僕は今、排水講に身を潜めている。
僕の体はまだ小さく、こんなところに身を潜めることができるのだ。
中学生のサクラダ君は体が大きくなりすぎていたため、すぐに見つかって
間引かれてしまった。
僕らのような、能力の劣る者はこの施設では用済みとなり、間引かれるのだ。
彼らにとって、能力の低いものは雑草だ。
能力が低いからと言って、決して放免してくれるわけではないのだ。
ここで行われていることが決して外部に漏れてはいけないから、間引く。
僕らは雑草だから、根絶やしにされる。
根絶やしにしないと死なないからだ。
髪の毛一本足りともこの世には残らない。
最強の雑草を育てている。それがこの施設だ。
僕らは不死身の能力を持つ者。
不死の研究をしているこの施設にとって、一度でも脱走を試みた者は
不穏分子として処分されるのだ。
僕は耐えられなかった。
不死身の体とは言え、訪れるはずの無い死に恐怖したのだ。
この研究所では、恐怖の感情のコントロールの研究も行われている。
何度も何度も殺される。これでは無間地獄ではないか。
完全に恐怖の感情が消えない者は、失敗作として処分される。
僕は失敗作として、処分が決まった今夜、施設から抜け出そうとしている。
もう少しだ。もう少しで僕は自由になれる。
暗い排水溝を、音を立てないように腹ばいになって這いずり回った。
すごい臭いに吐き気を催しながらも、僕は進んだ。
暗い排水溝に光が差し込んできた。
出口だ。
やった!僕は自由を手に入れた。
間引かれるのを免れたのだ。
そして、僕は今、こうして誰も居なくなった星に永遠に住み続けている。
これが僕が手に入れた自由だ。
作者よもつひらさか