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短編2
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古ミシン

N県のOさんの10歳頃の話。

ある夜の事、Oさんはなかなか寝つけずに、ベッドに入ったままいつまでもモゾモゾとしていたという。

しばらくしてOさんはトイレに行く為に起きた。

用を足し終えたOさんは、何気なくトイレから続く廊下の奥に目をやった。

そこには、足踏み式の古いミシンが置いてあり、Oさんの母親は電子ミシンを使っているのでそれは半ば廃品だった。

その古いミシンが目に入った瞬間の事だった。

ふと、誰かがその前に座っているような気がした。

一瞬、目の錯覚だと思ったそうだ。

その為、目をこすって今一度よく見直した。

ところが間違いなく、誰か.........女性が座っていたのだ。

Oさんが見た瞬間、その女性はミシンをガタンガタン、ガタタンと作動させ始めた。

手は使わず両側にだらりと垂らしたまま、足だけを忙しく動かしてミシンを鳴らしていた。

Oさんは金縛りにあったように身動きが出来ず、その様子をただ見つめていた。

女性は、時折クスクスッと笑った。

髪を短く切った、まだ若い、青白い顔だった。

Oさんは全く見覚えがなかったという。

誰かがOさんの知らない時に泊まりに来ていて、その人がミシンをいじっているのかとも考えたそうだ。

あるいは泥棒か、とも思った。

それにしては様子が変だった。

もしかしたら、どこかの気の触れた人が.......。

そう思ったその瞬間、ふいに女性がOさんの方を向いた。

その途端、Oさんは思わず腰が抜ける程驚いた。

女性には目が、無かったのだ!

目のあるべきところには、ただのっぺりとした青い膚があるばかりだった。

そしてその女性は笑いながらいきなり立ち上がり、Oさんの方へ歩み寄ってきた。

Oさんは震え上がり、後ろも見ずに自室へ駆け込み布団を被り、そのまま寝ずに朝を迎えた。

ドタドタとOさんを追いかけてくる足音を聞いたような気がしたが、朝までは何もなかった。

翌朝、Oさんの母親が起き出した気配に安心して部屋を出て、すぐに廊下の奥の古ミシンを見た。

するとミシンには、茶色の糸がめちゃくちゃに絡まっていた。

Oさんの母親は誰かのイタズラだと言って怒ったが、Oさんは何も言えなかったという。

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