カーテンを、買い換えた。
カーテンは、汚れが付きやすい生地らしく、黒い染みのような汚れがまとわり付いて取れなかった。
いっそ、外してしまおうかとも思ったが、畳の床なので、日に焼けてしまっては困る。
ああ…これで何回目なのだろう…
新しいカーテンを買った帰り道、同じアパートの住人に声をかけられた。
「あれ?また模様替え?」
「違いますよ。自分の部屋ならどれだけ良いか…」
「大変だねー管理人も。あそこのじーさん、ボケがだいぶ進んでるんだろ?」
「え…?」
「その部屋のじーさんだよ。昼夜構わず大声出すし、それになんか臭いんだよ。噂じゃろくに用もたせなくなって、垂れ流しなんじゃねーかってさ。」
「…そうですか。私もちょくちょく様子は見に行ってますが、部屋自体はきれいなもんですよ。臭いもないし。」
カーテンを付け替える。
きっとまた、次に来た時は、黒い染みが付いているんだろう。
部屋の壁には、色褪せたカレンダー。
早いもので、あれから十四年目の冬だ。
十四前の今頃、この場所で人間の断末魔を聞いた。
赤い血も、時間が経てば黒ずんでくる事を知った。
窓に映る私の後ろに、老人の姿が見える。
「…早く犯人捕まればいいですねぇ…」
作者M