高校へ入学し新しい環境、友人に恵まれ楽しい高校生活をスタートさせたと思っていた。
特に仲良くなり私としては親友と思っていた理沙。
理沙はとても可愛らしく、女の私でさえ守ってあげたいと思うほどの美少女だった。
クラスの男子からも人気があり、そんな理沙と仲良く出来る自分が誇らしかった。
理沙も私を慕ってくれ、選択授業、休み時間、お昼をいつも一緒に過ごしていた。
そんな私達にも変化が現れ始めた。
お互い好きな人が出来たのだ。
高校生らしくお互い相談し合い、どうしたらいいかなど語り合ったのもいい思い出だ。
私が好きになった人は同じクラスの圭介君。
彼はクラスのリーダー的存在でいつもクラスを盛り上げてくれていた。
見た目も成績も普通だが、彼の明るい性格に強く惹かれた。
一方理沙の好きになった人は圭介君の幼馴染の、優等生で見た目も格好いい文学少年の悠太君だった。
私と理沙はなんとか2人とお近付きになりたく、よく話しかけたり行動を共にするようになった。
理沙に至っては少しでも悠太君と仲良くなりたいと、沢山の本を読み彼と共通の話題を作ろうと頑張っていた。
順調に仲良くなりクラスの中でもかなりの仲良しグループとして、クラスメートに認知されるようになっていった。
そんなある日。
「宵闇!私悠太君に告白されたの!」
親友の嬉しい知らせに私まで嬉しくなった。
「本当?!理沙おめでとう!ずっと悠太君のこと好きで頑張って努力してたからだね!良かったね!私まで嬉しいよ!」
「次は宵闇の番だね。圭介君と上手くいくように頑張るんだよ。私ももちろん協力するから!」
親友らしい言葉をかけられ、私も頑張るぞと意気込んでいた。
その時は心から理沙が私を応援してくれていると信じて疑わなかった。
その後、理沙や悠太君の協力もあり私と圭介君も交際をスタートするに至った。
高校生らしいグループ交際で本当に毎日楽しく幸せだった。
学校では共に過ごし、登下校も一緒、休日には4人で遊びに出かけたり。
そんな幸せな日に翳りが見え始めた。
当時悠太君は文芸部に所属しており、他の3人は帰宅部だった。
悠太君は理沙に合わせ部活を早めに切り上げたりと時間をやりくりしていたが、部活が忙しい時もあり部活を優先させることもあった。
「最近悠太君が部活が忙しいって、私を全然構ってくれないの…。私嫌われちゃったかな?」
理沙が時々そんなことを呟くようになった。
「そんなことないよ!部活がない時は理沙を優先してくれるし、悠太君見てると理沙を好きでしょうがないんだなって伝わってくるよ!理沙の考え過ぎだよ」
そんなやり取りが続くようになった。
一方私と圭介君は順調そのものだった。
そんなある日、圭介君と悠太君から理沙抜きで3人で話がしたいと言われた。
「3人で話なんてどうしたの?」
私には3人で話す意味がわからなかった。
「理沙のことなんだけど…最近理沙が怖いんだよ。文芸部でコンクールに応募することになって、部活が忙しくて理沙のこと構ってやれなかったんだけどさ。とりあえずこれ見て。」
悠太君は黙って携帯電話のメール画面を私に差し出した。
「見ていいの?」
「兎に角みてくれ!」
そんな悠太君の様子に驚きつつも、メールを確認してみた。
「何これ??」
私が発せられる言葉はそれしかなかった。
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To:悠太
From:理沙
悠太君最近部活が忙しいのかな?
理沙寂しいな〜
もう少し理沙を構って欲しいな!
To:悠太
From:理沙
悠太君なんで返信くれないの?
忙しいのかな?
何してるの?
To:悠太
From:理沙
返信ないな…どうしたの?
理沙のこと嫌いになった?
理沙はこんなに悠太君が好きなのに!
To:悠太
From:理沙
悠太君は部活と理沙どっちが大事なの?
理沙は勉強よりも友達よりも悠太君が一番大事なの!
悠太君の一番になれないなら、理沙は悲しくて死んじゃうよ!
