この話は『肝試しinカナダ』の番外編のような話になります。
ハチャメチャな肝試しから数日、私達は相変わらず友人宅に集まり宅飲みを開いていた。
そろそろお開きかという時に、カナダ人の友人が、
「そういえばこの間日本の怖い話を聞いた時、こっくりさんっていうのがあったよね?あれやってみたいんだけど!」
と言い出した。
それを皮切りに、
「面白そう!やろーやろー!!」
盛り上がってしまった…。
正直やるのは面倒だと思った。
私は多少なりとも霊感のようなものがあるのだが、こっくりさんについては懐疑的であったからだ。
なぜ私がこっくりさんに懐疑的になったのかは、中学生の時まで遡る。
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私が中学校1年生の時に学内でこっくりさんが流行った時期があった。
放課後の教室に残り、こっくりさんに興じる生徒が多くいた。
クラスメートの誰は誰が好きか〜や、そんな占い感覚でやっていたようだった。
私も一緒にやろうと誘われたことがあったが、霊感のある自分がそんなことに関わり何かあったら嫌なので常に断っていた。
放課後は部活のある日はすぐに部活へ向かい、部活のない日はすぐに帰宅するような生活を送っていたのでこっくりさんとは無縁であった。
そんなある日、私が属していた仲良しグループの友人達が妙に暗かった。
「どうしたの?なにかあった?」
私が訪ねると友人の一人であるB子が、
「実は昨日の放課後こっくりさんをやっていたらなかなか帰ってくれなくて…それでA子が怖くなって指を離しちゃったら、こっくりさんが怒り出して、呪い殺すって…もうどうしたらいいんだろう?!」
A子はうつむき、恐怖のためか顔色も悪く小刻みに震えていた。
私はそんなに大きな力は持ち合わせていないが、嫌な空気や気配などを察知することが出来る。
だが友人達からは何も感じてはこなかった。
「今日も放課後こっくりさんをやって、謝ってみようと思っているの。」
B子はそう言うものの、友人達を見る限り特に危険性や緊急性を感じなかったため、私は父に(なぜか霊感が強く対処法なども心得ている)相談してから対処した方がいいと思い、今日の放課後のこっくりさんは止めさせた。
「でもこのままじゃ…。」
友人達は心配そうだが、
「私の知り合いにそういう話に明るい人がいるからさ、その人に相談してみるから1日待って!」
友人達をなだめその日は帰途に着いた。
ちなみに私が霊感めいた能力があることや、家族も霊感一家ということは表向きふせていた。
人より異質な能力があるということに対し、好奇の目で見られたり、からかわれたりするのを恐れていたからだ。
その日の夜に父を捕まえ相談してみた。
「こっくりさんか…でもお前が何も感じなかったということは大丈夫だろ。試しに明日お姉ちゃん(こちらも霊感があり無意識に邪悪なものを跳ね返す力がある)が家に居る時に友達を呼んでうちでこっくりさんをやってみろ。」
「でもお姉ちゃんが家に居る時にこっくりさんやったら、お姉ちゃんに跳ね返されてこっくりさんこないんじゃないの?」
「兎に角明日やってみろ。もしこっくりさんがきたら俺の言う質問をこっくりさんにぶつけてみろ。それで全てわかるだろうから。」
父はそう言い、こっくりさんへの質問事項を私に伝えると共に、その意図を説明してくれた。
次の日自宅に昨日こっくりさんをやったA子、B子、C子、ギャラリーの友人を2人呼び、姉が家にいることを確認しこっくりさんを始めた。
今日のメンバーはA子、B子、私の3人。
今回は私もこっくりさんに参加し、10円玉に指をのせた。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
こっくりさんを呼び出す時の決まり文句がB子により発せられる。
何度かそんな言葉を発すると、10円玉は『はい』の方へ進んでいった。
その時点で私は特に何も感じていなかった。
ただ妙な違和感はあった。
まず一昨日と同じモノが降霊されたかを確認をしようと質問をしようとした所、10円玉はスッと動き出し文字盤をなぞった。
平仮名の辺りをクルクル回り、『のろう』『ころす』などの物騒な言葉が綴られる。
友人達は震え上がっていたが、私は相変わらず何も感じず嫌な気配もない。
「こっくりさん、取り敢えず落ち着いて話をしましょう。一先ず鳥居にお戻りください。」
私がそう言うと10円玉は平仮名をクルクル回り、不承不承といった感じで鳥居へと戻って行った。
