長編14
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絵馬の遺書

8年ほど前、オレが専門学校に通っていた頃の話。

そのころは専門学校生で、学校でつるんでる仲間とよく心霊スポットに行ってた。別に大好きって訳でもなくて、特に行くとこもなくてただドライブしてるだけもつまらないので、適当な目的地として心霊スポットを選んでるってだけだった。

「うぉ~怖ぇ~」とかその場のノリで言ってはみるものの、別に怖いなんて思ったことは一度もなかった。

そんな頃、友達が車を買ったというのでその新車でドライブに行く事になった。

「またKダム行く?」

「もう心霊スポットええよ~。別に女の子おるわけじゃなし。」

「行くとこないじゃん。米軍基地でも行こうか?」

あらかた近場の心霊スポットは行き尽くしたオレたちは、そんな事を話ながらドライブしてた。

「そういえば!」と、友達が話始めた。

「YってとこにS峰ってとこあるらしいんじゃけど、そこなんか怖いらしいで。」

「へぇ、どんないわくがあるん?」

聞くと、なんでもYって場所は縁結びの神様が祭られてる神社があるそうなんだが、そこである女が好きな男への思いを願いつづけたが、ついぞ叶わず、その神様を呪うという遺書を残して身を投げたとこなんだそうな。

「ええじゃん!行こうや!」

「でも場所がいまいちようわからんわ。Yは分かるけど、S峰って聞いた事ないよ。」

「ええよ、コンビニで聞こw」

別に目的地に着けずとも、何か探すっていう目的でよかった。オレら流の遊び方。

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Yは少し遠かったけれども、夜は道も空いていてそんなに時間はかからなかった。オレらは適当なコンビニを見つけて、S峰を探すことにした。

