長編12
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中古携帯

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今から8年前、平成19年前後の出来事です。

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当時、母子家庭の私は、15歳の長男と9歳の次男と暮らしていました。

自宅に電話がなく、携帯も契約が出来ませんでした。

その理由は、収入が少なく毎月の支払いが難しいという理由でした。

仕方なく、プリペイドカード式の携帯電話をお店で購入。

その携帯は、プリモバイルと呼ばれています。

プリモバイルとは、1000円、3000円、5000円のプリペイドカードを、プリモバイル本体にチャージして使う携帯電話の事を言います。

世間一般には、プリカで通じるかもしれません。

通話は1分100円だったと記憶しています。

メールは月300円で使い放題。

なので、学校や担任への連絡はメールでやり取りしてました。

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1年ほど使った頃だったと思います。

不具合が増えて、突然電源が落ちたり、電源が入らなかったりと調子が悪くなりました。

プリモバイルは、修理や機種変更が不可能で、壊れたら買い替えとなります。

携帯電話本体の価格は8000円程度。

この頃白ロムという携帯電話が、リサイクル屋で売られるようになりました。

白ロムとは、他の人が使っていた使用済みの携帯電話。

機種変更等で前の携帯が不要になり、それを初期設定に戻した状態で、お店に持って行きそれをお店側が販売する。

現在も売ってあると思うが、その当時はスマホ等なく、ガラケーが売られていました。

使っていたプリモバイルは、シムカードを差し替えれば使えるタイプだったので、リサイクル屋で白ロムを購入する事にしました。

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3件ほどお店を見て回り、格安で使いやすそうな白ロムを購入。

価格は4000円で、3年前に販売されたスライド式のガラケー。

カメラも付いている。

カラーはピンクだった。

白ロム購入の難点は、好きなカラーが選べない事だと思います。

当然説明書も箱も無く、使っているうちに覚えていくしかなかった。

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1ヶ月後、使い方に慣れた頃でした。

09〇から始まる、地元の市外局番が画面に表示さ、知らない電話番号からの着信が増えたのです。

表示された電話番号は、毎回同じ番号でした。

着信拒否の設定が分からず、電話に出ると全て無言。

受話器口からは何も聞こえてこず、気持ち悪くなりすぐ切ってました。

勿論かけ直しもしてません。

それから、例の電話番号からの着信は無音着信設定にして、出ないようにしてました。

この会社の携帯は、同じ携帯会社同士なら携帯電話番号でメーが出来る『スカイメール』というものがあった。※現在はないと思う。

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今度は、見た事も無い番号、携帯電話じゃない番号から、訳が分からない記号だらけのメールが届くようになった。

URL付きのメールも何度も届いたが、プリモバイルはインターネットに繋げないのでそのまま放置していた。

すると今度は、画像付きのメールが届くようになった。

画像を開くと、全面真っ黒の画像ばかり。

気持ち悪くなり、添付メールは届いたと同時に削除していた。

しかし、削除したらメールが1日断つとフォルダに残っている。

消したはずのメールが復活していた。

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それから不可解な事ばかり起きるようになった。

部屋の隅々から「パシッ!パシッ!」という、ラップ音のような音が聴こえてきたり。

長男の和実(仮名)が寝ている時、突然起き上がり「〇〇が憎い」「〇〇の×××××」と、聞いた事が無い名前や意味不明な言葉を言ったり。

(×××××の部分は聞き取れなかった)

長男だけ金縛りにあったり。

テーブルから落ちるはずの無い物が床に落ちたり。

画像付きのメールも、真っ黒な背景から灰色になり、画像の中央に人の形をした黒っぽい影が映っている。

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さすがにヤバイと感じた私は、仕事が終わった足で携帯を購入したお店に出向いてみる事にした。

購入して半年間は、保証が付いていたので返品しようと考えいた。

お店に行き、携帯電話の不可解な状態等を店員に話した。

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しかし、こういう事例は今まで起きた事が無いという事で、門前払いを喰らい諦めてお店を出た時だった。

1人の店員に声を掛けられた。

「少しお時間いいですか?」

店の外で話をすると、店員だと思った人は店長で、店の中で話をしたいと言われ事務室に通された。

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事務室は、壁が白くパソコンが置いてある机と、真ん中に白いテーブル。

