我が家の隣に住んでいたおばあちゃんが先日亡くなってしまった。
死因は知らないし、知りたくもない。
というのも、一人暮らしの筈な隣家の窓に黒髪女性を見て以来、住みやすかった我が家から引っ越したくてたまらなくなってしまったのだ。
第6感が人よりある妹はこの家を怖がって遊びに来なくなったし、近所の人からは変わり者のお隣さんが亡くなった家として好機な目で見られている。
主人に相談したが、単なる育児疲れで見た幻、噂もいつかは消える、としか思って貰えず不安な日々を過ごしていた。
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ある日の夜、子供を寝かしつけリビングで雑誌を読んでいた。主人は仕事が遅くあと1.2時間は帰って来ない。
時間を確かめる為ふと顔を上げた途端、また耳鳴りが始まった。
shake
ヒッ…⁉︎
リビングの天井は吹抜けで、時計の下に光を取り入れる窓があるのだが、そこに女の顔が覗いている。
手を窓に這わせ、まるで何かを探すかのように少しづつ移動している。
普通の人間があの高さから顔を覗かせる為には、身長3メートル以上は無いと難しい。
私は分かっていた、あの女性はあの日お隣さんの小窓にいた女性だ!!!
伸びた前髪の間から見える両目はこちらを見ていた。
まさか家に入ろうとしているの…⁉︎
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気が付くと、青ざめた主人が私を揺さぶっていた。
「正気に戻ってくれて良かった…帰って見たら、君があの窓に物を投げつけているからびっくりしたよ。」
確かにリビング中には、私が投げつけたらしい物が散らばっていた。
幸い、窓は割れていなかったが自分の意思ではこんな事絶対しない。
私は夜泣きした我が子をあやしつつ、部屋を片付けでくれてる主人に見たものを話してみた。
主人はさっきの様子を見て嘘ではない、と信じてくれたようだ。
「さっき君は、壊せば入れると何度も呟きながら窓を壊そうとしていた。そいつは君や子供に何をするつもりだ⁉︎それにまだローンが29年も残ってるんだぞ…くそ…そんな奴入れてなるものか!!」
…ちょっとずれている気がするが私は分かって貰えた心強さで、その夜は安心して眠った。
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仕事を休めない主人は、子供と一旦実家に帰るよう私に言うと出勤していった。
それを見送ってすぐ、私は妹に連絡した。
「もしもし?どうしたのお姉ちゃん?」
私は昨晩の事を話した。
「前より悪い状況になってるなんて…なら迎えに行くから出かける準備して待ってて!」
すぐ切れてしまった。
それから妹は本当にすぐ来た、慌ただしく私と子供を乗せるとすぐに出発。
「私の力不足でごめん!」
急に謝られて訳が分からない私に、続けて妹は色々話してくれた。
「お姉ちゃんが昨晩見たのは前遊びに行った時に見た幽霊と同じだ。」
「悪いものではあるが、隣家に縛られていたのでこちらには影響は無いと判断し、あえて怖がらす事もない、と詳細は言わなかった。」
「念の為に全ての出入り口に私がいつも使っている塩を少し撒いたの、でも吹抜けの窓は位置が高すぎて塩を充分に撒けなかった。」
「私に力があれば、もっと違う方法もあった…」
で、ごめんだったのか。
そうこうしているうちに、目的地に着いたが…普通の田舎にある民家だった。
妹が教えてくれた。
「私は霊を感じる事が出来るけど、払ったりはできないの。中途半端に力があるせいで影響を受けやすいから、そんな時はここの先生にお世話になるんだ。」
「大丈夫!ここの先生は信頼できるよ。」
そうして引戸をカラカラと開けた。
作者アプリコット
前回投稿した話の後日談となります。
申し訳ありません、収まりきらなかったので、勝手に①②に分けさせて頂きます。
この話だけでも読んで頂きありがとうございました。
もし良かったら、続きを読んでやってください。