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私の友人に
Yという坊主がいる
生臭坊主である
しかし、力を持っていて
お祓いもでき
やろうと思えば
人を呪うこともできる
見た目といえば
スキンヘッドに
サングラス
ラグビー選手のようなガタイ
私服は筋者が来そうな服
うん、怖い
そんなYとは
高校の時に知り合った
その時の話をしようと
思います
全然、怖くないのでご了承ください
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高2の夏
学校のそばの大きな山
そこに
毎年必ず登山をする
実に面倒くさい行事である
走って登る
歩いて登る
2つのグループに分かれる
高1で走った私は
高2は歩いて登ることにした
天候は曇り
薄暗い山を大勢で
ワイワイと登る
高校は余り素行の良い方ではない
山にポイ捨てをするヤツ
ツバを吐くヤツ
そんなヤツもいた
褒められたことではない
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歩き始めて
10分くらいしただろうか
ボソボソと遠くから声が
微かに聞こえる
ボソボソボソボソ
不快で仕方がない
段々とイライラもしてくる
すると周りは
イライラが伝わったのか
距離を置いた
ボソボソボソボソ
イラつく
ボソボソボソボソ
うるさい
ボソボソボソボソ
・・・・・・・・
そのまま歩き続けると
開けた場所に出た
登ってきた高さがわかる
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「結構、登ったなぁ」
心なしか気分が
少し晴れたような
そんな気がした
早朝から登り
今は昼過ぎ
5時間は登ったのだろう
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music:2
なぜ
それが見えたのか
わからない
吸い込まれるように
それを見てしまった
遠くの山々の
丁度、隙間のような
そんな空間にいる
そいつは
ガリガリの身体に
上半身は裸
下半身は
浴衣を着崩しような
そんな服装
両手を無茶苦茶に
振り回しながら
ずっと聞こえている
ボソボソという声に合わせて
口を動かしている
私は目が良い方だが
そんなに遠くにいるヤツを
見れるわけがない
耳が良いわけでもない
だが、
そいつが
ハッキリと
見えた
あいつは何?
ジーっと見ていると
そいつはゆっくりと
顔を上げてきた
徐々に顔を上げていく
そして
山の入り口の方を見ていく
入り口から
今度は山の上に
顔を動かしていく
ゆっくりと
ゆっくりと
値踏みをするように
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好奇心から
恐怖に変わった
直感的に
あいつは
俺を探してるんだと
分かった
でも
なんで俺なんだ?
意味がわからん
どうして?
目を動かすことも
出来ない
身体を動かすことも
出来ない
ただ
そいつが動いていくのを
見るしかなかった
ゆっくりと
動いていくそいつを
そいつは
ついに
俺を見つけた
ニターーーーっと
笑った
笑ったのだろう
手を無茶苦茶に振り回しながら
そいつは
俺に向かって
進み始めている
少しずつ
ボソボソ声が
ハッキリと聞こえた
それは、
言葉だった
「移せばいい
咎を移せば
解放される
移せばいい
咎を移せば
解放される」
ずっと同じ言葉を
繰り返し繰り返し
呟いていたのだ
だが
自分との距離は
10キロ以上ある
聞こえるわけがない
見えるはずもない
それが
なぜ見えるのだろう
なぜ聞こえるのだろう
そんな思考が
グルグルと回っていく
何度も言葉が聞こえる
思考が鈍ってくる
頭がボーっとする
な に も か ん が え ら れ な
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「見るな」
後ろからドスの効いた声が
聞こえた
「てめぇめんどくせぇもんを
こっちに呼ぶなよ」
振り返ると
極道が背後にいた
music:1
学年でもかなり
見た目が怖い
アダ名は陰口で
極道と呼ばれている
そいつが
優男の自分に
話しかけている
周囲には誰もいなくなっていた
あっ
あー
えー?
カツアゲ?
狩られる?
しかし
極道は
言った
極道「お前さ?
見掛けた時から
思ってたんだよ
強過ぎだな」
俺「はい?」
えっ?
狙われてた?
カツアゲ?
極道「あのよ
お前は人よか
憑かれやすい
何十倍もな」
俺「あーうん
分かります」
極道「自覚あんのかよ
めんどくせぇヤツだな」
俺「いえ知りませんよ
お金持ってないですよ?」
極道「あぁ?」
俺「あっいえ失礼しました」
極道「そっちじゃねぇよ」
俺「どっちですか?」
極道「あーー
で?アレどうすんだ?」
俺「忘れた‼︎」
そいつはゆっくりと動きながら
違う方向を見て
手を無茶苦茶にしながら
歩いていく
俺「どっか行くみたいです」
極道「どっか行くんじゃねぇよ
次の獲物を探してんだよ」
俺「へー」
極道「お前さ
今日は忌日だろ?」
俺「は?」
極道「今日は最悪な日ってことだよ」
俺「そうですか
極道さんは」
極道「あぁ?」
俺「あっいや
Yさんはなんで
そんなことわかるんですか?」
(以降、極道改めY)
Y「オレぁ寺生まれだからよ
昔からあーゆーのも
お前みたいなのも分かんだよ」
俺「へー」
Y「お前から
糸みたいのが見えたんだよ
それが嫌な感じがしてよ
だからずっと様子見してたんだよ」
俺「なるほど!ストーカー的な」
Y「バカじゃねぇの?
とりあえず
山を降りるまでは
俺の隣にいろ?」
俺「彼女のように?」
Y「いいんだな?
またあいつと仲良くしたいんだな?」
俺「失礼しました
お供します」
そのあとは何事もなく
帰れました
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music:5
手を無茶苦茶に振り回してたのが
なんだか私には分かりません
でも、後日わかったのは
あの時は
私は
身体を前後に揺らし
今にも山から
落ちそうだったようです
あれは
なんだったんでしょう
作者T-HIRO
しばらくしてYは親友になりました
女癖が悪く何度も泣かされましたけど
私は、憑かれやすい体質で
どうにかしたほうがいいと言われ
一緒に某所の霊山で修行しましたが
日常生活には全く役立ちませんね
ちなみに私は無宗教です