私の周辺で定期的に流行った《霊感テスト》
周りはこぞってキャーキャー騒ぎながらソレをやる。そんな光景を私とNは眺めていた。その中でも、処理に困った《テスト》に出くわしたことがある。
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〈目を瞑って、力を抜いて。〉
__また始まった。
簡単に説明すると、
1.される側) 目を瞑って、力を抜く
2.する側) 相手の目の前で、相手の名前をフルネームで書き、一回書き終わる度に相手の手を取り、振る。これを3セット。
3.する側) 2の後、自分の手を三回回す(糸まきの歌にある?ような)そして、相手の手に向かって自分の手をかざし、引き上げる。
4.終わらせる時は、する側がされる側の腕を掴み、下に下げる。
3の時、霊感があれば誰も触っていないのに、勝手に腕が上に持ち上げられる感覚になるという。(あくまで、噂だ)
ただ、これにはタブーがあった。それは、
《肩より上に手を上げてはならない》
というものだ。タブーをやらかすと自分で首を絞めてしまうのだという。
(どうせ、心理的な思い込みなんだろう)
そんな風にしか私もNも思っていた。
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〈ねぇN〜!やってみてよ!〉
「え〜」
突然の誘いに嬉しそうにやってもらおうとするN。
『抵抗してみたら?』
ボソッと私は耳打ちした。意地悪そうな笑みを浮かべ、「了解〜」とNは実験されに行った。
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「うぉぉ!これはw駄目だw」
結構な力で抵抗しているはずのNの腕はみるみる内に上へ上がっていく。本人曰く「手首をガッツリ掴まれた!」だそう。
疑心暗鬼になりながら、Nにお前もやってみろと言われ渋々了解した。
「…。」
Nは何やら私にテストをしようとしている者に耳打ちしている。__悪い予感がした。
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目を瞑っている状態の私は完全に力を抜いていた。
ヒュ ヒュ ヒュ
目の前で私の名前を書いているのか、風をきる音がする。
その途端、
ガシッ
ハッキリと手首を掴まれる感覚があった。
その感覚は続き、力を抜いている私はされるがまま、手を上に上げられていった。周りの野次馬からは〈おぉ〜〉っと感心するかのような声が聞こえてきた。
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そろそろ、相手は術を解くだろうと思っていた。が、なかなか降ろされない。
__おかしい。
もう、腕は肩の高さだ。
周りからはザワザワとした雰囲気が漂う。どうやら、Nの指示のせいで私はタブーをやっているようだ。
自分で解こうにも、金縛りのように体は動かない。
__まずい
そう思った時だ。
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腕が半ば強制的に曲げられる感覚があった。そう、首の方向に手が向いた形だ。
周囲はとうとう焦りだした。が、Nがそれを止める。目を瞑っている状況でも私はNが楽しんでいるのがわかった。
辛うじて声は出せたので
『N…止めてくれないか?コレ、かなりマズイのだが。』
と助けを求めるも
「大丈夫。大丈夫。」
としか言わない。
そんな状況下であった私もマズイとは言いつつ、何故か平常心でいた。
(夢の感覚で…)
そんな風に考え、記憶が一瞬途絶えた。
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ハッとして起きると、周りに何人かが集まっていた。
〈大丈夫?〉と口々に聞いてくる。
『うん。大丈夫。ありがとう』
そう言って、人だかりを抜けていつの間にか消えていたNを探した。
微かに痙攣が全身を襲っていた。
『おい…』
やっとNを見つけた。相変わらずニコニコしている。
『ご希望のものは見れたかな?』
痙攣する手を抑えながら私は言った。
「ん〜…」
ニコニコしながら言葉を濁す。この時ほどNの思考が読めない日はなかった。
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それから、痙攣のようなものはそれからしばらく続いた。そして、その日以降、さらに可笑しな現象に巻き込まれていくのは、また、別のお話。
作者Faust
初めて害が生じた事件だった記憶があります…
皆様は、ふざけ半分で呼ばないでくださいね…?