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中編3
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海辺のシュン君

これは、私がまだ3歳の時に母が体験した話。

家族で夏に海へ出かけたそうだ。

私は3歳、すぐ下の弟は2歳、その下の弟はその年の4月に生まれたばかりの乳飲児だった。

父が海大好き人間で、父の夏休みを利用して出かけたらしい。

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海に着くと私とすぐ下の弟は水着に着替えさせられ、パラソルとサマーベッドをレンタルして母はまだ乳飲児の弟を抱っこし、パラソルの下で涼んでいたそうだ。

父は私とすぐ下の弟を連れて波打際へ。

初めての海に、大はしゃぎだったとのこと。

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そのうち、私は波打際にペタンと座り込み砂で山を作り始めたので、父は弟と私の後ろの砂浜でウルトラマンと怪獣を使って遊び始めた。

山を作っては波に浸食され崩れるので、私は1人で怒ったりしてたらしく、父はその様子が面白かったと後に話している。

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山作りに飽きると、私は波で遊び始める。

「1人で海に入るなよ!」と父。

だから私は、海には入らずに来る波を相手に遊んでいたそうだ。

遊び疲れて母のいるパラソルへ行くと、

「海は楽しい?」と私に聞いた。

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「うん。シュン君がね、遊んでくれるって」

私の言葉に、母は首を傾げた。

「シュン君?誰のこと?」

「ここの近くに、お家があるんだって」

母は、この海の近所に住んでる子が私と遊んでいるのだろうと思ったらしい。

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「その子、どこにいるの?」

「あっち」

私が指差した方向には子供達がたくさん遊んでいたので、その中の誰かだろうと母は思ったそうだ。

「あんまり迷惑かけちゃダメよ?」

「うん」

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母と私が話していると、父と弟が戻ってきて昼食となった。

お昼は父の大好きなラーメン。

小さな茶碗を頼んで、1つのラーメンを弟と2人で分けて食べた。

昼食後は海の家で昼寝。

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「この子、近所に住んでる男の子に遊んでもらってるみたいね」

タオルをスッポリ被って昼寝する私を指して母が父に言うと、

「え?1人で波打際で遊んでたぞ?」と父。

「だって、シュン君って子が遊んでくれたって…」

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「子供は空想が得意だから、架空の友達でも作って遊んでんじゃねぇか?」

そう父は母に答えて、私や弟が寝ている間にひと泳ぎしに海へ出たそうだ。

母は釈然としなかったらしいが、父は幽霊とかも信じるタイプではないので何も言わなかった。

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1時間ほどの昼寝のあと、再び海へ。

母は1番下の弟を抱いて、パラソルの下から私やすぐ下の弟が遊ぶ姿を見ていた。

弟は父と砂浜でウルトラマンごっこの続きを始め、私は波打際で遊び始める。

「…あ…」

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波打際で遊ぶ私と一緒にはしゃぐ小学生くらいの男の子の姿を、母は見たそうだ。

身体は透けているから、すぐにこの世の者ではないと分かったらしい。

<海に引き込まれてしまうんじゃないかしら>

そう母は思ったそうだが、

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不思議と私を海へ誘うことはなく、逆に私が海へ入ろうとすると引き留めてくれていたので、母は様子を見守ることにしたそうだ。

海難事故等で死んだ者は、その苦しみや寂しさから生者を海に引きずり込むのはよくあることだと、大きくなってから私は母に教えてもらった。

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陽もだいぶ傾いて来たので、父に「上がるぞ」と言われて帰ることになった。

母はすでにシュン君の姿を確認していたので、

「シュン君に、ありがとう言った?」

と、私にコソッとと聞いた。

「うん。バイバイしたら、また来年ねって」

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私の返事に、母は安堵したらしい。

仲良くなって、私に憑いて来たらどうしようかと思っていたそうだ。

シャワー室でよく身体を洗い流してもらい、服に着替えると濡れた頭にタオルを被って海の家を出る。

「帰りは、レストランで夕飯にしよう」

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父の提案に私と弟は、

『お子様ランチ〜!』とハモって両親を笑わせた。

「夕飯なのにランチか〜!」と、父はツッコミをいれたそうだ。

ふと母が海を振り返ると、シュン君がこっちを見て手を振っているのが見えた…とのこと。

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「知らない子と遊ぶ時は、気を付けなさい」

子供の頃、母がそう口酸っぱく言っていたのは、そんな海での体験があるからなんだろうと今は思う。

『たまたま運良く』無事だっただけで、次はどうなるか分からない…。

違う意味で、私は海の怖さを知った。

[おわり]

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来道 様

コメントありがとうございます。

このお話を切なく感じたとしたなら、来道様は優しい方なんですね。

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なんだか切ないな(。´Д⊂)

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