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中学の夏休み、蝉の声とジリジリ照りつける太陽に苛立ちを感じながら扇風機にあたっているとクラスメートのAから電話がきた。
「どうせ暇なんでしょ?みんなでキャンプに行かない?」
Aとは小学生の頃からの幼なじみでクラスの中で1番の親友だった。
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Aの他にBとCも行くらしく、4人で行くことになった。
キャンプ当日、待ち合わせしてた駅で合流し、いざ目的地へ向かうことに。
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「ところで今日行くキャンプ場ってどこ?」
Aはまだ目的地を教えてくれていなかったため、BとCも早く教えてよ~!とAを急かした。
Aが目的地を言った途端、A以外全員顔が真っ青になった。
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Aが行くと言うキャンプ場は問題ないのだが、そのキャンプ場から少し離れたところに不安を感じた。
かつて小さな集落だった場所があるのだが、そこへ行くための唯一の道として架けられた吊り橋がある。
今は立ち入り禁止の看板とフェンスが張られているらしいが、自殺をする人が絶えないことで有名らしい。
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不安を隠せないでいるとAは大笑いしながら、
「私たちが行くのはキャンプ場だから大丈夫!近寄らなければ何の心配もないでしょ?」
と言ったため、まぁそうだねとみんな納得した。
目的地のキャンプ場に着いたときにはもう日が暮れ始めていて、テントを張ったり夕食をつくったりを分担してやった。
その後も楽しく盛り上がり、また明日も楽しもう!と言って寝ることにした。
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「ねぇ!起きて!早く!!」
誰かに肩を叩かれて目を覚ますとBがいた。
すっかり朝になっている。
あくびをしながらどうしたのか聞くと、Bが慌てた声でAがどこにもいない!と言う。
テントから飛びだし辺りを見回す。
Cが遠くから走って戻ってきた。
探したけどどこにもいないとCは息を切らしながら言う。
警察に探してもらうしか他に方法はなかった。
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Aが見つかった。
遺体で……。
見つかった場所を聞いて顔が真っ青になった。
あの吊り橋で見つかったらしい。
見るからに古い吊り橋で人の重さに耐えきれなかったか、足を踏み外したかだろうと事故でまとめられた。
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みんなでキャンプに行かなければこんな事には……。
なぜAはあんな場所に?
なぜ?なぜ?なぜ?
……。
Aを失ったことを受け入れられず、引きこもりがちになってしまった。
暗い闇の中を1人で歩き続けてるようだった。
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「何してるの!!」
誰かの声でハッと我に帰るとあの吊り橋の前にいた。
振り返ると1人のお婆さんが立っている。
なぜ自分はここにいるの?と思いながら立ち尽くしていると、お婆さんが言った。
「ここは危ない、早く帰りなさい。」
お婆さんはそう言いながら花束を地面に置いて手を合わせた。
ゆっくり腰をおろしたお婆さんが淡々と話しだした。
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「この吊り橋の先に昔集落があったのは知ってるかい?
年寄りばかりの集落だったがある若い夫婦がやって来て集落の人々は歓迎した。
やがて女の子が産まれ、皆喜びそれはそれは大切に育てられたそうだよ。
だがその幸せも長くはつづかず、母親が目を離した隙に女の子がいなくなり、探すと吊り橋の下で死んでいたらしい。
母親は娘の死が受け入れられず、吊り橋から身を投げたそうだ。
そして父親も。
ここで身を投げてしまう人がいるのは母親の念がさまよっているからじゃないかねぇ……」
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「母親の念……?」
「あぁ……。
どういうわけか知らんが母親の遺体だけが見つかっていないそうだ。
娘の死を受け入れきれず、成仏できずにこの場所をさまよっているんだろう。
その母親の念に導かれてしまうのだろう。
今ここにいる君のようにね。
さぁ、もう帰りなさい、いつまでもいると危ないよ。」
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お婆さんはヨイショと立ち上がると花束に手を合わせ、帰って行った。
気がつくと布団で横になっていた。
自分の部屋だ。
冷蔵庫から出したお茶を飲んでため息をつく。
結局気持ちは晴れないまま……。
けれど、悔やみつづけてもAは戻って来ない…。
受け入れようと思う。
いや、受け入れなきゃならない。
このまま悔やみつづけたら、また母親の念に導かれてしまうから。
作者退会会員
初めての投稿で分かりにくい文章があるかも知れませんが、読んでもらえるだけで有り難いです。