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「かくれんぼする人この指とまれ」
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「はいはーい‼」
「公園でやる?学校?」
「この前先生に怒られたじゃん、早く帰れって」
「あそこ運動公園だから、何気に広いよね」
「飴持ってきた?」
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小学生の頃、いつも六人で遊んでいた。
当時かくれんぼが流行っていて、最後まで鬼に見つからなかったら、飴をみんなから一つずつもらうことができた。
町内に大きな運動公園があり、学校が終わるとそこで毎日のように遊んでいた。
その運動公園は、山を少し切り開いたような作りで、アスレチック場と、そこから上へと抜ける階段を上れば滑り台やシーソーがあり、後ろには山肌が迫っていた。
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私は、前日にとっておきの場所を見つけていた。
階段を上り、左手に進むと山肌にぽっかり穴が空いていた。
ちょうど子供一人が隠れられるくらいの大きさで、穴の入り口にカモフラージュとして落ち葉や枝を盛っておいた。
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下の方で微かに声がする。
「…ちゃん見ーつけた」
私は、クスクス笑った。
絶対に見つからない。
ひんやりとした空気と静けさに包まれて、意識が遠くなっていった。
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「あっ‼見つけた‼」
ハッと顔を上げると、ミカちゃんが立っていた。
「こんなとこにいたの!?みんな心配してたんだよ!?」
辺りはすっかり薄暗くなっていた。
「ごめん…私寝ちゃってた。他のみんなは?」
「ユウが全然見つからないから、一旦家に帰ったんだよ‼お父さん達に話して、一緒に探してもらおうって‼」
「そうなんだ…ごめんね」
「はー…良かった…」
「ほんとにごめんね…」
「…いいよ、もう。…はいコレ」
「…飴はくれるんだ(笑)」
「帰るよ‼もう‼」
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ミカちゃんと手を繋いで家路を急いだ。
「かーえろかえろ、おうちにかえろ」
顔を見合せて、笑った。
「アハハ、変な歌」
辺りはすっかり陽が落ちて、いつもの帰り道が何だか別の場所へと繋がっていくような感覚を覚えた。
「もうすぐミカちゃん家だね」
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人集りができていた。
何台ものパトカーと救急車。
赤いランプがギラギラと光り、辺りを照らしていた。
「大丈夫ですか!?聞こえますか!?」
家の中から大きな呼び声がし、救急隊員が担架に乗った人を次々と運び出してくる。
警察官が絶え間なく家を出入りし、周囲の人達から何やら話を聞いている。
「…なにこれ?」
状況がまるで把握できない。
一体何が起こっているのか。
今、運び出された人は誰なのか。
周りの大人達がひそひそと話をしている。
「可哀想に、強盗だって」
「犯人は捕まったの?」
「あれ、即死じゃないの」
「ミカちゃん、まだ小学生なのにね」
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…ドクン…ドクン…
心臓が波をうつ。
…強盗?死んだ?ミカちゃんのお父さんとお母さんが…?
…ミカちゃんは…?
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――――「はい、コレ」
最後まで鬼に見つからなかったら、飴をもらえた。
私は確かに今、手を繋いでいる。
彼女の体温が、小さな掌から伝わってくる。
全身が粟立つ。
カタカタと震える。
振り向くことができない。
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「…ユウ、おうちにかえろ」
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作者M