昔とある旅館でこんな怖い話があった。
深夜二時。
ある旅館に仕事の為一人泊まっていた男が誰かの声で目を覚ました。
眠い目を擦りながら声の出処を探ると、どうやら部屋の外から聞こえている事が解った。
こんな夜中に人の部屋まで聞こえる大声で喋るなんて迷惑な話だ。
男は注意しようと廊下に出ようとした。
しかしドアに手を掛けようとした時に気付いた。
これは喋っているのではない。
歌だ。
よく聞き取れないが女性が何かの歌を歌っているようだ。
今にも消え入りそうな悲しい声で、ひっそりと。
おかしな話だ。
先程部屋まで聞こえる大声と感じたばかりなのに聞き耳を立ててみると、か細い小さな声に感じる。
男は恐る恐るドアを開け、廊下の様子を覗き見た。
そこには女がいた。
廊下の突き当たりに白い服を着た女性が。
女性は何かを包んだような白いタオルを抱きかかえていた。
「ねん・・・ね・・・ん・・・・・・ころり・・・よ・・・・・・おこ・・・ろりよ・・・・・・」
女性が歌っていたのは子守唄のようだった。
夜中に赤ん坊が起きてしまい、寝ている夫に迷惑を掛けないように寝かせつける為に外に出ているのだろうか?
だが・・・何かがおかしい。
解らないがその光景の何処かに男は違和感を感じて仕方なかった。
目を離せないまま見つめていると、やがて女性がこちらの視線に気づき顔を向けた。
瞬間。
男の体は金縛りにあったように動けなくなった。
腕や足は愚か、目を瞑る事すら出来ない。
呼吸だけが荒々しくなる中、視線の先の女性が抱えていたタオルから手を離した。
白いタオルはするりと腕から抜け落ちると、床にとさっと落ちた。
男はようやく違和感の正体に気づいた。
タオルの中に赤ん坊なんていなかったのだ。
女性は何故か何も包んでいないただの白いタオルを抱えて子守唄を歌っていたのだ。
何の為にそんな真似を?
男がその答えを知る事はなかった。
「・・・・・・みたな」
タオルを床に落とした女性はもの凄い勢いで男に近づいてくる。
足が動いていないのに。
そんな状況でも男の体はびくともせずただ目の前に来る女性の恐ろしい表情を見続ける事しか出来なかった。
nextpage
「洋太!早く起きろよ!間に合わなくなっても知らねぇぞ!」
布団にくるまって寝ている少年の体を揺さぶりながら、同い年位の少年が言った。
洋太と呼ばれた少年がゆっくりと起き上がると、彼を起こした少年は渋い顔をしながら「おはよう」と声を掛けた。
「もう6時50分だぞ。7時から朝食だってのにお前はどんだけ呑気なんだよ」
「ん・・・あぁ、もうそんな時間なのか・・・」
慌てる様子もなくふらふらとしながら着替えだけ済ますと、洋太を含めた少年5人は旅館の食堂へと向かった。
洋太達は現在中学二年の修学旅行中だ。
二泊三日の楽しい旅行の予定も無事にほとんどが終了し、今日がその最終日でなのである。
他の生徒達が前日の疲れもありすぐ就寝して早めに起床していたのに対し、洋太だけは朝食の最中も眠そうに何度もあくびをしていた。
「そんな調子で大丈夫なのかよ。お前まだ荷物整理してないよな?8時にはもうバス乗ってここ出るんだぞ」
横に座っていた先程の友人が心配そうに聞いてくる。
しかし洋太はそれに触れず、変わりに全く別の話題を振った。
「なぁ、昨日夜中に変な歌聞こえなかったか?」
唐突な話に同じ班の4人が思わず食事の手を止めた。
「なんか夜中にさ、女の声でどっかから歌が聞こえたんだよ。なんか『ねんねんころり~』みたいな子守唄。俺それが気になって全然眠れなくてさ~」
洋太の話に他の4人は顔を見合わせた。
だがどうやら全員昨日は熟睡していて、まるで気がつかなかったらしい。
「どうせ夢でも見たんだろ。そんな事より早く食えよ。ホントに間に合わなくなるぞ」
洋太の話に他の班員はあまり興味がないようだった。
前日ならまだ食いついていたかもしれないが、最終日の今重用なのはそんな怪談より全く帰る準備をしていない友人の事だったようだ。
洋太は不満そうな顔をしながらも朝食を掻き込むと、みんなと一緒に急いで部屋へと戻った。
nextpage