それと、テーブルを囲むように、黒いソファーが置いてあった。

「どうぞ座って下さい」

そう店長に言われたので、私はソファーに腰を下ろした。

すると店長は、私がお店で購入した携帯電話について語り出した。

店長は霊感が強く、私が購入した携帯を、約2ヶ月前男性客から買い取った。

この携帯電話をお店に陳列した直後、私が購入したので携帯の事を覚えていたそうだ。

しかし問題なのは、売った男性客に女性の霊が憑いていたというのだ。

しかも、背中から男性客を抱き締める形だったとか…。

気分が悪くなった店長は、レジを他の店員に変わったそうだ。

そして相場の買取価格で買い取ったという。

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「携帯を見せてもらえますか?」

店長から言われたので、鞄から携帯を取り出しテーブルに置いた。

テーブルに置いた携帯に手を伸ばそうとした店長は、すぐに手を引っ込めた。

「どうしたんですか?」

私が首を傾げて聞くと…。

「霊気を感じます。強い怨念みたいな感じの…」

その言葉を聞いて寒気を感じた。

「自分は浮遊霊や地縛霊を見たり感じる事は出来ますが、見る、感じるだけで何もできません。

あの時、携帯が持ち込まれた時、この携帯に触っていれば、今回の事に気付けたはずです。本当に申し訳ありませんでした。

別の携帯と交換をするんで…少しお待ち下さい」

店長は一旦事務室を出た。

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店長が事務室を出た後、私はテーブルに置いてある携帯を見た。

そしてなんとなく手に取った。

本体が暫く触っていなかったのにやけに熱い。

バッテリーが熱くなってる感じがした。

その後店長が事務室に戻ってきて、携帯を触ってる私を見て…。

「携帯をすぐテーブルに置けっ!

女の霊!女の霊が携帯から出てこようとしてる!早くっ!!」

私は店長に怒鳴られ携帯をテーブルに戻した。

「どーしたんすか?」

店長の怒鳴り声に気付いた店員が事務室に入って来た。

「や、なっ、なんでもない。仕事に戻れ…」

店長は尋常ではない汗を垂らしながら、椅子に座りテーブルの上に5個の白ロムを並べ

「好きな携帯を選んで下さい」と私に言った後、誰かと電話をしている。

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電話を終えた店長は「知り合いの霊媒師に、携帯を取りに来てもらう事にした」と…。

「霊媒師ですか?」

「このまま捨てる事は出来んし…。

呪われでもしたら、たまったもんじゃありませんよ!それに、シムカードも取り出さないといけんし…」

「そうですよね…」

私はそれで納得し並べられた携帯を見比べた。

そして、2年前に発売された、折りたたみの青い携帯を選んだ。

「これにします」

「分かりました。今回は本当に申し訳ありませんでした」

店長は深々と頭を下げた。

「いいえ。私は霊感とか無いから全く…」

「そりゃそうですよ。霊感なんて無い方がいい」

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そして私は、赤いスライド式の携帯を売った人の情報を聞いてみる事にした。

「差し支えなければ、売った人の氏名って教えてもらう事は出来ますか?」

店長は少し考えて

「被害にあった訳だし、氏名だけなら教えましょうかね…」

そう言うと店長は立ち上がり、机から買取りバインダーを取りパラパラめくりだす。

「これだ…」

と私に名前を教えてくれた。

「〇 〇〇さんですね…」

…………………………!

