中編4
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落ちてたノート

なんだか妙なノートを拾ってしまいました。

内容を少し紹介させてください。ショッキングなことも書いてあったので、幾つかはあえて偽ってまとめるつもりです。

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こんなものを載せて僕自身も危ないかもしれませんが、皆さんにも何か起こらないとは限りません。

どうかその点だけご了承してから読んでください。

稚拙な乱文になるかと思いますが、勘弁願います。

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僕の趣味は廃墟めぐりです。

廃屋や廃工場にいっては写真を撮り、自分のブログにまとめています。

自分で言うのもなんですがマニアックな趣味なんで一人で出かけることがほとんどですね。

僕は気が小さいから廃墟巡りを始めたころは不気味な場所に一人でいるのが怖かったりもしましたが、場数を踏むと次第にそういった感情は無くなっていきました。

例のノートもある廃墟で見つけました。

場所は伏しますが関東にあるマニアには有名すぎるところなので、いったことかある方もいるかもしれませんね。

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その廃墟は本当に魅力的でした。退廃の美学とでも言えるでしょうか。好きな方にはたまらない。廃墟マニアが太鼓判を押すのも頷けます。

話がそれましたね。

僕は無我夢中で写真を撮り続けました。

気づけば夕刻で、空はオレンジに染まっていました。

夕日に照らされる廃墟も美しいものです。

いつもだったらそう感じますが、今回は異様な不安を覚えました。

誰かに見られている?そんな気配を強く感じるようになりました。しきりに振り返ったり辺りを見回しました。

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暴走族や不良、ホームレスなど廃墟巡りでは生きている人間が一番怖いんです。

僕は廃墟を立ち去ることにしました。その時、一冊の床に落ちていたノートに気づいたんです。

なんで気づいたんでしょう。

丁度、夕日が影を落としている場所にそればありました。

まるでそのノートが僕を睨んでいたように感じました。

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ノートはよくあるB5サイズの大学ノート。

僕は手にとり中を見ました。名前がびっしり書いてある。男性のも、女性のもです。

すごく小さいのに、でも怒りに任せて殴り書きしたような書体です。元々引いてある行間のラインを無視して、これでもかというくらい隙間なく名前で埋め尽くされていました。

そんなページが何枚も何枚も続いていました。

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僕は見てはいけないものを見たことを自覚しました。流石に写真に収める気もしません。

字体を通して強い憎悪や狂気を感じました。

僕はノートから視線を反らし、何気なく前の壁を見ました。

日が傾いたので、さっきまで薄暗かった壁がはっきりと見えました。

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死、破、死、破、死、破、死、破... ..

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赤い文字でびっしり書いてありました。

僕は流石に怖くなりました。廃墟の壁に悪戯に恐怖心を煽るような落書きは珍しくありません。しかし、これは本物だと、直感でそう思ったのです。

呆気にとられて壁から目を逸らせずにいると、あることに気づいてしまいました。まだハッキリと赤い"破"や"死"の文字の他にやや茶色みを帯びたそれらの文字に。

shake

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血だ。血で綴ったんだ。

そう気づき、半ば本能的にその場を離れようと足早に廃墟を後にしました。

外に出ると淡い月明かりに照らされた廃墟を振り返り仰ぎ見ました。まだ自分の鼓動が早く、脂汗を額に滲ませていたのを覚えています。

そして見てしまいました。

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廃墟建物の窓に一人の初老くらいの男性を見つけました。いや見つけたというのは適切ではないかもしれませんね。窓の向こうの男性は間違いなく僕を見ていて、その異様な視線に必然的に気づいたのですから。

男性は風化した建物にはふさわしくないような、不気味なほど当たり前の一般人といった感じでした。不気味なほど柔和な表情でこちらを見つめ、やや距離があっても口元から微かに笑みを浮かべているのが分かりました。

僕が男性と見つめあったまましばらく固まっていると、男性が何か下から拾うような動きを見せました。もう一度窓に姿をハッキリと見せると手に恐らく先ほど僕が拾ったであろうノートを持っています。

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男性は明らかに先ほどより嬉しそうでした。目と口元からは病的な狂気がひしひしと伝わり、いよいよ僕は蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けなくなりました。

男性はしばらくニヤニヤ笑っていましたが、その後僕を指さしさらに口角を上げました。

僕はもう恐怖のあまり一心不乱に逃げました。

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気づけば暗い中車に乗り込み、大袈裟な速度で逃げていました。

あのノートは。あの落書きは。落書きのインクは。

あのおじさんは。正直もう関わりたくない。

以上、僕の実体験でした。

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