「君は悪くない、この病院のためにもこの事を肝に銘じなさい。」
ーーそうだ、俺は悪くない。今回のミスから学ぼう。ーー
確かに佐藤さんは、俺が点滴を間違えたせいで亡くなった。
しかし、彼とは毎日リハビリに付き合ったり、会話したり、彼があと数週間の命だと担当医から聞かされた時、自分のことのように悲しかった。
佐藤さんは俺を恨んでるだろうか…
院長室を後にし、彼がいた病室へ向かった。
「さ、佐藤さん…」
ベッドの側に人型の光が見えた。
俺は間違えなくこれが佐藤さんだと理解し、
おそらくこのあと俺は呪われるのだろうと思いを巡らせていた。
「佐藤さん、ごめん。本当にごめん。」
しかし彼からの返事は思いがけないものだった。
「いいんだよ、あなたはいつも独り身の僕と一緒にいてくれた。
こんな老人の面倒を見てくれた。
それに楽に死ぬことができた。
君には感謝してるんだよ。」
涙が出た。
そうだ、佐藤さんはいつも優しい笑顔を見せ辛い治療にも耐えていた。
彼は俺に感謝の思いを伝えるためだけに現れたのか…
「僕はそろそろ逝くね。」
佐藤さんは笑顔でそう言い彼の体は光に包まれていく。
「佐藤さん‼︎」
彼の元に向かわずにはいられなかった。
まだ言いたいことがたくさんある。
shake
「何してるんですか!」
同僚の声が病室に響く。
自分でも驚いた。
窓から身投げしようとしている自分の現状に。
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同僚の背後に佐藤さんの顔が見える。
shake
「ちっ」
舌うちが聞こえた気がした。
作者terror