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前に書いたが私は
葬儀屋に勤めたことがある
少しの期間だが
見える
聞こえる
連れて帰る
そんな被害が多く
やむなく辞めなくてはいけなかった
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葬儀屋の仕事というのは
何をするかというと
御遺体のお迎え
処理
事故死の場合は検案
自社に戻り着付
専用の冷蔵庫に保管
遺族の意向により
安置場所を決める
会場の準備
会場の設置
お通夜
告別式
出棺
火葬
という流れである
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この過程は毎回変わらない
宗派によって違いはあれど
それほど変わりはない
こんな話を長々してると
葬儀屋のまわし者みたいなので
本題に入ります
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その日も
業務が終わりかけの時に
電話が鳴った
仕事である
先輩のHさんと
急いで現場に向かう
車内でたわいもない話を
少しの時間にして
現場に到着した
警察官が2人いて
挨拶をして
事故の内容を聞く
死後1週間
心臓マヒである
その間、私は
遺族のお爺さんと
話をしていた
家に入ると
その家独特の生活臭がして
それに混じった腐敗臭
sound:18
「あれ?」
御遺体を見て先輩Hが声を出した
普段は滅多に
無駄な事は喋らないHである
「どうしたんですか?」
私は声をかけた
H「いやなんでもない」
その後は沈黙のまま
作業を進めた
車内に御遺体を乗せて
もう一度挨拶をして
車内に2人とも戻った
車を走らせ
家が見えなくなると
先輩Hが私に話し始めた
「あのよ?
何があっても
後ろは振り返るなよ
それとよ
music:2
誰にも言うなよ
あの家おかしい」
私「何がですか?」
H「人ってよ
死んだら動かないだろ?」
私「当たり前じゃないですか」
H「何十年もやってるとな
変な違和感って感じるんだよ」
私「違和感なんてありましたか?」
H「気が付かなかったか?」
私「特には」
H「あの爺さん
死んだ婆さんを見て
笑ってたんだよ
ニヤッと
それにな
移動した後があった」
私「事件性はないって
警察の方は言ってましたよ」
H「だからおかしいんだよ」
私「戻りましたよ
止めましょう」
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自社に戻り
簡易的に、着付をして
Hさんは
よーく御遺体を見て言った
H「忠告しとくぞ?
何があっても
1人で冷蔵庫開けるなよ
なにがあってもだ」
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music:1
次の日
眠い目をこすりながら
朝から検案に向かう
案の定
事件性はない
自社に戻り
昼食を済ませ
仕事のない時間は
ぷか〜っと
タバコを吸っている
葬儀屋には喫煙者が多い
それは、
腐敗臭が鼻に残って
飯が食えないからだ
夕方になり
のんびりと店を閉める
鍵を掛けていく
あの御遺体の部屋も
戸締りを確認する
sound:14
ドンドン?
うん?
sound:14
ドンドン
どこから?
sound:14
ドンドン
は?
music:2
冷蔵庫から聞こえた
全身から
嫌な汗が噴き出した
続いて
ガリッ
ガリガリガリッ
ガリガリガリガリガリ
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ
金属を爪で引っ掻くような音が聞こえる
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ
冷蔵庫の中から
ドンドンドンドンドンドンドンドン
ガリガリガリガリガリガリガリガリ
鈍い音が続く
検案は終わってる
メスも入ってる
私には死んだ人から
御遺体に変わる儀式なのだ
それは終わってる
確かに終わってる
この音は?
冷蔵庫の中から
恐怖で身体が固まる
バンバンバン
バンバンバン
冷蔵庫の扉が壊れそうなほど
内側から叩く音が聞こえる
もうダメだ
ドアが開く
ふっと視界が真っ暗になった
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music:5
Hさんに身体を揺すられて
目が覚めた
1時間近く戻ってこなかったので
心配になり
見に来たら
倒れていたらしい
後日、冷蔵庫を開けて
御遺体の確認をすると
爪が剥がれ
手には痣ができていました
布を掛けて見えないようにして
無事に火葬までいき
葬儀は終わりました
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Hさんと社長の3人で
話しながら
あったことを話してた
すると
社長が話した
「霊感ある人は
この仕事は無理だよ
Hくんから聞いてるよ
前にも似たようなことがあって
辞めた人が何人かいたから
Hくんと変だと思ったら
忠告するようにしてるんだよ」
私「でも、冷蔵庫開けてないですよ?」
H「えっ?開けてないの?」
社長とHさんはヒソヒソと話し
私に向かって言った
「君にこの仕事は無理だよ」
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こうして葬儀屋での仕事は
終わってしまった
でも、まぁ
他にも沢山の変な体験をしたのは
また違う話にでもしましょう
それではまた
作者T-HIRO
事件だったのか
または事故なのか
自然死なのかも
私にはわかりかねますが
何かを伝えたかったのか
あのお爺さんは何をしたのか
1つ分かるのは
力を持つ者は
葬儀屋は向きません