死之尾夜(シノビヨル) 一夜目
ここは誰もいない山の中
別荘で小説を書く為に籠っている。
夜中0時を知らせる古時計の音
鉛筆を持ち、何も書かれていない紙を睨む。
カチカチと時計の音が部屋に響く
music:7
すると、雨が降り出したのか部屋が
少し寒くなってきた。
私は椅子から立ち上がり、暖炉のある場所まで歩き薪を組み火をつける
パチパチと音がして火が強くなる。
暖かみのある光が部屋を
ぼんやりと照らす。
「少し休憩しよう。」
暖炉の前のソファに座り
ウトウトしていると、いつの間にか眠ってしまった。
夜中3時…
寒さで目を覚ました…暖炉の火は消えていた。
「あれ?薪がなくなってる?」
仕方なく外にある薪専用の倉庫に向かおうとした時だった。
sound:9
近くに雷が落ちたのだろうか?
外が激しく光り雷鳴が轟いた。
強くなる雨だったが部屋から倉庫までは屋根がある廊下がある。
「こういう為に屋根をつけて正解だったな。濡れずに済む」
念の為にカッパを着てドアノブに手を伸ばす。
ギィーと音を立てて開いた瞬間に
sound:11
強い風にカッパが靡く
「急いで薪を取りに行こう」
扉を閉め倉庫へと歩き出す
sound:9
風と雷の音の中に、何者かの息遣いのような声が混じっていることに気付く。
「ん?なんだ?」
sound:11
揺れる木々を見つめ首を傾げる
雨風が強くなる前に薪を持って行こうと薪の束を持ち上げた時だった
sound:9
雷で辺りが照らされた時に、
倉庫の窓の外に何者かの姿が見えた
背筋がゾクッとして慌てて部屋に戻る。
鍵を掛けて薪を暖炉のすぐ横に置く
sound:14
ドンドン…微かに聞き取れるノック
「?」
ギギギギギィ…その音だけはハッキリと聞こえた、爪で何かを引っ掻く音
私は飾ってあった散弾銃を手に取り
音がする扉から目を逸らさず弾を込める。
sound:9
張り詰めた緊張感…鳴り止まない雷鳴
ピタリと全ての音が聞こえなくなった
「風の仕業か?全く…驚かせやがって」
散弾銃を元の場所に戻し
椅子に腰をかける。
sound:9
眠りから覚めたかのように
一斉に鳴り響く雷鳴と雨風の音
「全くいいアイデアが浮かばない」
鉛筆を転がし手を休める
ふと、ベランダを見ると
一瞬の光の中に人影が見えた。
「ん?気のせいか…そろそろ寝よう」
私はベッドがある部屋に向かい
長い廊下を歩く
ギシギシギシ…
床が歩く度に音が鳴る
妻が編んでくれたマフラーを首に巻いてベッドに潜り込み、深い眠りについた。
何かの視線を感じて
起きて時計を見ると時間が進んでいない。
「どういうことだ?寝たのは3時半だったよな?」
完全に眠気が飛びベッドから部屋を見渡す。
sound:9
雷は轟音と共に光を放つ。
その時、カーテンに人影がクッキリと見えた。
私は憤りを感じてカーテンを勢いよく開いた…
だが…窓が濡れているだけで何もいない。
「クソ!確かに人影が…」
窓の外にこちらを見つめるように
置かれた石像が佇んでいた。
「あんな所に石像なんてあったか?」
ジッとベッドから外の石像を見つめていると、石像の口が徐々に開き
真っ赤な液体が溢れ出した。
sound:14
ドンドン!!
ドンドン!!
「高砂さーん!いますかー!」
扉を叩く音が聞こえ目を覚ます
「夢?」
sound:14
ドンドン!ドンドン!
「高砂さーん!」
私は慌てて扉の鍵を開けて扉を開く
「おはよう、須藤保安官」
彼は未来有望な須藤保安官だ。
「寝てました?」
「あぁ…まあね。今日は何か用で?」
須藤保安官は資料を読みながら
「最近、この森で男女の腐乱死体が発見されて。犯人は熊らしいんですが、まだ捕獲出来てないんですよ。」
「熊?それでわざわざここまで忠告しに来てくれたのか?」
須藤保安官は敬礼して
「まあ人々の安全を守る保安官ですから、そのために護身用の猟銃を渡し回ってるんです。」
私は笑いながら飾られた散弾銃を指差す
「心配は要らないよ。あれがあれば熊に風穴を開けられる。」
須藤保安官は散弾銃を見て
「立派な散弾銃ですね!あ!もしかしたら、この弾は使えるかもしれませんね!」
私は大量の弾が入ったカバンを受け取り
「あぁ、この弾なら使える。ありがとう。」
須藤保安官は敬礼して
「熊が捕獲できたら回収に来ますねー。では、失礼します」
私は手を振り
「ありがとうー。」
そして今日は小説に手を付けず
暖炉の前でラジオを聴きながら
本を読んでいた。
music:7
sound:9
また雷だ。
窓を叩く雨
怒り狂ったように雷が哭く
「やれやれ…最近、天気が悪いな」
ガタガタガタ…風で窓が揺れる。
ドン!と鈍い音が部屋に響く
音の発生源はわからない
本を閉じて部屋、外をソファーから見渡す。
「なんの音だ?」
ドン!ゴゴゴゴッ…ドン!
何かを引きずるような…!
玄関の前で音が止む
「なんだ?」
ソファーから立ち上がり散弾銃を手に取り構える。
「まさか、熊?」
扉の両脇は曇りガラスになっていて
そこに何かがいればボヤけるだろうが
何か見えるはず。
玄関の扉に近付いた時だった
扉の両脇の曇りガラスに灰色の何かが見える。
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ゆっくりこちらを覗くように現れ、それはこちらをジッと見つめ
スッと消えた。
心臓が止まるかと思えるほどの
恐怖を感じていた。
意を決して扉を開くと
地面に何かを引きずった跡のようなモノが残っていた。
「熊だったのか?でも、灰色の…」
突然の雷に驚き玄関の扉を閉める。
To be continued…
作者SIYO