事件は5人が部屋に戻ってきてから5分程経った頃に起こった。
洋太が旅行の荷物を整理していると班員の一人が険しい表情でやってきて言った。
「お前ふざけんなよ。どうすんだよあれ」
「・・・あれ?」
【あれ】と言われても洋太には何か解らず、首を傾げるしかなかった。
すると怒った少年は洋太の手を引っ張って部屋の奥へと連れて行き、壁を指差した。
壁には血でで書いたような赤い文字があった。
《 ねん ね ん ころ り 》
思わず息を飲んだ。
昨日の夜中に聞いた子守唄の歌いだしの言葉だったからだ。
「お前だろ、これ」
連れてきた少年が冷ややかな目で言った。
一瞬何を言ってるかが解らなかったがすぐに状況を理解した。
「まさか俺がこれを書いたって疑っているのか?」
「そうだよ。お前以前にも似たような事やった前科があるしな」
「うっ・・・」
確かにその通りだった。
洋太は以前にみんなで肝試しをした時にネタ仕込みをして色々と怒られるハメになった事があった。
そのせいで疑われるのは仕方ないといえよう。
しかし今回の件に関しては夜中に聞いた子守唄も今ここにある落書きも全く仕込んではいない。
洋太は必死に弁明したが前科があるせいで他の班員も誰も信じてはくれなかった。
それよりも、もうあと十数分でバスに乗って帰らなくてはいけない状況で、この落書きをどうにかして消さないといけない方が問題だと言う。
もちろんどうにかするのは洋太一人だ。
どうしても納得がいかず反論しようとした時、部屋の入口あたりから大きな声が聞こえてきた。
「おーい!もうそろそろ時間だぞ!ちゃんと帰りの準備は済んでるかぁー!」
どうやら担任の先生が見回りに来たようだ。
「まずい!隠せ隠せ!」
他の班員が慌てて落書きを隠そうと一斉に動き出す。
その物音が逆に不自然に感じられてしまった為、先生は部屋の中まで入ってきてしまった。
「・・・・お前ら、今何隠した」
直前で置いてあった壁掛けを移動して隠したものの、その行動の終わり際をしっかりと見られてしまっていた。
こうなっては隠した意味などないに等しい。
すぐに壁掛けの裏を見られると、先生の顔は一気に沸騰したヤカンのように赤くなった。
「お前ら!これから帰ろうって時になんて事しやがるんだ!」
散々怒鳴った後「誰がやった」という質問に対し、他の全員がすぐに洋太の方を向いた。
「ち、違います!僕やってません!」
洋太はすぐに否定して昨日の深夜に聞いた子守唄の事を話した。
実はその先生は自他ともに認めるオカルト好きで、よく生徒にも怖い話を聞かせてくれる人気の先生なのだ。
洋太は先生なら自分の話を信じてくれると思った。
だが残念な事に状況が悪すぎた。
修学旅行最終日のゴタゴタしている時間であり、直前に隠蔽しようとしていた事。
さらには先程出た肝試しの件も先生の耳にまで届いていたという始末。
結局先生も信じてくれず、時間的に落書きを消していくには厳しいので旅館の方に必死に謝って許してもらおうという事になった(当然落書き消しに掛かる費用はこちら持ち)
みんなに疑われ続けた洋太はもう泣き崩れそうだった。
nextpage
しかし先生が旅館の女将を連れくると状況が一変した。
女将は落書きを見るやいなや「あぁっ」と驚きと悲しみの混じったような声を上げると、急に泣きだし床に座ったと思ったらいきなり土下座をしてきた。
「どうか!どうかこの件はご内密にお願いします!どうか!どうか!」
あまりにも突然の事に他の全員が呆気に取られていると、それを理解した女将がひっそりと語り始めた。
なんでもこの部屋で昔ある事件があったのだという。
だいたい十五年程前の話だ。
とある若い夫婦が小さな赤ん坊を連れてこの旅館に宿泊しにやって来た。
聞くところによると、つまらない事で喧嘩をしたので仲直りの為に旅行をしようとここに来たらしい。
その夫婦はとても仲睦まじいように見えたので、喧嘩というのもそれほど大したものではないものだと思ったそうだ。
けれどもその日の夜、夫婦はこの部屋でまた大喧嘩を始めてしまった。
二人の喧嘩は二つ隣の部屋に響く程のやかましさで、すぐさま近くの宿泊客から苦情が押し寄せた。
