既に他界してしまった父の不思議な話です。
父方の家はお寺で、父は兄弟が多く末っ子だったので家は継がずに大工をやっていました。
父の実家のお寺は地元でも有名な霊山の入口になっており、子供の頃から御先祖様のお墓参りなどに行くと田舎で山奥という事もあり空気が澄んでいて妙にシャキッとするようなそんな感覚がしたものです。
母も不思議な人ですが、父はまた違った感じの不思議な人でした。
兄が職場で大怪我をして死にかけた時、偶然その職場の改装工事に関わっていたためその場に居合わせたり。
平日の昼間、突然の雨のため作業が出来ず家に帰った所一緒に暮らしている母方の祖母が体調不良で倒れていた(他の家族は仕事や学校でいなかったため発見が遅れていたら危なかった)り。
私が車にはねられて血塗れの重傷を負った挙句事故起こした相手が逃げようとした所に偶然通りかかったり
そういった家族の危機に妙に居合わせる人でした。
大柄で強面にも関わらず不思議と子供や動物が寄ってくるような人でもありました。
そんな父から聞いた昔の話。
父がまだ小学生くらいの頃、お寺の裏の山(前記の霊山)でよく遊んでいたそうです。
特に山に入る事を禁止されていたわけでもないし、修行僧の方が出入りしているので迷ったりする事もそうそうないのですが
野生動物が普通にいるのでまぁ、そこそこ危ないといえば危ない山ですが山菜、栗、柿やキノコがその辺で採れるので私も行った時は兄とよく遊びに入っていたくらいです。
昔は熊や鹿などを狙った密猟者もいたそうです。
(霊山内は基本的に動物を殺してはいけない)
父が山に遊びに入るとほぼ必ず罠にかかった狐や鹿などがいたそうで、そんな時は決まって体を泥だらけにしてから助けてあげていたそうです。
何で泥だらけにしてからなのかは野生動物は人間の臭いがつくと群れから追い出される事があるからだそうです。
そんなある日、柿をとりに山へ入り
どうせならいい柿が欲しいなと思い柿の木に登っていたら
突然パーン!!という音がして驚いたそうです。
何事かと思ったらどうやら父を熊と間違えたハンターが狩猟銃で撃ってきたそうです。
威嚇射撃だったのか当たりはしませんでしたが慌てた父はすぐに木の裏側にまわり、とりあえず下りようとしましたが上手く下りられる枝がなく焦ったそうです。
「俺は人間だから撃つな!!」と叫んでみましたが聞こえているかどうかもわかりません。
焦れば焦るほど上手く下りることが出来ずかなり恐かったそうです。
すると不意に叫び声が聞こえたので気の影から覗いてみると大きな熊がハンター達に向かって走っていくのが見えたそうです。
発砲音を聞いて襲いに行ったのだろうと父は思い、と同時に熊がいたらそれはそれで下りられない。どうしたものかと思っていると騒ぎに気付いた近隣の方が駆けつけてきたそうでハンター達はしょっぴかれ、熊はいつの間にかどこかへ行ってしまっていたそうです。
木から降り家へと向かう途中、ふと山を振り返ると大きな熊と小熊が山間からこちらを見ていたかと思うと山へ消えていったそうです。
父曰く
「後で思い出したんだが、小熊も助けた事があった。あの時の熊かどうかはわからないけど恩返し助けてくれたのかもしれないな」
そうなら不思議でいい話だね。と父に言った私に
「そうじゃないかもしれないけど、そうだったら嬉しい事だな」
とあまり笑わない父がふっと笑ったのできっとそうだよ。と言って私も笑いました。
っていうか熊と間違えられて撃たれる環境ってこわすぎるだろ。
作者望月 優雨
相変わらずぐだぐだでまとまりのない話ですが、読んでくださったカタ、ありがとうございます。
どうしてもどこかで脱線してしまう…
困った癖です。
あぁ…文才が欲しい…