氏名の名前の部分を聞いて、身体の奥、胸の真ん中辺りが急に痛くなった。

和実が寝ていた時に、うわ言のように「〇〇が憎い」と言っていた。

和実が言っていた「〇〇」の名前が、携帯を売った人の名前と同じだった。

それに金縛りにもあっていた。

その事を思い出し、店長に話をしてみると…

「それヤバイんじゃ?この携帯だけじゃなく息子さんにもなんか憑いてるかもしれない…」

店長の顔が青ざめていた。

「でも、普通ですけどねぇ…」

金縛りとか夢遊病みたいな事があるだけで、後は普通に過ごしているし、学校も休まず行っている。

和実に、霊が憑いてるなんて考えられなかった。

「一応、霊媒師がいる寺を教えますから、息子さんと一緒に来て下さい」

店長はそう言うと、寺の簡単な地図と電話番号をメモ紙に書いて渡してくれた。

「それに、携帯からシムカードも霊媒師に取り出してもらいますから…」

「あっ、そうですよね。お寺には、息子を連れて今日行きます」

時間的に、和実が高校から帰ってくる時間帯だし、一度帰宅してそのままお寺に行く事になった。

「そうして下さい。自分も霊媒師が来たら、一緒にお寺に向かいますから…」

「分かりました。では、お寺で…」

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私はお店を出て、一度家に戻る事にした。

車を自宅方面に走らせてると、丁度高校から帰ってる長男を見付けて、車を歩道側に寄せて声を掛けた。

「和実~!」

窓を開けて声を掛けると、長男が振り向き

「お母さん?今帰り?」

和実はいたって普通。

霊が憑いてるなんて…。

「そう!ちょっと、連れて行きたい所があるから乗ってくれる?」

和実は一瞬考えるような素振りを見せたが「いいよ!」と後部座席に乗り込んだ。

「何処に行くの?」

和実が聞いてきたが、言葉を濁して店長から書いてもらった地図を見ながらお寺を目指した。

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30分ほど走らせると、お寺らしき建物を見付けて、敷地内の駐車場に車を止めた。

「さて…行こうか…」

ゆっくり深呼吸をして、降り立った。

「…お寺?」

和実の表情が一瞬だけ曇った。

「そう。和実、金縛りにあってるでしょ?和実は知らんと思うけど、寝てる時も起き上がって、ブツブツ言ってるのよね…。だから念のためにお祓いをね…」

『貴方に霊が憑いてるかもしれないから…』

とは言えなかった。

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「いいよ…お祓いなんて…。お寺にも行きたくない!お祓いもしたくない!」

穏やかな性格の和実が、珍しく反発した。

「だから、念のためよ」

私も必死だった。

「だから、行きたくないって言ってんの!」

額に汗をかき、お寺に行く事を拒んでいた。

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そんなやり取りをしていたら、お寺からお店の店長が出てきた。

「…着きましたね。携帯は済みましたんで…」

店長が私の耳元で、ボソッと呟いた。

「この人誰?」

和実が、お店の店長の事を不思議そうに見ていた。

「携帯ショップの店長さんよ…」

「和実君だったね?詳しくはお寺の中で話すから、中に入ってくれる?」

店長は、和実の背中に手を当て、お寺へと強引に案内した。

和実は一瞬動揺していたが、店長の押しに負けてお寺へ…。

私も、店長の後に続いてお寺へ…。

和実は、大きな仏壇が置かれている仏間のような部屋に連れて行かれた。

私も一緒に行きたかったが、余計な見物人は不要などと言われて、私と店長は別の部屋で待たされた。

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その時に、店長から携帯に憑いていた霊について話してくれた。

結論を言えば『生霊』だったらしいです。

簡単に言うと、生霊とは生きている人間が誰かに執着し、自分の魂を分裂させてそれを相手に飛ばすこと。

ということは、携帯に憑いていた生霊は、携帯を売った男性の元カノだったのだろう。

男性と携帯と、2つの魂を分裂させて飛ばしたことになる。

恐ろしいことです。

それに、執着している相手に害を与えると言うことで、呪いに近いとか。

意図的に魔術等を行う呪いとは違い、悪意を持って飛ばすと言うよりも、知らないうちに飛んでいることが多いそうで…。

それに、生霊を飛ばしている本人は、自覚が無いことが多いとか。

生霊の原因となる執着で、代表的なものは憎しみ。

携帯に憑いていた生霊も、相手への憎しみが強く残っている。

勝手な思い込みであったとしてしても、憎しみという感情には強い力があり、生霊が飛ぶ原因となるそうです。

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お祓いの流れも、教えてくれました。

携帯に霊が憑いているのは確かなのだが、霊視は必ずしなければいけなく、霊視を行った後、取り憑いた携帯から生霊はがす。

生霊はまだ生きている人の魂。

生霊の本体(身体)に戻す必要があり、この場に居ないので、魂を本体へと飛ばしたそうです。

再び生霊が飛ばないように、魂を身体に縛り付ける。

縛り付けるの意味が良く分からなかったんですが、縛り付けるそうです。

生霊を身体に戻し縛り付けたとしても、霊媒師の経験上、2割くらいが縛りから抜け出し、再び生霊を飛ばすことがありるそうです。

そのときは再度、生霊をはがし身体に縛るそうで、霊媒師の経験上、2回以上飛ばしてくるケースはほとんど無いそうです。

ざっと説明を聞いたんですが、私には???だらけでした。

それに、携帯を売った男性にも生霊が憑いてる。

男性も除霊しなきゃいけないんじゃ?と思ったんですが、余計なことは何も言いませんでした。

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店長の話を聞き終えた後、霊媒師さんが私達が待機していた部屋に入ってきた。

