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中編4
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もしも願いが叶うならば

music:5

彼女に逢いたくて今日もエレベーターに乗っていた。

古びた10階建てのビルの9階

それが彼女の部屋だ。

これは兄貴がいなくなってからの四人の物語。

『キャベジンが欲しい、、、』

息もたえだえな彼女がくれた短い電話。

きっと、世界が回るのを感じていたのだと思う。

なんでもよかったんだ俺は、ただ彼女にあいに行けるその”理由”が欲しかっただけなのだから。

「仕事の付き合い」それで飲んでいたのだという、社会人になってからその言葉の意味をよくわかるようになった。

上司も後輩も皆こうして分け隔てなく愚痴や不満、不平をいいあい、互いに壁を少しずつ削っていくものだから。

9階も上がるのに何分も時間がかかるように感じるのはきっと彼女に会いたいからだろうといつもこの時間を長くおもうのだろう。

いつもは凄く冷静でお姉さんみたいな彼女の名前はCさんだ。

Nちゃんと別れてから俺の意識は彼女に引かれる一方だ。

そんな彼女が明け方、4時過ぎぐらいに鬼電で起こして来て「キャベジン欲しい…」その一言で呼び出してくるなんて、ハハハ。と1人で笑っていた。

部屋の前に着きインターホンを鳴らす。

「ピンポーン」

無音の廊下にやたらと音がでかく鳴り響く

反応はないので軽く呼びかける。

「Cさ~ん?Aですよー、、、」

きっと寝ているのだろう、うん、そうに違いないと思うからこそここは紳士的に行動をとることこそがベストなはずだ。

そう、俺がここでとった行動はドアノブに袋をひっかけておとなしく帰ること。

が、望ましいがこの好奇心には勝てない。

Cさんの可愛い寝顔が見たいのだ。

ドアノブを少し捻ると、不用心なことに鍵をかけていない…

これは後で怒ってやろうと思う。

部屋の中は真っ暗で、なにも見えない。

携帯の明かりをたよりに、Cさんを探す。

あ、いた。

リビングのソファーの横の隙間。

どうしたらそんなところで眠れるんだよ。

そんな事を思いながら寝違い率100%であろう、不自然に曲った首を元にもどしつつ、とりあえずソファーへと寝かした。

むにゃむにゃいってる彼女はどう見ても幼い女の子のようにしか見えなく、とても愛おしい。

「あ…俺くん?おかえり…」

「ただいま…」

寝ぼけてるんだろうか俺は兄貴ではない、

胸の奥の方が少しズキズキと痛むのを感じる。

「もしも…願いが叶うならね…俺くんは何を願う…??」

寝ぼけいるのか、話すペースがおそくボソボソと喋っている。

「夢でもみたの?どうしたの急に…??」

Cさんは目を少し見開いて、

「きゃっ!!!」

と悲鳴をあげた後、ビックリすることを言い出した。

「えっ!?Aくん!?何してんのここで!!?」

「貴女が呼んだんでしょ!?」

俺は苦笑しながら事の流れを説明した。

もちろん自分に都合よく脚色はしながら。

「そうだったか、ごめんごめん、久しぶりにめちゃくちゃ飲まされちゃってさ。」

彼女が落ち着いたのでキャベジンを渡しながら、改めて聞き直した。

「どんな夢を見てたんですか?」

彼女は少し思い出すようにしてから、ゆっくり語り出した。

「Aくんは、願い事を三つ叶えてくれる魔法のランプがあったとしたら何を願う…?」

彼女の夢をまとめるとこんな夢だったのだという。

見たことのない真っ暗な部屋で音も聞こえない声も出せない、でも三つだけ願いを叶えてもらえる事はなんとなく分かっていたのだという。

彼女はまず現状把握をしたいので、明かりを求めたのだと言う。

すると彼女は目を開けられるようになった。

開けなければよかったと次の瞬間思ったという、なぜなら目の前に縛り付けられ、目と口と耳を縫われている男がいたという、彼女はビックリして叫ぼうとしたが、よく見ると自分も口を縫われていて声が出ないのだ音が聞こえないのはきっと耳も…

目の前の男は喋れるようになることを求めたのか、口を縫い合わせていた糸がプツプツと切れ、男は何やら叫んでいる。

ひとしきり叫んだ男は涎をダラダラと垂らしながら叫ぶ事を辞めた。

Cさんは回りをみわたしてドアを1つ見つけた、そこから出れるのだろうかと…でも縛られているのをほどかないと、二つ目の願いは「この拘束をはずすこと」そう願うと彼女は自由に動けるようになった、その途端、身体中を激痛が走り彼女はうずくまる、縫い付けられていたのか身体中から血が流れているのだ、痛みに耐えながら部屋を詮索すると、ドアは施錠がされており、ハサミを見つけたのでその男を助けたのだった。

これでここから抜け出すのも楽になるだろうと、

男は拘束がとけた瞬間にに何かを叫ぶと、彼女に襲いかかったのだ、彼が何を叫んでいるのか全然わからない逃げようにもドアは開かない。

そこで彼女は薄れいく意識の中最後の願いを心で唱えたのだ。

「俺くん助けて。」

そして目が覚めたのだという、Cさんはそこまで語ると、

「あ~怖かった!!」とニコッとして見せた。

人生とは無慈悲なものだ。

もう、聞いて欲しくないということをこの人は話の流れでまた俺に聞いてくる。

「Aくんはもしも願いが叶うならば何をお願いする?」

「あなたと…」

言いかけて辞めた。

「兄貴は今でもきっと貴方を見守ってますよ♪」

そして俺は帰ることにした。

帰るころには朝日が登り始めていて、キラキラと輝いている街並みを眺めながら帰る俺の横を夜の終りが通り過ぎてCさんの家に帰っていった。

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