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アハハハハ。。。キャー。。。アハハハハ。。。
♪カラスがなくからかーえろー♪
アハハハハ。。。。
「げ。カラスだ。」
「うわ。ホントだ。」
「いこいこ。」
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。。。。。
あたしはカラス。
いつの間にか、みんながそう呼ぶようになった。
みんな、「カラス」と呼び、あたしを見ると逃げていく。
別に何かをしたわけではないのに。
他の子と違うところがあるわけでもないのに。
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あたしに話しかけるこどもは、ひとりもいない。
けれど、あたしは寂しくなかった。
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ランドセルを背負い直すと、あたしは真っ直ぐに噴水へと向かった。
そこには、あたしの唯一無二の友達がいる。
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アー。
あたしを見つけると、「お帰り。」とでも言うようにひと鳴きして、その友達は足元に降り立つ。
ランドセルの中から給食のパンを取り出して、少しずつ千切りながら地面に投げていく。
無心にパンをついばむ姿を眺めながら、あたしはしゃがみこんだ。
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「おいしい?」
あたしが話しかけると、
アー。と鳴いて小首を傾げる。
かわいいなぁ。
みんな、この真っ黒な姿に怯えるけれど、よく見ればこんなにかわいい目をしてるのにね。
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見た目やイメージで、人間はいとも簡単に相手を攻撃する。排除する。集団で。
くだらない。ホントくだらない。
自分が攻撃対象にならないように、周りの意見に同調し、融合する。
本当の姿なんて、あいつらにとってはどうでもいいのだ。
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そんな事をぼんやりと考えているうちに、カラスはパンを食べ終えたようだった。
あたしを見上げて、小首を傾げている。
ゆっくりと立ち上がると、
「帰るね。」
と告げた。
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アー。カラスは答える。
「またね。」
と言うと、バサリと羽ばたいて空に舞い上がりながらまた、アー。と鳴いた。
夕暮れに照らされて、噴水の吐き出す水がキラキラと黄金色に輝いていた。
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その日は学校はお休みだった。
あたしは台所からパンを1枚取ると、カラスの待つ噴水へ向かった。
珍しく、噴水の近くに子供達が集まっている。
頭を引っ付けるようにして、何かを囲んでいるようだ。
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「?」
何してるんだろ。
まあどうせあたしを見たら、逃げ出すんだろうけど。
と。
その中の一人があたしに気が付いた。
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その顔に、あたしはものすごく違和感を覚えた。
噴水の側で集まっていたのは、植村達のグループだった。
あたしに気が付いたのは、植村。
あたしと目が合うと、目を釣り上げて意地悪にニヤリと笑い、
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「ほら、来たよ。」
と両隣にいた真田と玖村を肘で小突いた。
そこにいた全員が、一斉にあたしを見る。
ものすごくいやらしい顔で笑いながら、
「いこいこ。」
とそこをどいた。
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なんなんだ。気持ち悪い。
あれ、そういえば、カラスの姿が見えない。
頭をその事がかすめた時。
あたしの視界、さっきまで植村達がいた場所に、それが見えた。
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黒い塊。
赤黒い液体のようなもの。
散らばった黒い羽。
瞬時に状況を理解した。
あたしはその黒い塊に走り寄る。
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shake
そこには、信じられない光景があった。
羽が毟り取られ、何かで切り裂かれたのか、腹が裂け、血溜まりの中に内蔵がばら撒かれていた。
「!!!!」
言葉に詰まり、無意識にしゃがみこんでその無残な肉塊を拾い集めようと両手を差し伸べる。
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くすくすくすくす。
あたしの耳に、聞き慣れた意地の悪い笑い声が聞こえた。
ばっ!と振りむくと、植村達が植木の影から、ニヤニヤしながらあたしを眺めている。
キャーーー!
という声をあげ、大笑いしながら逃げていく。
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あたしは。
ゆらりと立ち上がりながら、怒りで体全体が慄えるのを感じた。
夕刻前の噴水の前に、あたしの影が長く長く伸びていく。
遠くに、バサッバサッ。。。といくつもの羽音が聞こえた気がした。
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「お前ら。。。絶対許さない。。。」
その時、目の前に伸びたあたしの影に、黒い大きな翼が広がっているように見えた。
追いかけようと片足を一歩前に踏み出した途端、
頭の上を、黒い何かがものすごい速さで追い越していく。
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「?」
一瞬気を取られた僅かな時間にそれは、目の前を小馬鹿にするように振り返りながら逃げていた植村を捉えた。
音は、聞こえなかった。
ただ植村の悲鳴だけが、遠くにぼんやりと聞こえた。
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それが合図だったかのように、あたしの頭上を次々と黒い塊が越えていく。
植村だけでなく、そこにいた全員が、まるで射的の的みたいに、執拗に攻撃されていた。
いつか見た、あの日のように。
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あたしは、その光景を目に焼き付けるように、瞬きもせず見守っていた。
たくさんのカラスが、次々に上空へと舞い上がる。
ミサイルみたいに、狙いを定めて急降下する。
突き刺すように。えぐるように。引き裂くように。
何度も。繰り返し。
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子供達の悲鳴に、慌てて駆けつけた大人達が、カラスを追い払おうとするけれど。
大人達の間をすり抜け、尚も襲いかかっている。
誰かがあたしの頭を抱きかかえていたが、その腕の隙間から、あたしはずっと見ていた______
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それから。
噂では、植村達はショックのあまりおかしくなってしまったと聞いた。
実際、あれから後、卒業するまで植村達を学校で見ることはなかった。
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あたしは___
あれからも、カラスと呼ばれ、忌み嫌われているようだ。
今でも噴水には通っている。たくさんのカラス達が、あたしを待ってくれているから。
茜色から藍色へとグラデーションを広げる空に、仲間がいるから。
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あの日、夜中に立入禁止になった噴水に忍び込み、カラスの亡骸を埋葬したのだけれど。
悔しさで涙が止まらず、「ごめんね。ごめんね。」と泣きながら埋めているあたしの背中に______
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アー。アー。
いつものあの鳴き声が、聞こえた気がした___。
_______FIN________
作者まりか
カラス。ファイナルです。
リクエストにお応えして(*´艸`*)
他にも書きたいお話があるので、このお話はこれで終わりです♪
いつも怖いやコメントありがとうございます。
怖いへのお礼を個別にしないアタシを許してください┏○ペコッ
画像もありがとうございます。
また、拙い作品を最後までお読みくださいまして、本当にありがとうございます。
感謝の気持ちでいっぱいです٩(๛ ˘ ³˘)۶♥
【追記】
少し加筆修正をしました。