ある日とつぜん、耳鳴りが聞こえるようになった
「キーーーン」って感じじゃなくて、変な「ミョンミョンミョンミョン」って音。
最初はそんなでもなかったけど、日増しに音がでかくなるし、耳鳴りがしてくる頻度も増してきた。
マジで日常生活に支障がでるレベルまで来たので病院に行った。
しかし理由はわからないという。
いったいどうすりゃいいんだ、もしかしてもうずっと治んないのか、と思ったりもした。
それである日、それまでよりもっとひどい耳鳴りが来た。「ミョンミョンミョンミョン」ってのじゃなくて「ビョンビョンビョンビョン」っての。
気晴らしにと思ってテレビつけたけど、テレビの音もろくに聴こえないくらいにひどい。
ヘッドホンつけても音楽より耳鳴りのほうが聞こえてくる。
だんだんイライラしてきた。それに気持ち悪くもなってきた。とにかく精神的にもまいってきていたので、気分転換に窓をあけて換気しようと思い立った。
それで、カーテンをあけると、目が血走って、髪の毛のないガリガリに痩せた男が、口をめっちゃ早く動かして「ビョンビョンビョンビョンビョンビョン」って。
そのままぶっ倒れて気を失った。
その日からは耳鳴りもなくなったけど、いったいあれは何だったのか、今でも分からない。
作者田中康夫
ネットから見つけてきました