N県のKさんの話
Kさんの家では1匹の猫を飼っていた
4歳になるその猫は、白と茶トラの混ざった柄でとてもおとなしい猫だった
ある日の事、Kさんが夜遅くに帰宅し、遅い夕食を居間で摂っている時の事だった
Kさんの家は居間から玄関が見えた
玄関には猫の出入口の為に床下の木の板が外されていた
Kさんはおやっと思った
いつもだったら寝ている猫が玄関の方をじっと見つめていたのだ
(もしかして、よその家の猫が来てるのかな)
そう思ったKさんは猫と同じく玄関をじっと見つめていた
すると突然、床下から真っ白い腕がにゅっと出てきた
(なにあれ!)
Kさんは訳がわからず、ただグネグネと動く白い腕を見ている事しか出来なかった
その他2~3分で腕は床下に戻っていった
(なんだったの、今の...)
そう思いつつ猫の方を見ると、まだ玄関の方を見ていた
それも何かに怯えるような感じに...
Kさんは恐る恐る玄関の方を見た
そして"そいつ"はいた
全身真っ白で、子供ぐらいの大きさ
そしてなにより驚いたのが顔だった
目も鼻も口もなく、顔の中心に小さな穴が空いているだけだった
Kさんは"そいつ"と目があった気がした
すると"そいつ"は徐々に体を左右に揺らし始めた
最初はゆっくり揺れているだけだったが次第にどんどん早くなり、今はすごい勢いで揺れている
Kさんは恐怖で"そいつ"が揺れているのを見ている事しか出来なかった
その時、飼っている猫がフーッと"そいつ"を威嚇した
すると"そいつ"はピタリと動きを止め、イソイソと床下に戻っていった
その後、Kさんが"そいつ"を見る事はなかった
作者西園寺 紅音