友達2人は売り物の地図を広げて、オレは店員に聞いてみた。

「すんません、ここらでS峰って知りません?」

「あぁ、S峰。ありますよ。」

そう言って店員は詳しい行き方を教えてくれた。

「そこって神社あります?」

「あぁ、T神社でしょ?今から行くんですか?」

「そうそう、なんか怖いらしいから…」

「怖いですよ。あそこは。」

店員の口ぶりに興味を惹かれた。

「え?店員さんも行った事あるの?」

「ええ、絵馬でしょ?」

「絵馬…?」

「ええ、絵馬の遺書。」

「何それ?絵馬に遺書が書いてあるんですか?」

「そうですよ、右側のかけるとこの一番下の右から…3番目くらいかな?一番奥。でも、もう流石にないかな?」

「そこにあるの!?」

「ええ、オレは見たんですけどね。ま、今から行くんでしょ。もし見られなかったら何が書いてあったか教えますよ。大体覚えてるから。帰りもここ通るんでしょ?」

「そんなん見て大丈夫なん?」

「外しちゃダメらしいですよ。オレはビビって外せんかった。できたら外してみて下さいよ。」

またまた~、なんて店員と談笑していると、「おい、場所わかった?」と、友達が地図をしまって話しかけてきた。

「おう、店員さんが教えてくれたわ。ついでにおもろい話も。」

「ホンマ?地図載ってなかったーや。分かったんなら行こうや。」

「OK!OK!おもろい話したるけーの!」

ただ出るのは悪かったので、缶コーヒーを一本買って店を後にした。

オレはさっき店員から聞いた話を、走る車の中でコーヒーを飲みながら友達に話した。

「それマジで?やばいんじゃないん?」

「まぁ外すまーや。見るだけならええんと。」

「外したらどうなるか知りたいわ。○○ちゃん(オレ)外してみてや。」

「お前、店員と同じ事言よるわw」

そんな話をしながら、店員に教えてもらった通り車を走らせた。

「お、アレじゃないん?」

神社らしきものが見えてきた。そこは結構山を上ったとこで、神社は丁度頂上付近に建ってるって感じだった。その辺り一帯が多分、S峰なんだと思う。

オレ達は車を停め、神社に入ったが、神社は思ったより奇麗でなんだか拍子抜けしてしまった。

「なんか心霊スポットって感じでもないのー。」

「おぉ、これならW(近所の地名)の神社のがよっぽど怖いで。」

「まぁ、絵馬探してみようや。」

絵馬がかけてある掲示板みたいなものは、すぐに見つかった。幅2メートル弱くらいのものが2つ並んでいた。

「右側の一番下の右から2~3番目…」

絵馬は掲示板全体に、ギッシリといった感じでかけられていたが、店員が言った箇所に目をやるとちょっとおかしい。

「あった?」

「いや、ないけど…何コレ?」

右側の掲示板、一番下の一番右。絵馬をかける釘の根元に、なんだか郵便ポストのような、ロッカーのような…いや、まるでビルの配線やらが入ってて、丸いとこを押して取手を出して開くやつみたいな(わかってもらえるかな?)そんなものが取り付けられていて、蓋に開いた小さな穴を通って釘は打ち付けられていた。

その蓋の両端は耳みたいに取手が出してあって、それぞれ南京錠が掛けてあった。

「…?」

「こん中に遺書が入っとるとか…?」

「…!そうじゃ、きっとそうじゃ!うぉ、これ怖いw」

中に目的のそれが入っていると確信して、妙にテンションがあがったオレらは、そのロッカーみたいな、箱を外してみようとなった。箱は掲示板には釘で打ち付けられているだけだったので、みんなで引っ張れば外れそうな気がした。

最初に、外に掛かってる絵馬を全部外して、車から持ってきたマイナスドライバーで箱の打ち付けられている部分を持ち上げて、指が入るくらいの隙間になってからみんなで引っ張る。

バキッ!と音がして箱が外れた。

「うぉ!外れた!」

中には明らかに他のものより古い、黒ずんだ絵馬が入っていた。

みんな最初は黙ってみていたが、オレは絵馬に顔を近づけよく見てみた。何も書いてない…裏返してみると、字らしきものが書いてある…。

みんなも顔を近づけた。

「おい、火ぃ点けて。見えんわ。」

友達がライターの火で絵馬を灯す。

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大好きなYさん

大好きなYさん

祈ったのに

離れて行った

裏切られた

許さない

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「!!!」

みんな絶句した…これは怖い!

「うぉ~~!怖ぇ~~~~!!!」

テンションが上がったオレは、調子に乗ってオーバーリアクションをしてしまった。手に持っていた絵馬がオレが振った手に引っかかってポーンと飛んで行った。

「あっ!」

カツンと音を立てて落ちる絵馬。オレは急いで拾い、すぐに元の場所にかけた。

「…やべぇ。」

「…さすが○○ちゃん。」

「いや、ホンマにわざとじゃないんよ、ちょっと調子乗ってもうて…」

友達に言い訳をしてもしょうがないのだが、何だか怖くてそんなことを言った。

「ヤバいんかね?」

「…。ま、迷信じゃろ。なんもないよ、こんなもん。」

ちょっとビビりはじめたオレに、気を使ってくれる友達にちょっとホッとしたその瞬間、

shake

「こりゃ~~~~~~~~~~~!!!」

ものすごい怒鳴り声!

オレは腰を抜かしてそこにへたり込んでしまった。

「また冷やかしかと思ったら、まさか外しおるとは…こんの馬鹿もんがぁ!!!」

いきなり怒鳴ったオッサンが神社の人だってのはすぐにわかった。

いい歳こいて、こんなところ見つかるなんて情けない…警察呼ばれたらヤバイかも。

「「「すんません…。」」」

みんな謝るフリして、逃げるタイミングを目配せして計っていた。

「外したか?」

「あ…。あの…はい。」

「箱外したんは見りゃ分かるわ!!!絵馬じゃ!!!絵馬は外しとらんじゃろうのぉ!!!」

「あの…ちょっとだけ…ほんのちょっと。すぐに戻しましたよ。」

「…。」

オッサンは押し黙って、フゥーッとため息をついた。

「誰なら?外したんは。」

「オレ…です…。」

「ちょっと来い。」

「いや、ホンマにすいません。出来心で。箱も直しますから…。ごめんなさい…。」

「えぇけ~、来い言うとろうが!」

オッサンはいかにも神社の人って格好をしているのに、まくしたてる様子はまるでヤクザだった。オレは仕方なく、言われるがままついて行った。その時、オレを置いて逃げようかどうしようか迷っていた友達の様子が、とても憎らしかった。

