私が住む町には年に1度行われるあるお祭りがある。
『甲馬槍祭』(コウバソウサイ)というお祭り。
数人の男の人が鎧を着て馬に乗りながら大声を出し、槍で戦いあうのを披露する。
大きな鳥居がある神社で行われ、出店がいくつか並ぶため結構な人でにぎわう。
田畑ばかりの田舎に住む私にとって、唯一楽しめるイベントだ。
今年も楽しみで早く開催されないかな~?と思っていると親戚のおじさんが遊びにきてくれた。
久しぶりに私を見たおじさんは、大きくなったね~!と笑顔で言いお饅頭をくれた。
ありがとうと言い、縁側に座ってお饅頭を食べているとおじさんが隣に座ったので学校が楽しいことや友達がいっぱいいることを話した。
おじさんは笑顔で話を聞いてくれてた。
だけど、もうすぐ甲馬槍祭があるから楽しみにしていることを話すとおじさんは少し不機嫌そうな顔になった。
「まだそんな祭りがあるのか……?さっさとやめればいいのに……」
私がキョトンとしているのに気づいたおじさんは、何でもないよと言うがどうしても気になる私はしつこくおじさんに教えてと言いつづけ、結果やっと教えてくれることに。
nextpage
wallpaper:1482
「昔、この町は小さな村だった。
米や漁の知恵を工夫して食には困らなかったらしいが、ある頃から雨が降らなくなったことで米がつくれなくなり、漁にでても魚が獲れなくなるといった日がつづくようになったらしい。
皆飢えに苦しみ、やがて空腹に耐えきれず死んでしまう人までではじめてしまった。
このままじゃいかん、と人々は神様に助けを求めることにした。
だが米もなくお供えするものが何ひとつとない、どうしたらよいかと悩んだ末……」
nextpage
「何をお供えしたの?」
おじさんはため息をついて、また話し出す。
「人を1人生け贄にしたんだよ。
1人、また1人と……。」
私は背筋に寒気が走る。
「甲馬槍祭……。
今はみんなが楽しめる祭りでいいだろう。
でもな、この祭りは人を生け贄にすることは間違っていると反対した人たちがつくった祭りなんだよ。
甲馬槍祭は本当は『紅刃葬祭』と書くんだから。」
それからしばらくして行われたお祭りに、私は参加したが昨年までとは違う考えさせられるものがあるような気がした。
作者退会会員