………どれ位寝てたのか?………。
目を開けると白い天井が見えた。
「お、目覚ました!」と大きい兄貴y男が言う。
起きようとしたが、体が動かない。
「今は起きれんだろ?上半身はギプスして有るからな。」とy男。
「頭部中度の打撲、左腕骨折、鎖骨はヒビ、おー!良く生きてんな!」
少し何だか喜んでいる様子。それもそのはず、俺は今迄兄弟の中では「虐げられた」存在だから。末っ子の宿命と言うか、なんと言うか。今のその姿が「頑張ったでしょう」を物語っているのだから。
「兄貴、k子は?」と尋ねると、
「あ、うんうん。昨日まで来てたんじゃないかな?俺はよく知らないんだよね〜。看護婦さんとかに聞いた方が良いかも。」と、何だかおかしい……。
あ!と
そこで思い出した。あの時、助けてくれたタクシーの運ちゃんの事。
「俺を助けてくれた人、会った?兄貴?」
と聞くと
「おう!その人は毎昼来てたみたいね!」
「?毎昼?は?俺は何日寝てたんだ?」
「丸々3日!!光永さんて言う人か。良い人だな。本当に命、助かったな。チャンとお礼言っとけよ。」と兄貴。
その日は兄貴は帰り、入れ替わりで母が来た。
「もー!あんたは どこに居ても心配かけるね!でも、良かったねー!あの人が助けてくれたから良かったけど…もし…ねぇ…。」と母。
「で、k子はどうなったか知ってる?」と母に聞いてみた。
「……、あのね、もう少し経ってから言おうと思ってたけどね……。」
「は?なんかあったの?ねぇ!k子になんかあった!?」と慌てて聞き直す。
「怪我とかなんとかじゃないけど…。この手紙が家のポストに入ってたのよ……。昨日ね。」と母が手紙をバッグから取り出して 俺に静かに渡す。
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手紙にはこんな事が書いてあった。
「ーーー大好きなマコちゃんへーーー
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
私のせいで こんな事になってしまって。
マコちゃんのそばに居たい…。でも、またあの人が私を探して、マコちゃんに迷惑が掛かると思うと そばに居たら危ないよね。
でも、一緒に居たいのに。こんな女で本当にごめんなさい。
それと私はもう、今の仕事場は退職して 遠い親戚の所に来ています。
ここは あの人には見つけられない場所。
安心してね。そして
私を絶対に探さないで。マコちゃんにまた、迷惑が掛かるから。
私の事を大事に思って居るのなら、絶対に探さないで。
体、ちゃんと直していつものマコちゃんみたいに元気になって下さい。
わがままな私をお許し下さい。
愛しています。
k子 」
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今でもこれを書きながら泣いてます。
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でも、この時は居てもたっても居られず、
探しに行こうとカラダを動かすも 右手と足しか動かず その場に留まる事しか出来ずに 悔し涙を流していました。
携帯はヤツに壊され、k子は何処かに行ってしまった…。連絡のしようが無い…。
…その晩は一睡も出来ず、泣くしか出来なかった…。
次の日の昼頃、光永さんが来てくれた。
「おー!目、覚ましましたか!良かった!
いゃあ、あの時は危なかった!」
と満面の笑みで握手をして来た。
「本当にあの時は助けて頂いてありがとうございます!
でも、どうしてあの場所が分かったんですか?」の質問に光永さんが答える。
「あ、あれね!あのときさ、只事ではない気がして 遠くから観させてもらってたんですよ。そしたらさ、マコさんイキナリヤツにワンパン入れたっしょ?あれはスカッとしたねーー!完璧なカウンターだったよ!でも、その後後ろから二人出てきてマコさんの頭に木刀でガツンでしょ?
返す物も有りましたし、車降りて行こうと思ったら、ワンボックスカーみたいなのがすぐ来てマコさん攫われちゃったじゃん!?コリャヤバイな…。と思って 後ろからつけてたのよ。
で、廃工場みたいなとこに入ってマコさんを車から引きづり出してたから。
でもね、向こうは3人だからね!俺はステゴロは得意ではないんですよ。まあ、棒やら持たせると 負けませんがね。
それから急いで会社のロッカーに置いてる木刀を取りにいってたんですよ。ごめんね。遅くなっちゃって!」と光永さん。
「剣道か、何かやってるんですか?」
と聞くと
「私は 居合の師範代の免許持ってます。
あんな輩は10人居ても 何てことは無いですよ。棒があればね!」と遠くを見て話してくれた。か、カッコイイ!!
「と、それとね、さっき言った返すものが有るんですよ!」と光永さん。
?何も借りて無いし、何だろうと思っていると、
「はい、2580円。あの時の5,000円からのお釣りです。」と光永さん。
「いえ!いえ!いりませんよ!そんなの!助けて頂いたし、ここまで運んてくれたんだし。」と言うと
「Rタクシーは真心と誠実をモットーにしております!」と封筒に入ったお金を手渡してくれた。良い人だなあ。
それから3週間で退院。光永さんには菓子折りを持って Rタクシー会社に行き、再度御礼をさせていただきました。
k子の事。どうしても諦め切れなくて、知り合いの探偵に探すように依頼したんです。
2週間後、「見つかりました。」と報告。
やった!!と本当に嬉しかった!飛び上がりましたよ!
しかし、彼女は会いたくないと。
本当は会いたいけど、でも会えない、と。
絶対に教えないでと嗚咽泣く彼女を見て、流石の探偵も少し涙したとか。
もう、あれから12年経ちます。
女々しいとは思いますが、未だに忘れられない思い出。本当に好きになるのが「怖」過ぎて それからは好きになった女の人はまだいません。
日本を離れ、海外で仕事をしている理由の一つにもなります。
(^_−)−☆
作者マコさん
ふう、なんとか書き終わりました。
余り、面白くはないかもしれませんが おヒマな時に読んで下さいね!(・ω・)ノ