従業員が急いで部屋に駆けつけるも旦那の方はすぐに部屋を出て行ってしまう。
対照的に奥さんは部屋の隅でブツブツと独り言を言い続けたまま全く動こうとしない。
従業員はどうしたものかと困り果てた。
まぁ解決したとは言い難いがともあれ喧嘩は一旦終わって静かになった。
これ以上余計な事は言う必要もないので、大声で泣いていた赤ん坊だけ何とかして欲しいと奥さんに頼みその日の揉め事はそこで終了となった。
かに思えたのだが・・・
旦那の方が外出したまま24時を過ぎても帰ってこない。
「すぐに戻る」と従業員に告げていたにも関わらず、外に出ていったきりなのだ。
この旅館は24時以降は出入りを禁止しており、時間になると入口を閉めていた。
旦那が帰ってきてももう旅館には入れないのだ。
仕方なくいつもは完全に消している受付あたりの照明をいくつか点けておき、旦那が帰ってきた時に解るようにしておいた。
だが旦那は朝になっても帰ってこなかった。
それどころか一泊二日の宿泊なのにチェックアウトの10時の1時間前になっても姿を現す気配がない。
心配になった女将が部屋にいる奥さんに聞きに行くとさらにとんでもない事が解った。
「お金の管理は全部夫がしているので私は(宿泊費を)払えません。このまま帰ってこなかったら・・・どうしましょうね・・・・」
そう言ってまるで他人事のような顔で窓の外をぼーっと眺めていたという。
払えないでは済まない話だが、このまま旦那が帰ってこなかったらかなり面倒になるのはまず間違いないだろう。
なんとか帰ってきてくれと従業員皆願ったが、結局10時を過ぎても旦那は現れなかった。
こうなってはしょうがない。
なんとかして奥さんに宿泊費分のお金を用意してもらわなければ。
女将は未だに部屋で呆けているだろう奥さんの元へと急いだ。
しかしドアを開けて中に入るとそこはもぬけの殻だった。
いつの間にか奥さんも赤ん坊もいなくなっている。
(まさか逃げられた!?)
女将は慌てて部屋の中を探し回った。
荷物は少ないもののまだ残されたままのようだった。
おかしな点と言えば床に倒れた小ビンとそこからこぼれた錠剤、開けっ放しの窓。
(まさか窓から逃げたんじゃ)
嫌な予感がして窓へと走った。
窓の外を確認すると意外にも早く奥さんと赤ん坊は見つかった。
二人は窓の外のすぐ下でピクリとも動かずにぐったりとしていた。
赤ん坊は即死、奥さんの方も胸に外部からの侵入を防ぐ為の鉄柵が刺さりすぐ病院に搬送されたが数時間後に息を引き取ったそうだ。
「あとになって解ったのだけれど奥様の方はかなり精神を病んでいたそうで・・・窓から逃げようとしたのではなく死のうとして窓から飛び降りたのかもしれないって・・・」
女将はそう言うと俯きがちだった顔をさらに下に傾けた。
彼女が言うにはその後旦那も事件の数週間後に飛び降り自殺をしており、当時はニュースでそれなりに騒がれてしまっていたらしい。
旅館としては手痛い事件でその日以降客足が大幅に減っていったという。
「それからなの。この部屋の付近で変なものを見たって人が増えだしたのは。事件以来この部屋は使用禁止にしていたのだけれど」
瞬く間に噂は広がり、いつしか「赤ん坊と共に成仏する事が出来なかった母親の霊が今もその旅館で子守唄を歌っている」なんて話がネットで流行ったそうだ。
旅館側の人間にも不可解な現象に出会ったという人が何人も現れ、これは不味いとすぐにお祓いが行われた。
初め女将はそのお祓いに不信感を抱いており不安だったそうだが、効果はすぐに現れた。
それ以来おかしな現象が嘘のように起こらなくなったのだ。
霊が現れるという噂も最初こそ付近の住人やネット上でよく語られていたが、年月が経つにつれ次第に忘れられていった。
そしてつい三年前、折角の良い部屋をいつまでも開けておくのはもったいないと以前のように使われるようになったのだそうだ。
ネットでも場所まで特定しているものはなくなっていたので、もう大丈夫だろうという当時の判断だった。
「でも・・・まさかまたこんな事が起こるなんて・・・」