「息子さん、霊など憑いてませんでした。

何度も霊視をしてみましたが、憑いているのは守護霊3体だけで、生霊も憑いてませんでした」

なんか、寝耳に水状態だった。

「じゃあ、金縛りとか夢遊病の原因は何だったんでしょうか…」

「それは、息子さんは霊的な影響を受けやすい霊媒体質だからです。

息子さんには、守護霊が3体居ます。

御先祖だと思うんですが、ご年配の男性が2名と、貴女に似ている女性が1名。

普段はこの守護霊達が、霊媒体質を和らげているのです。

しかし今回の生霊は、生霊から出る波動が強過ぎて、守護霊達でも守る事が出来なかったようですね。

普段の生活でも、疲れが取れなかったり、寝不足気味、体調も良くはなかったと息子さん本人から聞きました。

一応こちらから、霊的な波動から己を守る勾玉を息子さんに差し上げてますので……」

霊媒師は、神妙な面持ちで語った。

「そうだったんですね……。

何も言わないから、分かりませんでした……。

それに、勾玉もありがとうございます」

母親なのに、和実の疲れが分からなかった。

「でも、息子さんに霊が憑いてなくて良かったですね!」

店長からそう言われた。

「はい……」

「それと、携帯から抜いたシムカードとSDカードです」

霊媒師から、シムカードとSDカードを受け取った。

これで、生霊に悩まされる事もなくなった。

「新しく買った携帯も視てみましょうか?」

「これですか?」

鞄から新しく買った携帯を取り出し霊媒師に見せた。

「はい。これも一応中古品ですからね。

何かが憑いている可能性もありますから……」

霊媒師は、店長に微笑みかけながら呟くように話した。

「ちょ…それ心外!俺の店の商品は全て霊が憑いてます!って言われてるみたいで良い気はしないなぁ~」

店長は、頭をワシワシ掻きながら……。

「ははっ!冗談だよ!親友だろ?分かれよ、それくらい…」

霊媒師は、店長の肩を軽く叩きながら……。

「まぁ、言いたい事は分かるよ。中古品って、持ち主の念があったりするからね……」

「お前は、霊感があるから大丈夫だとは思うけどね……」

「あの携帯はどうするんですか?」

必要ないモノだけど気になった。

「また生霊が携帯に戻ってくる可能性もあるので、こちらで保管することにしました」

納得のいく答えだった。

「今回はお世話になりました。

お代の方は……」

肝心な価格を聞かなければならない。

「今回はコイツ」と、店長の腰を軽く叩き

「コイツの店の商品に憑いてたんだからコイツに請求しますよ~」と……

「マジか!?」

目を丸くして、親友の霊媒師を見る。

「冗談だよ!冗談!」

またもや冗談……(笑)

「……………………」

言葉を無くす店長。

「今回は親友のコイツのアレなんで無料ですよ。

また何かあったら何時でも来て下さい。

道中お気を付けて……」

「ありがとうございました」

それから私は霊媒師と店長に頭を下げて、和実と共に帰路についた。

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新しく買った携帯に、シムカードとSDカードを差し替えて、これにて終了。

本当に、散々な数ヶ月でした。

貴重な体験をしたのはいいんだけど、息子の和実が霊媒体質だったのは意外でした。

それに、御先祖の守護霊が和実を守ってる事も知り、週末家族3人でお墓参りをしました。

母方と父方のお墓と、別れた旦那家族のお墓と……。

ちょっとしたドライブで、中学生の次男博実(仮名)は楽しそうでした。

和実は、今回の経緯を知っているので、お参りにも感慨深いモノがあったと思います。

中古品にはご注意を……。

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……

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余談

例の携帯

結局、1度縛りを抜け携帯に戻って来たそうです。

その後、再び生霊を携帯からはがし、本体に戻し縛ったそうです。

それから戻ってきてないので、時期を見てお炊き上げをしたそうです。

因みに、お店は5年前に閉店しました・゚・(。>д<。)・゚・

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今度こそ

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ロビンM子さん。書き込みありがとうございます!
お話についてのコメントお願いします(笑)

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すけちゃん様々な。
コメント有り難うございます。

携帯に限らず、中古品は怖いですよね。

息子も成人し元気に過ごしてますよ(*´ω`*)

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