僕の実家は、とある有名な山の麓にある小さな一軒家。家の裏手には山の雪解け水が流れ出てくる、空洞が空いている。そこの水は夏場はとても冷たくて小さい頃よく水遊びなんかをした。
夏休みに入ったのだけれど、何もすることがない。
探せばあるんだろうけど.....仕事のこととか.......。
けれど、せっかくの夏休みに入ったのに、初日から仕事のことを考えると、億劫になるので辞めることにした。
こんな事を考えていると、頭の中でふと家のことが回想された。
そういえば実家には3年ぐらい帰ってない。
親とは頻繁にメールをしてるので、別に問題は無いのだが、久しぶりに自分の住んでた家に帰りたくなった。
そんなこんなで家に着くとメールをしといたので母が玄関で待っててくれた。
僕「久しぶりだね。」
母「おかえり、そうだね。お前メールは寄こすけどちっとも帰ってきやしないからね。」
僕「ゴメン、仕事がなかなか忙しくって。」
母「それだったらしょうがないけどね。たまには会いに来てくれないと、寂しいよ。今日は泊まってくだろ?」
僕「そのつもり。母さんが良ければ、1週間位居たいんだけど、ダメかな?」
母「なーに言ってるんだい?ダメなもんか。ここはお前んちだよ。」
僕「そっか...ありがとう。それじゃぁお世話になります。ビシ!」
母「はっはっ!」
それで、二人とも笑いながら家に入った。家に入ると昔のままの風景が広がる。
母「お前が一人暮らしする前から、物は動かしてないよ。」
僕「でも、山のように積まれた本だとか、古い食器棚なんかは地震が来たら一発で終わりじゃない?」
母「そうだけど。お前が帰ってきた時に居心地がいいように父さんと話し合って、何も変えてないんだよ?」
(そうなのか、何だか申し訳ないな)
そういえばあることに気づいた。
「父さんは?」
頭にある疑問を母に投げかけると。
「父さんはね.....借金をしてお金が払えないからっ....私たちに迷惑は掛けたくないからって......離婚を申し出てきたよ。」と母が言った。
「え?」
今知った事実に驚きを隠せなかった。
それを見てとらえたのか母は「大丈夫離婚したって言っても、私がしたくてしたわけじゃない。
あの人も同じ思いのはずだから。」
僕「一言位連絡して欲しかった.....父さんは今どこに暮らしてるの?」
母「それを言うとあんた、会いに行くだろ?それじゃあ父さんのためにならないからってあの人から来させるなって言われてるのよ。」
そうか、仕方ないのかな?多分父さんのことだから、誰かに優しくして、そこをつけ込まれたのだろう。
可愛そうだ。
久しぶりに帰ってきた家でこんな事を言われてもすぐには落ち着けない。
だから外に少し出てくる旨を伝えて。
散歩に出かけた。
気分を変えたくてここに来たのに、違う方向に気分が変わってしまったので、今度はしっかりのんびりしたい。
昔遊んだ公園.....よく秘密基地作りをするためのセロハンテープなどを買った文房具屋さん.......たくさん魚が釣れる僕達しか知らない、川の穴場スポット
..........
いろいろ見て回った後に、時計を見るともう夕方を指している針。
「そろそろ帰って晩飯でも母さんに作ってあげよう」そう思った所で、まだ行ってない、忘れたくない場所...........そう、家の裏手の雪解け水を流してくれる空洞のある場所に行っていない。
夕方で暗闇が迫るなか早足でその場に向かう。
付くとそこにはいつも見ていた風景が広がる。
そして一番の思い出の、雪解け水を流してくれる空洞。
「久しぶりだな........やっとこれた。本当はずっと来たかったのに来れなかった」そう言いながら「スッ」と水に触れる。
すると、いきなり肩をつかまれた。
「!?」すぐに振り返ると、そこには優しそうな人の顔があった.........「父さん?」
「久しぶりだな。お前は元気にやっているか?」
いきなり出てきた父に驚いて、声が少しかすれる。
「....う....うん。」
「お前が出ていってから、色々大変だったんだ。
けれど、無事解決したよ.......だけどお前はもう帰りなさい。」
「え?」
ただいまと、言おうとした瞬間に放たれた言葉は何故か迫力がある。
優しい声なのに圧力がある。
この雰囲気は父が本当に起こってる時の言い方だ。
何が起こっているのか全然わからない。なんで父さんは怒っているんだ?
頭が混乱してきて目をつぶってどうにか、冷静になろうとして目を開けると、そこには父の姿はもう無かった。
一体自分の目の前で何が起きてるのか分からなかった。
その時。さっきまでバシャバシャと音を立てながら流れていた水の音が消える。
振り返ると、そのさっきまでみていた空洞の奥の方からなにか、黒い大きいものが流れて出てきた「バシャっ!!」と音を立てて出てきたものは洋服だった。
「洋服?なんでこんなところから?」
その服をつかみ「バッ!」と広げるとなにか落ちた。
......四角いフォトフォルダーに入った写真が.........。
よく見るとその写真は傷だらけで何かで刺したような小さな穴が沢山空いている。
そして写真に映る人の顔........父だった。
「なぜ父さんの写真がこんなことに?」
そうしてふとこの服が流れてきた空洞を見ると奥の方に何か沢山の細長い物があるのが分かった。
何も考えずなぜか、取らないといけない!という使命感にかられた。
手に取って見るとそれは気じゃなく、少し茶色くくすんだ骨だった。
その瞬間思考が停止した。
何を考えていいのかわからない。
ただただ呆然とそこに立ち尽くす。
今わかることは、あの家には帰らない方がいい。
というか母にはもう会わない方がいいということだった?
作者片隅
途中で考えるのを放棄しました。
やっぱり即興設定はあやふやになるから面白くないね。
どうもこんにちはこんばんは片隅です。
今回はなんだか、考えたくないような怖い話、人間の怖い話を書き記してみました。
もしこの話が面白いと思っていただけたら、とても嬉しいです。
それではまた!