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中編3
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ゲーセンばばあ

※途中まで、うちの旦那さんの本当に体験した話。

うちの旦那は、正直、真面目な方ではなく、やんちゃというのとは、また違うタイプです。

学生の頃は、一応卓球部に所属するも幽霊部員。

夏休みともなれば、無論練習に参加するはずもなく、それかと言って、家で真面目に宿題をやるタイプでもありません。小学生の頃はラジオ体操が始まる前には、すでに山の中に入ってカブト虫やクワガタを獲りに行き、その帰り道にゲーセンに寄って、一日中遊んでばかり。おかげでお勉強のほうはさっぱりだったようです。

クワガタやカブト虫を獲った帰りに、ゲーセンに寄るのにはワケがありました。そのゲーセンというのが駄菓子屋も兼ねたような所で、捕まえたクワガタやカブト虫を買い取ってくれるそうなのです。

「今日は大量だぞ。」

そう勇んで、ゲーセンにいそいそと足を運び、虫かごを差し出した。

ゲーセンという名の薄暗い駄菓子屋の奥から、もずの早煮えみたいな婆さんが出てきて、値踏みする。

「・・・ん。」

尖ったあごをしゃくると、シワシワの手に50円玉が乗っていた。

「えー、これだけ獲ったのに、たったこれだけ?オバサン。」

ばあさんと呼ぶと、凄い目で睨まれるので、恐る恐る不満を口にしても、フンと鼻を鳴らし、奥へと引っ込んだまま、また動かなくなる。愛想の無いばばあだぜ。

でも、無愛想な分、不気味さはあり、まだあどけなさの残る少年には逆らえなかった。

もらえないよりはマシか。

不満を抱えつつも、カブト虫を売ったお金で、その店にある、筐体ゲームでピコピコ仲間と遊んで、余ったお金で駄菓子を買う。つまりは、稼いだお金も、その店でゲームやらで溶かして帰るので、店は何も損しないのだ。

そんな夏休みのある日、嬉々として、クワガタやカブト虫を獲って、虫かごを持って、いそいそとゲーセンに行こうと、獲物を確認した。

すると、一匹だけ、頭がぷらんぷらんになったカブト虫が居たのだ。

たぶん、クワガタと一緒に入れていたので、クワガタに首チョンパされたのだろう。

田舎育ちなら、誰しも経験があると思う。

「ひぃっ」

少年は小さく叫んだ。

少年は、カゴからそっと首の皮一枚で繋がったカブト虫を取り出すと

「ごめんなさい」

とつぶやいて、森に放した。

その日の夕方、少年は家族と一緒に夕飯を食べていて、ふと窓の方を見た。

「ひゃああ!」

少年が、叫び声を上げると、母親は怪訝な顔でなんなの?と言った。

窓の外の網戸に、なんと、今朝森に放した、首の皮一枚でつながったカブト虫が飛んできて、網戸にピタっと止まった瞬間を見てしまったのだ。

母親が厳しかったため、そんなことは言えない。

ましてや、内緒で部活にも行かずに、ゲーセンで遊んでるとは、親はつゆ知らず。

「な、なんでもない。」

母親は、訝しがりながらも、変な子、と言って早く食べて勉強するように促した。

カブト虫が恨んでわざわざうちまで飛んできたのか?

少年は、心の中で「ごめんなさい」と繰り返した。

とはいうものの、本当に懲りて反省するわけがない。

次の日も早朝から家を抜け出し、カブト虫とクワガタ獲りに精を出す。

見てろよ、ばばあ。今回は100円は稼いでやるぜ。

昨日、傷をつけておいたくぬぎの木が見事に蜜を出していて、大量のカブト虫がまとわりついていた。

少年は嬉々として、網でつかまえて、ゲーセンに急いだ。

「おばさーん、カブト虫、獲って来たよ~!」

いつもなら薄暗い店内から、のっそりと出てくるのだけど、今日は何も反応がなかった。

あれ?どこか出かけてるのかな。店を開けっ放しで無用心な。

「おばさん?」

もう一度、声をかけるが返答なし。

ごとり。

店の奥から物音がした。

なんだ、居るなら返事しろよ、ばばあ。

そう思いながら、店の奥へと進む。

そして、いつもばあさんが座っているレジ台へ目をむけると、薄暗さに目が慣れずになかなか姿が見えない。

そして、ようやく目が慣れて、姿が露になった時、少年は後ろにひっくり返ってしまった。

「ひぃいぃぃぃぃぃっ!」

その体には、首がついておらず、一本の線でつながり、首はレジ台の上に転がっていた。

そして、その首がごろりとこちらに向くと、口を開いた。

「クソガキ、殺生するんじゃないよ!」

ブーン、とカブト虫の羽音が響いた。

Concrete
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