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結局友達2人もついてきて、オレらは神社の裏手の建物の中に連れてこられた。

「さてと。」

オッサンは正座しているオレの前にしゃなりと座って、じっとオレの目を見た。

顔が怖くて目を逸らしたかったが、逸らしてはいけないような気がして、オレもオッサンの目をじっと見ていた。

しばらくすると、

「あんたぁ、男前じゃの。」

「は?」

「彼女はおるんかい。」

「え?…ええ、一応。」

「好きなんかいの。」

「???…ええ、まぁ…。」

訳のわからない質問に困惑したが、なんとなく心配になって聞き返した。

「あの…彼女がなんかまずいことにでもなるんですか?」

「ん~、もしかしたら調子壊すかもしれん。」

「えぇ?なんで?」

「あんたぁ、あそこまでしたんならあの絵馬が何か知っとるんじゃろ?」

「えぇ、噂で…。」

「あの絵馬があそこにかかっとるうちはの、女も悪さはせん。決して安らかな訳ではないがの。外すと途端に悪さをするんじゃ。自殺したもんもおる。」

「…。」

オレは絶句した。

「オレらもヤバいんですか?」

後ろの友達2人が聞く。

「ちょっと外れたくらいなら、あんたらは大丈夫じゃ。でもあんたは、ちょっと悪さされるかもしれん。あんたぁ男前なけー、もしかすると女を狙われるかもしれん。」

「ちょ、ちょっと、どうすればいいんですか!?」

幽霊なんか信じない。しかしその時のオレは、もう完全に霊の存在を肯定していた。

「あんたに影が見えん。女の所に飛んだのかもしれん。もしかしたら何もないかもしれん。彼女が調子悪くなったら、病院行く前にここに来い。」

オッサンは棚からメモ用紙を取り出し、電話番号を書いてオレにくれた。

「ええか?次、悪さしたら警察突き出すけんの?分かったか!?」

「「「ハイ!」」」

いい返事をして頭を下げて帰ろうとするオレらを呼び止めて、オッサンは工具一式を持ってきた。

「直して行け。」

オレたちは外した箱の修理をやらされた。まぁ当然と言えば当然なんだが…。

捲れた板をボンドでひっつけている途中、目の前で揺れる古びた絵馬が怖くて、マジで帰りたかった。絵馬に箱をそっと被せて、釘を打ち直した。

「こりゃ、どうにかせんとのぅ…。」

オッサンが後ろで呟いた。

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その日は、なんだか大変なことをしたと思ったが、なんか実感がなかった。

帰りの車の中でも、

「いや~、○○ちゃんはやる思うたよ。さすがじゃーや。うぉ、怖ぇ~~、ポーン!じゃもんの~、オレできんわ。」

「いや、マジでびびってもうたよ。でも正直オッサンのが怖かったけど。」

「ホンマよ、なんやあれ、ヤクザか思うたーや。」

緊張感などまるでなく、解放された安堵で逆にハイテンションだった。

「☆ちゃん(オレの彼女)も大丈夫よ、あんなぁ脅かすために言うたんじゃーや。」

オレも、「まぁないだろう…」とくらいに思っていた。

帰りに、行きに寄ったコンビニに寄った、店員に絵馬を外したと報告して帰った。店員はどうなったか聞いてきたが、何もなかったと言うと「なぁ~んだ」と言った感じで笑っていた。

