「例えばこの世界が、誰かの夢だったとしたら、お前どうする?」
タクに言われて、俺はポカンとした。
「どうするも何も。生きるしかないだろう。」
俺はタクのあまりにも突拍子もない質問に、苦笑いしながら答えた。
「俺はどうもな、俺がモテないのは、これは誰かが俺に嫉妬して、夢で俺にモテないようにしてると思うんだ。」
「それは違うと思うな。」
ピンポーン。バカな話をしていたら、ドアチャイムが鳴り、客が来店してきた。
「いらっしゃいませー。」
俺たちは仕事モードになり、声を張り上げた。
俺とタクは同じ大学で、このコンビニでアルバイトをしている。
仕事が終わると、俺はタクの原チャリでニケツで自宅アパートに帰る。
「下道通るぞ。ポリがいたらやばいからな。」
そう言うと、俺の分のヘルメットをすっぽりと頭に被せた。
さすがに、夜中の勤務と交代でオールだったのできつい。
「腹減ったな。」
そう言うと、朝早くからやってるパン屋でアンパンを買った。
「僕の顔を食べなよー。」
そう言いながら、タクが俺の口にアンパンをねじ込んできた。
変なヤツ。
「しかしまあ、何もこんなところで食べなくたっていいだろう。ここ、ティファニーの前だぜ?」
「昔の映画みたいでロマンティックだろう?」
「ていうか、野郎同士じゃロマンティックもねーだろ。」
「あー、彼女欲しいなー。」
そんなことを言いながら、俺たちはまた原チャリにまたがりそれぞれの自宅へと帰った。
例えばこの世界が、誰かの夢だとしたら。
この世界が程よく不安定で、平和で、貧しくて、豊かで、戦争が起こっていて、悲しくて泣いている人が居て、野望があって、駆け引きがあって、多くの人々が、生きて、死んで、それでも時はずっと流れていて。
こんな壮大な夢があるのだろうか。そんなどうでもいいことを考えていたら眠くなって来た。
おやすみ。おやすみ。グンナイ。
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「博士、どう思われますか?」
「信じられない話だが、確かに世界ができている。」
「自動学習機能を持つ人工知能がインターネットを介して得た膨大な情報により、スリープ状態のアンドロイドが夢を見るようになって、まさか、彼らの中に世界ができるとは。」
研究所の一室には、ズラリと同じ型のアンドロイドが鎮座している。
それぞれのどれ一つとっても、世界は同じではない。
「博士、我々の世界は大丈夫でしょうか?誰かの夢ではありませんよね?」
作者よもつひらさか
意味のわからないアホ話を一つ。