それとも他に好きな子でも出来たの??
To:悠太
From:理沙
悠太君の一番になれないなら悠太君を殺して理沙も死ぬ。
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ざっと見たところこのようなメールが2〜3分おきに数十件と送られていた。
「部活中はなかなかメールを返せないから、携帯電話を放っておいたらこんなことになっていた。もちろん部活後にすぐメールを返信したけど…その時は納得してくれても、また次の日には同じようにメールがくるんだ。家に帰ってからは電話もひっきりなしにかかってきて、出られる時はいいけど出られないと着信履歴が…。」
悠太君は今度は携帯電話の着信履歴を私に見せた。
「えっ?!これ全部理沙でうまってる?」
「そうなんだよ。」
「宵闇と理沙ちゃんは仲が良いから、宵闇の方からも理沙ちゃんに悠太のことは誤解だって伝えてもらえないかな?」
圭介君にも頼まれ翌日理沙に話してみると約束をした。
その時ふとどこからか視線を感じた気がしたが、気のせいで済ませてしまった。
翌日。
「理沙!最近悠太君とどう?」
「悠太君部活が忙しいみたいで理沙を構ってくれないの。理沙さみしくて。もしかして部活で他に好きな子でも出来たのかな?」
「部活ならしょうがないよ。でも部活がない時はいつも理沙と一緒にいるじゃん!他に好きな人がいるなんて考え過ぎだよ。」
「でも昨日は部活なのに悠太君と圭介君と宵闇の3人で楽しそうに話してたよね?なんで私が抜けものなのよ!」
昨日感じた視線は理沙?これ以上誤解を招きたくないと理沙を必死になだめた。
嘘をついても理沙を傷付けるだけだと思い、正直に話すことにした。
「悠太君から理沙のことで相談されて…理沙のこと好きだけど気持ちが上手く伝わらないって。その…メールとか電話がさ。ちょっとだけ回数多いんじゃないかなって私も思ったし。理沙の気持ちは悠太君に伝わってるから大丈夫だよ!」
「もういい。裏切り者!!」
理沙のその一言で会話は終わってしまった。
その後、理沙は私と距離を置くようになった。
今までは常に一緒に行動していたのに、私を避けるようになり、4人で行動することが無くなっていった。
理沙は悠太君にべったりで、私や圭介君ももちろん他の人さえ寄せ付けなくなった。
悠太君は圭介君や私に理沙のことを相談することが多くなっていった。
常にべったり、メールや電話の回数も尋常でない量がくる、何か気にくわないことがあると二言目には「死んでやる」、待ち伏せされる等々。
そしてまだ高校生である悠太君には理沙の気持ちが重すぎ受け止めることが出来ず、理沙への気持ちは薄れていってしまった。
大好きな友達の別れが悲しく、なんとか2人の仲を取り持とうとしたが、徒労に終わった。
そして2人は破局してしまった。
その後、理沙は何事も無かったかのようにまた私と親しくし始めた。
理沙も初めての彼氏で悠太君との距離感が掴めず暴走してしまったと反省し、私も理沙の居ない所で話を進めてしまい申し訳なかったと、お互い謝罪し合いもとの関係に戻ることが出来た。
ただし仲良し4人グループの関係は終わってしまったが。
友人関係も修復出来、圭介君との交際も変わらず順調で、私はまた楽しい高校生活に戻れたと思っていたが…クラスで妙な噂が立ち始めた。
私が彼氏がいるにも関わらず理沙の元彼である悠太君を誘惑したと。
もちろん事実無根、根も葉もない噂。
圭介君は事情を知っているので、そんな噂気にせず今まで通り私と接してくれ、親友である理沙もそんな噂気にすることないと私を励ましてくれた。
しかし状況は一向に改善されず、噂は他クラスへも伝わっていった。
今となればそんな噂笑い飛ばすところだが、当時まだ精神的に幼かった故私は追い詰められていった。
その頃から私は悪夢を見るようになっていった。
黒い影の様な物に追い掛け回され、逃げられない所までくると刃物で滅多刺しにされ、飛び起きるということが多かった。
