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懐かしい景色の中にいた…
ここが何処なのかは全くわからない…
でも、何処かで見たような、何度もこの道を通っていたような感覚…
とにかく懐かしい景色だと思った…
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夕暮れの街並み…
秋桜の咲き乱れる広場に続く下り坂…
その途中にある踏み切りの前に立っている…
遮断機が降りている…
カ~ン、カ~ン、カ~ン!
電車が近づいて来たのか、音が大きくなる…
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カ~ン、カ~ン、カ~ン!
ゴ~~~ッ!
目の前を沢山の人を乗せた電車が通り過ぎる…
音が止まり、遮断機が上がる…
一歩が踏み出せない…
秋桜の咲く、あの広場に行かなくては…
思えば思うほど、足は重く動かなくなる…
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カン、カン、カン!
音が鳴り、また遮断機が降りる…
ふと、踏み切りの向こうを見ると知った顔があった…
何年も前に亡くなった、祖父と祖母…
その横には、去年この世を去った愛犬もいた…
その後ろには沢山の人が…
皆、下を向き何かを言っている…
カン!カン!カン!
踏み切りの音でかき消され、何を言っているのかは聞き取れない…
ゴ~~~ッ!
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また、電車が通り過ぎた…
今度の電車には、人はほとんど乗っていなかった…
遮断機が上がる…
音が途絶えたからだろう、向こうの人達が言っている言葉が聞こえた…
『こっちに来い、こっちに来い。』
それぞれがそう呟いている…
祖父と祖母も何かを言っている…
顔を上げて、大きな声で叫んでいるようだ…
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でも、聞こえない…
周りの呟く声の方が大きく聞こえる…
祖父母の叫び声よりも…
???
(何を言ってるんだろう?)
聞き取るために、一歩踏み出す…
足が動く…
一歩踏み出した…
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『ワンッ!』
愛犬が大きく吠えた…
周りの呟きが止まる…
『こっちに来るな!向こうに帰れ!』
大好きな祖父の声だ!
優しい祖父で、怒った顔なんかほとんど見たことがない…
そんな祖父が、怒りの表情で叫ぶ…
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『ワンッ!ワンッ!ワンッ!』
愛犬も、聞いたことがないぐらい吠えている…
『そっちに行っちゃダメだよ!』
後ろから、女の子の声がした…
詩織…
『バカだね…、まだ早いよ…』
その言葉と同時に視界が真っ白になる…
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… まぶしい…
ゆっくりと目を開ける…
そこには、見慣れた娘の顔があった…
にっこりと娘が笑う…
『ママ、パパが起きたよ~!』
嫁『良かった、気がついた?』
目に涙をためて話しかけてくる…
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(ここは?)
周りを見渡す…
(病院?…)
全く自分の置かれてる環境が理解できなかった…
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どうやら、オレ、釣りに出かけてテトラポットの間に落ちたようだ…
他の釣り人さんが助け上げてくれたらしいが、意識が無いので救急車を呼び、搬送され、今に至ると言うわけだ…
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『パパ、ハゲ~ッ!』
???
娘の言葉に驚き、頭を触る…
髪が無いッ!
しかも大きなガーゼの様なものが当てられ、ネットを被せられている…
右の頭頂部の少し下を8針縫ったそうだ…
『なぁ、1つ聞いていい?』
『なに?』
『オレのエギングロッド、どうなった?』
『あんた、ホントにバカだね…』
嫁は呆れて大きなため息をついた…
作者烏賊サマ師
お久しぶりです。
こんなことがあって、入院してました(^_^;)
携帯も水没破損で、ようやく新しいのが届きました(^_^;)
現在、退院して週明けから仕事復帰です(⌒‐⌒)