【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
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声がきこえる

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「あ~疲れた~!」

洗濯した仕事用の制服を部屋に干しながら呟く私。

ベッドに倒れこむようにダイブすると、魂が抜けたんじゃないかと思うほどのため息が一気に洩れた。

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………………

飲食店で働く私は、どんなにきつい仕事でも難なくこなしてきた。

いつもは仕事の疲れぐらいでそう簡単に弱音を吐いたりしないが、今日だけは違った。

仕事ではじめてミスをし、客を困らせてしまったのだ。

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客の注文を聞き間違えたことに気づかないまま全く違う料理をだしたため、客を怒らせてしまった。

閉店後、状況を知った店長からとことん注意を受けた。

自業自得だけど……。

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「ここに勤めて何年目だ?あ?

新人がするようなミスを何でお前がするんだ!

飲食店で1番やっちゃいけないことは客に迷惑をかけることなんだぞ!

これぐらい子供にだって分かる!

おい聞いてんのか?

黙ってばかりいないでなんとか言ったらどうだ!」

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長年勤めて1度もミスをしたことがない私は、プライド?が高くなっていたのか誰にも負けない自信があったのか、店長の一言一言が首を絞めているかのようで苦しかった。

ベッドで今日1日をふりかえりながら更に重いため息をつくと自然と眠りについていた。

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………………

ジリリリリリリリ!

目覚ましの音で飛び起きると眩しい朝の光で眉間にシワをよせた。

洗面台で冷たい水を顔に押しあてタオルで拭くと、タオルが少し淡い桃色に染まった。

昨日、化粧を落とし忘れていたことを思い出す。

「シャワー浴びなきゃ……」

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………………

思えば卒業後、飲食店で働きはじめて以来何の楽しみもなかった気がする。

両親は私が大学へ行けるようにと、朝から晩まで働き稼いでくれたが結局大学へは行けなかった。

共働きで農業をしていた両親は軽のトラックで帰ってくる途中、対向車との衝突事故で帰らぬ人となった。

親孝行できないまま仕事と家を行き来するだけの毎日になり、私ももうすぐ三十路かぁ……。

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………………

リモコンを手にとりテレビをつけるが、いつものニュース番組や情報番組ばかりで面白いのはやってない。

今日は休みだから久しぶりに映画でも見ようかな。

どれを見ようか、と棚にならんだ映画のDVDを右から左へ目で追っていく。

「あれ?こんなのあったかな?」

知らないタイトルに首を傾げるが面白そうだと思って再生した。

映画はチンピラのような男たちが出てくる内容で、とくにコレといった展開があるわけでもなくハズレだったかぁ……、とガッカリした。

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………………

………………

………………

“……ナ”

”シ……“

“……レ”

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“ク…ナ”

“シヌ…”

“…ドレ”

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『来るな』

『死ぬぞ』

『もどれ』

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……………

ハッと目を開けると心臓がバクバクいっている。

息が荒れてるせいか口の中はカラカラに渇いていた。

どうやら寝ていたようだ。

でも今の声は一体……。

テレビから音が聞こえたので目をやるとまだ映画が終わっておらず、チンピラの男たちが喧嘩をしている場面がうつっていた。

暴言を吐きながら喧嘩をしている場面。

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『死ね!』

『ふざけるな!』

『黙れ!』

男たちが吐く暴言を聞いて、なんだぁ映画のセリフかぁ……、と胸をなでおろした。

寝てしまう程つまらない映画だったのだろうと苦笑いしテレビを消した。

気晴らしに買い物にでも行こうと思い、玄関の鍵をかけたのを確認して車を走らせた。

隣町まで行かないといけないため、車では15~20分くらいかかる。

細い田舎道を走り林道を走る。

道は細くても通りが少ない道だから運転はしやすい。

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なぜかあの声が頭から離れない。

頭の中をぐるぐる駆けめぐっている。

………………

林道が暗くなりはじめた。

まだ昼前なのに……。

眩しい太陽をさえぎる黒い雲をふと見上げた。

その時、

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ププーーーーー!!

……

大きなクラクションが鳴りひびき、体に衝撃がはしったかと思うと辺りが暗くなっていった……。

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………………

………………

………………

“……ナ”

“シ……”

“……レ”

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“ク…ナ”

“シヌ…”

“…ドレ”

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………………

『来るな』

『死ぬぞ』

『もどれ』

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………………

目を覚ますと病院にいた。

私の名前を呼びながら目に涙を浮かべている見覚えある顔の女性がいた。

近所に住むおばさんだ。

体は石のように固く動かない。

話を聞くと、私は対向車と衝突事故を起こしたらしい……。

対向車の運転手は軽いケガで済んだらしいが、私の車はガードレールを突き破り真っ逆さまに転落したという……。

人が死ぬほどの高さではなかったそうだが、私は頭を強く打ち3日間目を覚まさなかったとか……。

高熱にうなされる私を近所のおばさんは心配してくれていたそうだ……。

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『来るな』

『死ぬぞ』

『もどれ』

………………

あの言葉はあの世へ行こうとしていた私に『お前にはまだ早い』と誰かが言った言葉だったのかもしれない……。

Concrete
コメント怖い
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トド様、こんにちは(^^)
楽しんでいただけたましたか?
嬉しいコメントありがとうございます(^^)

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沙羅様、こんにちは(^^)
嬉しいコメントありがとうございます。
怖い話ではなかったと思いますが楽しんでいただけただけで嬉しいです(^^)

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あぁ・・・これはなんて良いお話でしょう・・
ご両親が、ずっと見守ってくれていたんですね♡

愛される。ってこういうことなんだろうなぁ~~って感じます(*^^*)

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鏡水花様、今回もコメントありがとうございます(^^)
毎回読んでくれて嬉しいです。
短い話ばかりですがこれからもたくさんつくっていきますよ~!(笑)

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まりか様、コメントありがとうございます(^^)
とても嬉しいです。
長い話はつくれませんが短編、中編をたくさんつくっていこうと思っています。

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