね』

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 しかし、その声はもう彼の耳には届いていなかった。  

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