僕は不思議な世界にいた。
同じ顔をした女性だけの世界。
あても無く、もう1時間は街を彷徨っているのだが、未だに1人の男性とも出会っていない。
同じ服装
同じ髪型
同じ顔
同じ声
コンビニ店員も、バスの運転手も、警察官も、犬を散歩させている人も、団体の旅行客も、居酒屋の呼び込み店員さんに至るまで…
皆同じ女性。
背格好全てに至るまで寸分も違わない、まるでコピーロボットの様だ。
これは夢だろうか?
まあ夢だろうな。
「すいません」
道を聞かれた。
この世界の人達はやたらと僕に道を訪ねる。
スマホを持っていないのかな?
駅までのルートを丁寧に教えてあげた。
女性は何度も僕に頭を下げていた。
「すいません」
バス停に立っていた女性にも声を掛けられた。
やっぱりこの女性も同じ顔だ。
肩より少し長いセミロングで、艶のある綺麗な黒髪。
透き通る様な白い肌、形の良い目と鼻と口が、バランスよくその小さな顔の中に配置されている。
一言で言えば美人だ。
途轍も無い美人。
例えるならば、最近毎日の様に見かける売り出し中のあの演技派女優によく似ている。
「すいませんあの…」
「あ、はい道聞きですか?」
「いえ、あの…すいません」
「はい?」
「すいません」
「いや、だから」
「すいません」
「なんで泣いてるの?」
「すいませんあなたを…」
「えっ?」
「あなたを殺してしまってすいません」
「僕を?」
「すいません」
ああなるほど、僕はこの女性を知っている。
僕は全てを理解した。
「貴方ではない」
「…はい」
「僕を殺したのは貴方ではないですよ」
…
…
…
「ねえアナタ、早坂さんとこの息子さんて即死だっみたいよ」
「ああ、まだお若いのに可哀想だったな」
「なんか加害者も意識不明の重体なんだって!運転してたのは20歳の女性って話よ」
「ほう、そんな若い娘さんに轢かれたのか?お互い若いのに勿体無いな」
「そう、でも事故を目撃した奥さんが言ってたんだけど、凄い美人さんだったみたいよ、芸能人でもおかしくないくらい」
「ほう…」
「ほら何て言ったかしら?最近よく見かけるあの女優さん…」
【了】
作者ロビンⓂ︎
この話は「母さん!!!」の続きになります。結局、誰が彼を殺したのでしょうか?…ひ…