精神的に追い詰められているせいで、夢にまで影響していると思い、気にしないように努めていた。
しかし悪夢は続き、眠れぬ日々が多く精神的にも肉体的にも弱っていった。
そして現実でも黒い影がちらつくようになった。
そんな私を見兼ねて父が事情を聞いてきてくれた。
※父については過去話に詳しく載っています。霊感があるような父です。
悪夢のこと、現実での黒い影のことを父に話した。
父いわく、私には黒い影がまとわりついてる、何か心あたりはないかと問われたが、私も多少なりとも霊感と呼ばれるものがあり、心霊スポットや危ないと感じる所には一切近付かないでいたので心当たりは皆無だった。
しばらく寝る時は姉と一緒に寝るようにと、姉は無意識に悪いものを遠ざける性質があるとのことだった。
姉も心配してくれ一緒に寝ることを快諾してくれ、不思議なことに悪夢を見なくなった。
学校では圭介君や理沙にも相談していた。
2人は心配してくれ、私の話を聞いてくれた。
特に理沙は心配してくれ、常に私を励ましてくれた。
「最近変な噂が立っているから神経質になり過ぎなんだよ。気にしないで楽しく過ごそう!私はいつでも宵闇の味方だから何かあったら何でも相談してね。」
理沙の言葉は頼もしく、本当にありがたいと感じていた。
姉と一緒に寝るようになってから一週間、悪夢にうなされることもなく、現実でも黒い影を見なくなっていた。
しかし変わったことが一つあった。
学校へ行くと理沙の体調が思わしくないと。
「理沙、最近調子悪そうだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ!多分勉強疲れかな?それより宵闇は最近悪夢の話もしないし、調子良さそうだけど何かあったの?」
心配してくれていた理沙に、父のアドバイスを受け、姉と一緒に寝るようになってから悪夢も見なくなったことを話した。
「高校生にもなってもお姉さんと一緒に寝てるっておかしくない?それ恥ずかしいよ〜やめた方がいいよ。宵闇のお父さんもお姉さんもちょっとおかしいんじゃない(笑)」
心配してくれたのになんだか家族のことをバカにされたようで多少の疑問も持ったが、確かに高校生になっても姉と一緒に寝るのはおかしいかと思い、その場は適当に流しておいた。
人の噂なんていい加減なもの、私への噂も気がついたら忘れ去られていった。
彼氏とも順調なお付き合いが続き、親友にも恵まれ、悪夢や黒い影もすっかりなりを潜め、再び順調な生活に戻っていった。
しかし理沙は相変わらず体調が優れないと、学校を欠席することも増えていった。
理沙が心配でお見舞いに行き話をしたりした。
「体調大丈夫?病院へは行った?」
「それより宵闇は最近楽しそうだけど、噂とか悪夢はもう大丈夫なの?」
「なんか噂も気にしすぎてただけみたい。気がついたらみんなそんな噂忘れてるし、悪夢ももう見なくなったよ!心配してくれてありがとう!」
「そっか〜私はこんなに辛いのにね!」
「私が辛い時に理沙は助けてくれた、今度は私が理沙の話なんでも聞くよ!」
「人の彼氏誘惑しておいてよくそんなこと言えるね!不幸になる私を見てそんなに嬉しいの?自分が私より可愛くないからってやきもちやいてんの?クラスの男子の人気者の私はむかつく?あんたは私の引き立て役でいれば良かったんだよ!私より幸せになるなんてあり得ない!!」
理沙のその言葉を聞き一瞬何を言われているか理解出来なかった。
理解した途端親友だと思っていたのにそんな風に思われていたと悲しくなり、理沙の家を飛び出した。
家への帰路またもや黒い影に追い掛けられた。
ここの所そんなことはなかったのですっかり油断していた。
走っても走っても追い掛けてくる。
横断歩道で信号につかまり、一刻も早く走り出したいのに…その時突然背中を車道に向かって強く押された。
車の急ブレーキが辺りに鳴り響き、私は気を失ってしまった。
