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かぁーごめ。。。かぁごーめ。。。
かぁごのなーかの。。。とーりぃは。。。
いー。。つぅ。。いー。。つぅ。。
でーやぁるぅ。。。
よーあーけーの。。。ばぁーんに。。。
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散らばった銚子。
乱れた布団。
少し開けた障子にもたれ掛かってぼんやりとしていた夕子は、はだけた肌襦袢をつっと戻すと、
倒れた銚子をひとつ取り、逆さを向けて手のひらにとんとん、と叩いた。
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空になった銚子から、酒がひとしずく。
ぽたん、と落ちる。
それをぺろりと舐め取ると、またぼんやりと窓の外を眺めた。
布団の上には、先程まで夕子を我が物にしていた、中年の男がいびきをかいている。
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呟くように唄う夕子の頬に、涙が一筋つたっていった。
∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬
夕子がこの廓に来てから、もう何年経つだろうか。
親に売られ、恐怖と心細さで幾夜も涙で枕を濡らした。
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水揚げの日には、自分の体が汚れてしまったおぞましさで、一晩中吐き続けた。
血に濡れたうちももを、手ぬぐいで何度も何度も拭った。
若い夕子は、瞬く間に人気を博し、夜ごと汚らわしい男の腕に組みしだかれた。
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女将さんの口癖は、
「お前には大枚はたいてるんだからね。しっかり稼いでもらうよ!」。
風邪をこじらせても、一日たりとて休ませては貰えなかった。
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里のおっかぁとおとうの為。
小さい弟達の為。
歯を食いしばりながら堪えてきた。
里へ書いた便りは、ただの一度も返事が来たことはない。
それでも、便りがないのは元気な証拠と、自分に言い聞かせてきた。
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そんな夕子も、優しくしてくれる姐さんが何人もいた事が、せめてもの救いであった。
幾度も幾度も辛い夜を重ね、「いつか借金を返して里に帰るのだ」と語る夕子の頭を、そっと撫でてくれたりしたものだった。
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ある日。
姐さん達といつものように、いつか里に帰る夢を語っている時だった。
「夕子。お客さんだよ。」
冷たく抑揚のない声で、女将さんに呼ばれた。
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小さくため息をつきながら部屋を出る夕子の後ろ姿を、
「頑張っといで。」
姐さん達の優しい声がふわりと撫でる。
「。。。あい。」
短く返事をすると、夕子はそっと襖を閉めた。
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すたすたと前を歩いていた女将さんが、ふっと足を止める。
「?」
俯いて歩いていた夕子が顔を上げると、少しこちらに顔を向け、女将さんが言い放った。
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「お前、姐さん達に里に帰るなんて話をしてたみたいだけど、叶わない夢なんて見るもんじゃないよ。お前はこっから出る事なんてできゃしないんだから。」
「。。。え。。。?」
夕子の体が小さく慄える。
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「いいかい?お前のお里にはね、あれから後もずっと金を用立ててやってんのさ。お前がいくら稼いだところで、借金は増えるいっぽうさね。おっかぁとおとうの為に、お前は死ぬまで、ここで黙って股を開いときゃいいのさ。」
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そんな。
減るどころか増えてるなんて。
ここを出る日を、指折り数えて堪えてきたのに。
死ぬまで。。。
死ぬまでおらは、こっから出られねぇ。。。!
夕子の小さな胸を、絶望が埋め尽くした。
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何の為に堪えてきたのか。
こっから出られねぇんなら、もう生きてる意味なんて_________。
「ほら!なにぐずぐずしてんだい!お客さんは待ってんだよ!さっさとしな!」
女将さんはそう言うと、夕子の背中をぐい、と押した。
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男の荒々しい愛撫を受けながら、夕子は呆然と天井を眺めていた。
どんなに屈辱的な仕打ちをしても、泣きも喚きもしない夕子に、男は苛立ちを募らせる。
これでもか、これでもかと、陵辱の限りを尽くす。
しかし人形のように横たわったままの夕子。
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男は頭に血がのぼり、思わず夕子の細い首に両の手をかけた____。
その時初めて、夕子が男の目を見据えた。
「どうした。怖いか。泣いて詫びたら許してやらんこともないぞ?」
男の言葉に、震える両手を男の腕にそっとあてがい、夕子は囁いた。
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「このまま。。。もっと強く。。。ああ。。。もっと。。。もっと強く。。。!」
恍惚とした夕子の表情に、男の興奮は昇り詰めていく。
激しく突き入れながら、強く、強く、その細い首を締め上げる。
夕子の爪が、男の肌に食い込み、血が滲む。
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ああ。。。おっかぁ。。。おとう。。。すまねぇ。。これで。。。これでやっと自由になれる。。。
許して。。。許してくれな。。。
男が果てるのと同時に、細い腕がぱたりと落ち、夕子はついにこと切れた。
やがて我に返った男は、慌てて女将さんを呼んだ。
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「お客さん!なんて事してくれたんだい!この子はうちの稼ぎ頭だったんだよ!はした金なんぞじゃ済まないからね!」
女将さんが鬼のような形相で捲し立てると、男は懐から金子を取り出し、女将さんに無言で差し出した。
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「。。。こんな事はこれっきりにしてくださいよ。あの子達はうちの商品なんでね。」
それだけ言うと、女将さんは男を送り出した。
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夕子は、男と行為の最中に胸を押さえて苦しみだし、そのまま死んだ事にされた。
突然の事に、姐さん達の悲しみは深かった。
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葬儀もなく、そのまま埋葬された夕子の体は、死してなおお里に帰される事はなかった___。
夕刻。
誰もいない夕子の寝間に、小さな唄が聞こえてくる。
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かぁーごめ。。。かぁごーめ。。。
かぁごのなーかの。。。とーりぃは。。。
いー。。つぅ。。いー。。つぅ。。
でーやぁるぅ。。。
よーあーけーの。。。ばぁーんに。。。
つーるとか。。めがすぅ。。べった。。。
うしろのしょ。。めん。。だー。。ぁれ。。
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________FIN________
作者まりか
今回は本当に救いがないです。すみません(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
かごめかごめの意味、由来を調べていて出てきた話の中で、一番アタシの心を鷲掴みにした物からお話にしました。
気分を害する方がいるやもしれません。
申し訳ないです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
いつも怖いやコメント、とても感謝しています。
怖いへのお礼を個別にしないアタシを許してくださいねっ┏○ペコッ
画像もいつもありがとうございます♡お世話になってます(*´艸`*)