次の日。一応心配だったオレは、彼女に電話をして体調を確認した。

そんなことを聞いてくるオレを彼女は不思議に思って、何かあったのかと聞いてきたが、元気そうだったので次の日の休日に会う約束をして電話を切った。

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その晩、彼女から電話があった。

「○○ちゃん?ごめん、明日会えんかも。」

「え?どした?」

ドキッとした。

「なんか風邪引いたみたい。熱あるし、寒気もする…。治ったらいいんじゃけど、なんかひどくなりそうで…。もしダメじゃったらごめんね。」

オレは急に怖くなった。

「そう…あったかくして、今日はもう寝ーや。」

電話を切って、オレはすぐにオッサンにもらったメモがちゃんとあるか確認した。電話番号を携帯のメモリーに入れて、メモも財布に入れておいた。

もし明日、彼女の体調がやばかったら電話をしよう…。

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次の日、昼前に起きて彼女に電話を入れてみた。

何回かかけたが、…出ない。

しばらく待って、またかけた。さらに待って、またかけた…しかし一向に出ない。全く電話にでない彼女が心配になって、バイクで彼女の家に行った。彼女は実家暮らしで、実家の番号は知らなかった。

彼女の家に着いてチャイムを押そうとしたその時、玄関がガチャリと開いて、彼女を背負ったお父さんが出てきた。

「☆…!」

お父さんはオレを見て、

「☆の友達?今はちょっと…体調が悪いんじゃ。病院につれて行くけー。」

背負われている彼女は、意識があるのかないのかもよくわからなくて、口をぱくぱくさせてやっと呼吸をしているといった感じだった。

「(これは電話をしないと…。)」

すぐに携帯を取り出して、昨日登録したオッサンから教えてもらった番号に電話をかけた。玄関から半ベソのお母さんが出てきて、お父さんに駆け寄り、

「あなた…救急車呼ぼう!」

「車の方が早い!」

なんて言い争いをしていた。それを聞いてオレはパニックになりかけていた。

「T神社です。」

「あの、○○と申します!神主さんを…Jさん(オッサン)を…!」

「は、はぁ、少々お待ちを」

保留音が2~3秒流れ、すぐにオッサンが出た。

「もしもし、大丈夫か?」

「彼女が…!☆が…!!!」

「落ち着け!すぐに来れるか!」

「はい、すぐに!すぐに行くから…助けて下さい!」

「すぐに来い!車か?気をつけぇ。それと、これは携帯電話か?」

「そうです…!」

「じゃあ切るな!このまま彼女の耳に押し当てて、わしの声が聞こえるようにせぇ!」

「わ、わかりました。」

携帯を自分の耳から離したオレに、両親はすぐ詰め寄ってきた。

「お、おい、今の話はなんや!どういうことや!」

「車で話します!だから…車貸して下さい!スグに!」

気付くとオレはベソかいて、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだった。

「病院に行くんじゃないんか?訳を話せ!」

「神社に行くんです!オレが幽霊にちょっかい出したんです!そのせいで彼女がこうなってるんです!お祓いしてもらうんじゃ!スグ行かんと!!!」

オレはまくし立てた。

オレの凄い剣幕に、両親も押され気味で困惑していた。さすがにいきなり幽霊とか言われりゃ困惑するだろうが…。

「何言ってるの…病院に行かなきゃ…!あなた!!!」

迷うお父さんの背中から☆がふと目を開け、オレを見て言った。

「Yさん…」

絵馬にあった名前「大好きなYさん」…オレは血の気がひいた。

両親を殴り倒して、車を奪ってでも神社に行かなきゃ。

「行こう。」

急にお父さんが娘を車に乗せた。

「君が運転してくれ。」

オレはすぐに車に乗り込んだ。

お母さんは、

「あなた!本気!?どういうこと!?」

と錯乱気味だ。

お母さんも乗り込んできて運転席のオレにつかみかかるが、オレは「構うもんか」と車を発車させた。そして、揉めている両親の怒号を打ち消すような大声で叫んだ。

「この携帯電話を☆の耳に当ててくれ!!!」

キーキー騒ぎ立てる母親を静止して、お父さんは携帯電話を彼女の耳に当てた。

すると彼女は苦しみ出した様子で、お母さんはもう狂ったように、

「やめてー!やめてー!」

と叫んでいた。

「これは、なんや!なんでこんなことするんや!」

「神社の神主さんがそうしろって!オレもわかりません…!」

車の中はしばらく騒々しかったが、やがてお母さんも落ち着いて(…というか疲れてきて)お父さんは詳細を把握しようとオレに経緯を訪ねた。

オレは神社のこと、女と絵馬のこと。そしてあの夜のことを話した。両親は信じがたかったろうが、特に反論もせず、それからはしきりに彼女の名前を呼んで励ましていた。

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神社に着くと、オレは彼女の耳から携帯をとり自分の耳に当てた。電話からは、オッサンのお経のような、呪文のような、そんな声が聞こえる。