女将は弱々しい声で嘆きながらも、相変わらず顔を下に向けたままだった。
それは「不快な思いをさせてしまいお客様に顔向け出来ない」というよりも「後ろに見える壁の、血のような赤い文字が恐ろしくて直視出来ない」という姿に見えた。
nextpage
その後、洋太達は逃げるように部屋を後にし急いで帰りのバスへと駆け込んだ。
最後の乗員を乗せたバスはすぐに出発したが、バスが発車してからも暫くの間洋太達は誰一人口を開けずにいた。
無理もない、自分達が泊まっていた部屋が実は曰く付きの部屋だったのだ。
しかも実害があった訳でもないのにいきなり過去の事件のあらましを神妙な顔で語られてしまい、実感も湧かないままだ。
重苦しい空気がひたすら続く・・・
「・・・・なんていうかさ、誰もヤバい被害に遭わなくて良かったよな」
たまらず一人が沈黙を破った。
それを皮切りに他の班員も「だよな~」「いやホント良かった」と口々に話し始める。
「でもまさか洋太の話がマジだったとはなぁ~」
一人の発言に洋太以外の3人の視線が彼に一斉に向けられた。
確かに言われてみれば今やネットにも場所が特定されていない怪談を、ただの中学生が突き止めるなんて無理な話だ。
「悪かったな洋太。さっきは疑ったりして」
「あぁ本当にすまんかった」
「許せ友よ」
軽すぎる謝罪の言葉が班員一同から洋太へと贈られた。
と言ってもこの状況を暗くしない為の気遣いゆえの「軽さ」だ。
「・・・ったくお前らは最低だな。あとで全員俺にジュース奢れよ」
洋太もその軽いノリに付き合った。
ようやくいつもの和気あいあいとした雰囲気になり、皆ホッとしていた。
そのまま楽しい会話が続くかと思われたが、不意に洋太の様子がおかしくなった。
ぼーっとした表情で口を開けたまま固まったり、急にキョロキョロと何かを探すように周りを見回している。
すぐに異変に気づいた友人の一人が「どうかしたのか?」と聞くと、洋太は目も合わさずに答えた。
「・・・子守唄が聞こえる」
一瞬にして洋太以外の全員の動きが止まった。
そんな班員達の様子を気にもせず、洋太は辺りをキョロキョロと見回し続けている。
「お、おい。悪い冗談はよせよ。なにかの聞き間違いだろ、きっと」
震えるような声で班員の一人が言うも、洋太はまるで聞いていないようだった。
「子守唄・・・でもなんかちょっと・・・・違うな・・・・」
すると聞こえているのであろうその歌を、確認するかのように小さな声で歌い始めた。
「ねんねん・・・・ころり・・・・と・・・・おっこちて・・・・ぼうやは・・・・よいこだ・・・・ねんねし・・・・な・・・・」
あまりの事に皆言葉を失った。
まるで呪いの歌を聞かされたかのように表情が曇り、呼吸が荒くなっていった。
そこでようやく洋太は他の班員達が蛇に睨まれた蛙のような表情をしているのに気づいた。
「なんだ?どうしたんだよお前ら?」
驚く事に洋太はそんな状況にも関わらずあっけらかんとしていた。
「ほ、本当に聞こえたのか?その・・・子守唄が」
「あぁ今も聞こえてる」
洋太はまるで普通の事のように答えた。
その様子が班員達をさらに恐怖させた。
「なんだよ・・・・まさかお前らまた俺が嘘付いてるとでも思ってるんじゃないだろうな!」
いきなり洋太は声を荒らげて怒り出した。
その様子に気づいた先生が「なんだ?どうした?」と前の方の席から立ち上がった。
「おい、ちょっと落ち着けって」
慌てて他の班員達が洋太を落ち着かせようと宥める。
だが洋太の怒りはまるで収まる気配がない。
「確かに聞こえるんだ!何処からかは解らないけど確かに!」
そう言ってついには立ち上がって辺りを見回し始めた。
「おい、お前らどうした?何を騒いでる?」
だんだんと先生が近づいてきた。
その目は言葉とは裏腹に何かに気づいているような険しい目だった。
「糞!どこだ!どこから聞こえてるんだ!」
「やめろ洋太!解ったからもうやめろよ!」
「お前ら!静かにしろ!あと洋太!危ないからすぐに座れ!」
車内の空気がどんどん慌ただしくなっていく。
やがて先生がようやく洋太の席の前まで来たその時。
ガタン!