「お戻り頂きありがとうございます。指を離してしまいお怒りかもしれませんが、ここは一つ落ち着いて…そうそう質問させて頂いていいですか?」
友人達は私の落ち着きように若干引いていたが、そのおかげか少し平常心を取り戻してくれたようだった。
そして『はい』の方へ10円玉が動いたのを確認し、私は昨日父に言われた質問をこっくりさんへしてみることにした。
「こっくりさんは何でも知っているのですか?どんな質問にも答えて頂けますか?」
『はい』
「では質問させて頂きます。円周率を現在解明されている範囲で全て教えてください。」
沈黙。
「15872+49527の答えを教えてください。」
沈黙…後、10円玉暴走。
『のろう』『ころす』
おまえはそれしか言えないのかと…。
私はそこで指を離した。
友人達は、
「ちょっと!宵闇なんで指を離したの!しかも訳のわからない質問ばっかり。また呪われるじゃない!!」
「大丈夫。ネタはわかったから。メンバー変更してもう1回やるよ。」
嫌がる皆をなだめ、今度は私とギャラリーだった友人2人の3人で始めた。
……しかしこっくりさんには何の動きもなかった。
何度かメーバーを入れ替え検証した結果、A子とB子が参加した時のみ、10円玉が動くことが分かった。
A子、B子いわく、私達は霊感が強いから霊を呼び出せると…。
それは置いておき、私はネタバラし。
「いわゆる集団心理的なプラシーボ効果だよ。実はこの家は結界のようなものがはってあって、よほど強い霊じゃない限り入ってこれないの。素人がこっくりさんで呼び出せる霊なんて低級霊がほとんどだから、まずこの家には入れない。」
「でも10円玉は動いたんだよ?!」
友人…特に自称霊感持ちのA子、B子はどうやら納得出来ないようだ。
これはいくら言っても埒があかないと思い、父に渡されたらなんちゃってお札を渡し、
「まぁ兎に角もう大丈夫だから、このお札持ってれば呪い殺されることはないからね!はい、じゃあお開き。これに懲りたらもうこっくりさんはやらないこと。」
そして皆を家に帰した。
その夜、父にこっくりさんの結果を報告した。
「思った通りだ。10円玉を動かしていた犯人は恐らくA子ちゃんかB子ちゃんだな。おまえが何も感じなかったのは、霊ではない人間が動かしていたからだよ。思い込みは怖いからな〜そういう事例の方がこっくりさんに関しては多いんだよ。特にまだ精神が未熟な中学生ともなると尚更だ。」
「確かに10円玉が動いている時妙な違和感はあったんだよね。何て言うか人為的に動かされているような…。」
「お姉ちゃんが家に居るから霊は入ってこれないからな。あの質問事項も普通の中学生に答えが出せない、尚且つ想像では答えられず、唯一の正解のある質問だから、A子ちゃんかB子ちゃんによって動かされていたこっくりさんは答えが出せなかったんだよ。」
なるほどな〜
そして私達のこっくりさん騒動は幕を降ろしたが…少々後味の悪い話が付いてきてしまった。
後になってC子に聞いた話によると、こっくりさんへの質問でA子やB子が憧れている先輩は誰が好きかなどと聞いていたらしい。
具体的に誰が好きということは明言されなかったようだが、こういうタイプの女子が好きであるというような答えは返ってきたらしい。
その時に、そのタイプは自分であるというようなことでA子、B子間で軽く小競り合いがあったと。
私の見解になってしまうが、『のろう』や『ころす』などの言葉はA子、B子間の小競り合いの中から生まれたちょっとした負の感情ではないかと。
お互いを怖がらせ牽制するような…。
結果として共倒れになってしまったが。
ただ、この時の件は霊的なものが関与するこっくりさんではなかったが、世に出ているこっくりさんの話を見聞きすると、一概に全てが霊の仕業ではないとは言い切れないが。
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と、そんな出来事があったので私はこっくりさんには懐疑的であった。
あった…が、この盛り上がり具合からするとやりたくないとは言えない…こんな時に日本人特有の《空気を読む》が発動されてしまった。
『こっくりさん〜実践編〜』へ続く。
作者宵闇-2
最後までお読み頂きありがとうございますm(_ _)m
長くなりそうなので2部構成にさせて頂きます。
相変わらずまとまらない…申し訳ないです。
いつもの如く誤字脱字ご容赦ください。
案外自分だと気がつかないもので(>_