「着きました!」

「~~~…!そうか!すぐに前、お前が入った建物まで運べ!」

オレとお父さんで急いで、彼女を神社の裏手の建物に運んだ。オッサンはなんかだか神々しい格好をしていて、頼もしかった。

「彼女をここに!」

言われた通り、彼女をオッサンの前の布がひかれた場所に寝かせる。オッサンはお経のような、呪文のような、歌のような。そんな言葉を発しながら、彼女の身体に手をかざしたりしはじめた。

たまに普通の日本語っぽい言葉も聞こえた。

そのうち彼女に変化があった。

「うぅ~~、うぉおお~~。」

唸り声があがったと思うと、彼女は目を見開いて、

「またかー!またかー!おのれー!おのれー!」

と、すごい形相で叫び出した。身体は反り返り、たまにドスンと床に落ち、すぐ反り返る。お母さんはその様子を見て気を失ってしまった。

オレももう、身体がありえないくらい震えていた。

「違う!違うぞ!この男は違うのだー!」

「ヒャーッ!ヒャーッ!Y~~~~~!Y~~~~~!」

卒倒寸前のオレをオッサンはいきなり捕まえて、彼女の目の前に突き出した。

「よく見るがいい!おまえの愛した男か!違うであろう!」

すごい彼女の形相。いや、これはあの女の顔なのか。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、違うんです、ごめんなさい…」

オレは絵馬を外したことを、心の底から謝った。

「~~~~~~~~~~~~~~~~。」

声にならない声で唸っている彼女…そのうちそれはすすり泣きのようになっていった。オッサンはそれを見計らったように、彼女の横にそっとしゃがみこみ、今迄とは比べものにならないくらい小さな声で語りかけていた。

オレは腰が抜けて放心状態だった。横では彼女のお父さんもへたり込んでいた。

やがて、彼女はだんだん落ち着いた様子になり、オッサンは最後の仕上げとでもいうように立ち上がり、またお経のようなものを読んで、オレらの前にしゃなりと正座した。

「もう、大丈夫です。」

それを聞いてオレは涙がボロボロ出た。声をあげて泣きじゃくってしまった。お父さんとオッサンがいろいろ話をしていたようだが、よく聞いていない。

彼女は気を失ったままで、意識が戻ってからでいいので、病院に行くようにと言われたらしい。オッサンは帰り際にオレに話した。

「正直あの程度で、ここまで憑かれるとは思わんかった。あんたぁ、よっぼど気に入られたんじゃのぉ。もう祓ったから心配いらん。…が、もう彼女には会うな。未練は相当なもんじゃ。またあんたと一緒におれば、ああなるかも知らん。もう会うな。お互いの為じゃ。気の毒じゃがそうせぇ。」

彼女のことは好きだったので、ショックだったが、やむを得ないと思った。

そしてオッサンは続けて、

「できればの…引っ越せ。この土地を離れぇ。それが一番安全じゃ。元はと言えばあんたの軽はずみな行動が原因じゃ、反省せぇ。」

「引っ越しはちょっと…」と思ったが、やっぱりやむを得ないと思った。学校もやめなきゃ…。

その後、彼女の両親に送ってもらった。お父さんは「こうなったのは君のせいだが、助けてくれたのも君だから礼を言う」と言ってくれた。その隣でお母さんはずっと黙ってた。

オレは両親にもう彼女とは別れ、自分もこの土地を後にし、戻らないと約束した。しかし、お別れも言えないなんて辛くて涙が出た。

その後オレは学校をやめて、地元に戻り就職した。その頃つるんでいた心霊スポットを一緒に回った友達2人も、ちょくちょく遊びに来てくれたが誰も彼女のことや、あの夜の後日談に触れるやつはいなかった。

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