目が覚めたら私は病院のベッドで横になっていた。
何が起きたかわからず、ベッドの周りには家族が心配そうに私を覗き込んでいた。
「あれ?私どうしたの?」
「車道に飛び出して車に跳ねられそうになったんだぞ!幸い車が早く気がつき急ブレーキをかけてくれて擦り傷ですんだが。」
父が心配そうに話かけてきた。
「そうだ!私誰かに背中を突き飛ばされて…。」
「わかってる。今は何も言うな。ゆっくり休め。」
父はそう言い話を止めた。
その日は念のため検査をするとのことで、入院となった。
家族が病院を出る時に、普段姉が身に付けている腕時計を置いていった。
「前にも話したが姉は悪い物を遠ざける性質がある。姉が普段身に付けているものは姉の性質が宿っている。今晩はこれを肌身離さず持っていること。」
父はそう言うと帰宅していった。
その夜、妙に寝苦しくなかなか眠りに就けずにいた。
するとどこから嫌な気配がし、私は必死に姉の腕時計をその気配目掛けてかざした。
その途端何ともわからない叫び声がし、気配は消えた。
私は安心したように深い眠りに就いた。
翌日特に検査結果に異常はなく無事に退院出来た。
帰宅後父と話をし、私に起こった今までの不可解なことが全て解明された。
結論としては理沙の生き霊だった。
時に人は生きたまま強い怨念を持った場合、その念を相手に送り災いをもたらすことがあると。
悪夢や黒い影、私を突き飛ばした物、全て理沙の生き霊であろうと。
そして姉の性質により、生き霊さえも跳ね返していたこと。
よく言う所の呪い返しを姉により行っていたこと。
人を呪わば穴二つ、理沙は私へ向けた怨念が弾き返され自ら体調を崩した。
根本的に解決するには本人に生き霊を飛ばしていることを理解させ止めさせることしかない。
しかし現実に物理的に攻撃を仕掛けられるくらいの怨念になると、最早手遅れであるかもしれないと。
このままでは姉の呪い返しを受け破滅して行く可能性が高い。
確かに酷いことをされたが、一度は親友と思い仲良くしていた理沙を助けたいという思いでいっぱいだった。
きっと私の態度に誤解を招くことがあったのかもしれない。
理沙の家を訪ねることにした。
しかし遅かった。
理沙の母によると夜中に急に叫び出し暴れ錯乱状態になり、救急車にて搬送されそのまま入院となったこと、今はまだ錯乱状態で面会謝絶とのこと。
その後二度と理沙に会うことは叶わなかった。
後日談。
理沙は精神が崩壊し、自殺へと走ってしまった。
理沙の葬儀にて理沙の母より形見分けとして理沙の日記を頂いた。
「理沙の親友でいてくれてありがとう。親友である貴方に理沙を忘れないためにもぜひ受け取って欲しい。理沙の分まで強く生きて。」
そう言われ受け取るほかなかった。
理沙の日記は最初から私を親友としてなど思っていなかった。
『学校で私の奴隷が見つかった。私の引き立て役にぴったり。容姿も中味も全て私よりも劣っている。こいつを利用してまた学校生活を楽しもう。』
『彼氏が出来た。容姿端麗の優等生で私にぴったりな彼だ。宵闇には平凡な圭介がお似合いだ。』
『なんで私はこんなにも可愛いのに悠太君と上手くいかないの?それに比べ私より劣る宵闇の方が幸せそうなの?おかしい?なぜ?』
『わかった。宵闇は私に嫉妬して悠太君に私の有る事無い事吹き込んで、誘惑しようとしてるんだ。許せない。あいつだけは許せない。悠太君を誘惑したことみんなに言いふらして、あいつを貶めてやる。』
そんな内容が続きそれ以上読めなかった。
親友だと思っていたのに涙が止まらなかった。
理沙の母は果たしてこの日記を読んだ上で、私にこの日記を渡したのか。
もう何も考えたくなくなり、その日記は燃やした。
作者宵闇-2
ここまで読んでくださった方ありがとうございますm(_ _)m
長くなってしまいました。
これでもだいぶ端折ったのですが、文才がなく上手くまとまりませんでした。
ほぼほぼ実話です。
怖いというか悲しい話でした。