shake
突如バスが大きく揺れた。
「うおっ!」
立ち上がっていた先生がよろけて倒れそうになり思わず近くの座席にもたれ掛かった。
急なバスの揺れに他の生徒達にも動揺が走る。
それでもただ一人その出来事を気にも留めていない人物が一人だけいた。
「解ったぞ!外だ!外から聞こえてるんだ!」
窓側の席に座っている友人を押し退けて洋太は窓を開け始めた。
狭い場所で強引に体を入れ込んでくる洋太に友人は必死に抵抗した。
「おい!いい加減にしろよ洋太!危ないから早く窓をー」
ガタン!
shake
それはほんの一瞬の出来事だった。
洋太がバスの窓を開け少し体を乗り出した瞬間、バスがまた激しく揺れた。
そして揺れの振動によって洋太は窓の外へと放り出されてしまったのだ。
車内は一気にパニックへと陥った。
女生徒の悲鳴。
男子生徒のざわつく声。
バスを止めろと運転手に伝える先生の叫び。
車内はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
そんな中、一人の生徒が頭を抱え一人震えていた。
それは洋太の隣の窓際の席に座っていた彼の友人だった。
彼は見てしまったのだ。
洋太が窓から体を乗り出した瞬間。
バスの上から白い服を着た女の長い手が伸び、洋太の背中を掴んだのを・・・
nextpage
結論から言うと洋太はその後見つからなかった。
「消えてしまった」のだ。
彼が窓から放り出された場所は運悪く山の中腹で急な斜面に木々が生い茂っているような所だった為捜索は困難を極めた。
しかしいくら探しても洋太は見つからなかった。
放り出された後に山奥へと進んでしまったのではと、警察犬も使って山狩りも行われたが結局何の成果も出なかった。
警察がお手上げ状態になっている間も、洋太の両親や同じ班員だった友人達や先生は別方向から洋太を探した。
例の部屋には勿論真っ先に行ったし、旅館の他の場所や周囲の怪しい場所にも行った。
だが手がかりになりそうな物でさえ何一つ見つけられなかった。
例の事件についても詳しく調べたが有効な手がかりになりそうな情報は見当たらなかったという。
ただ一つだけ解った事がある。
それは洋太にだけあの子守唄が聞こえた理由だ。
我が子と共に窓から飛び降りた白い服の女。
その女の赤ん坊の名前が「遥太」だったらしい。
洋太「達」がどこにいるのかは今も誰も解らないままだ。
作者バケオ
前回【怖い&コメント】を下さった皆様、遅ればせながらどうもありがとうございました。
今回はちょっと書くのに手こずりまして、色々とおかしい部分があるかもしれません(変な所あったらコメントで遠慮なく指摘して下さいませ)
毎回思ってはいるのですが、今回は特に自分の文章力の無さに泣かされました(T▽T)
今月は3作位投稿するぞと気合入れてましたが、下手したらこれだけで終わるかもしれません・・・
#gp2015