…
ある違和感が俺を夢の中から引き戻した。
舌の上で動き回る異物。
俺はそれを指で摘み、口の中から引き出した。
墨を塗ったかの様に光沢あるカラダをうねらせるその主はそう、俺たち人類の大先輩である「Gee」だった。
一瞬、気を失いそうになったが何とか持ち堪える事に成功した。
…
彼らが出現したのは、約3億年前の古生代石炭紀で「生きている化石」ともいわれている。
日本における最古の昆虫化石は、中生代三畳紀の地層から発見されたゴキブ◯の前翅である。
それは、古生代から絶滅せずに生き残ってきたことから「人類滅亡後はゴキブ◯が地球を支配する」と言われるほどだ。
実際には森林環境に依存している種が多いので、人類が自らの環境破壊によって森林環境を道連れに滅亡した場合には絶滅する種が多いと推測されている。
因みに人家生活型の「コスモポリタン種」は、依存する人家環境の消滅によって棲息範囲が減少する可能性が高いとも言われている。
…
「こ、コスモポリタン種!」
その時、俺の頭の中で、少女時代先生のあの名曲「Gee」が自動再生を始めた。
ジージージージー♪♪ ベイビベイビベビ♪♪
ジージージージー♪♪ ベイビベイビベビ♪♪
GeeGeeGeeGee♪♪BabyBabyBabyBaby♪♪
GeeGeeGeeGee♪♪BabyBabyBabyBaby♪♪
「む、昔は日本でも食されていたみたいだし、血行促進作用として一部の漢方薬としても使用されてるみたいだし、うん!大丈夫!大丈夫!いけるいける♪♪…ひ…」
でもやっぱ!メチャ!メチャ!気ニナル!口のナカ♪♪
やば!チンチャ!チンチャ!お口はNo No No No ♪♪
俺は反射的にその大先輩であるコスモポリタン種の末裔を、力一杯壁に叩きつけた。
そして洗面所に駆け込み、歯磨き三回、モンダミ◯洗浄を三回した後、歯間ブラシで余す事なく隅々に至るまでチエックした。
ふう!と安堵の溜息を吐き、ベッドへ腰を落とす。
カサカサカサカサ
見ると、昨日食べ残した弁当の袋がテーブルの上で僅かに振動している。
例え、この地球に未曾有の大災害が起こってあっさりと人類が滅んでしまったとしても、おそらく彼らはこの地上に生き残り「絶対王者」として君臨し続ける事は間違いないであろう。
いままでも、これからも、いつまでも…
「だが、貴様だけはこの俺様がブチ殺してやる!悪く思うなよ…先輩」
俺はそっとスリッパを手に取り、
それを思い切り振り下ろした。
【了】
作者ロビンⓂ︎
番長の心の傷が癒えるまで、此方でお楽しみください…ひひ…