music:2
「あれは夢じゃないのか…」
水浸しの部屋を見渡してから
ゆっくりと立ち上がり家を出た。
昨日の雨で地面が泥濘んでいる
泥に足がはまりイライラしながらも
ふと、前方に視線を向けた。
パトカーが木に衝突し止まっている。
フロントガラスは複数の穴が空いていた。
運転手はいない…
ひたすら無線機から雑音が流れている
運転座席に目をやると名札が落ちていた。
「須藤保安官…何があった?」
地面には何かを引きずった跡が残されていた。それを辿っていくと
変わり果てた須藤保安官の姿があった
顎を外され内臓という内臓を外に引きずり出され、地面に横たわっていた。
それを見た瞬間に吐き気に襲われた
変わり果てた須藤保安官から目を背け
散弾銃を握りしめ、その場を後にした
「早く、この森から逃げよう!」
パトカーは動かない…落胆していると
倉庫に自転車があるのを思い出した。
倉庫から自転車を出し、山道を登っては降りてを繰り返して気付いた。
同じ所をグルグルグルグルグルグル…周ってる…
「どういうことだ?」
自転車を止めて辺りを見渡すが
景色は何も変わっていない。
時間だけが過ぎていく…
薄暗くなって家へと引き返そうとしたが帰れない…
「まずい…どうすれば…?」
直感的に振り返り
10メートルほど離れた場所に小さな小屋が見えた。
「あそこに行こう」
小屋に着いて中に入ると
壁には過去に起きた猟奇連続殺人事件の記事が無数に貼られていた。
猟奇連続殺人事件…未解決事件
男女の腐乱遺体が森の奥深くで発見
男性は胸から頭にかけて鋭利な…で斬られたような外傷、内臓が引きずり出され…
女性は頭部だけが発見されず…
捜査は断念…熊によるものと…
立て続けに猟奇連続殺人事件が発生
いずれも熊によるものとして調査を断念しました。
「熊だと?あれは熊なんかじゃ…」
眩しい光が辺りを照らす
sound:9
雷が鳴り激しい雨が降り始めた。
music:2
ハァ…ハァ…ハァ…フー…フー
雨風の音の中に吐息が混じっている
私は散弾銃を握りしめ小窓から外の様子を見ていると
10メートル先に人影が見えた
だが…それはユラユラと揺れながら
小屋に向かって近付いてきた。
灰色のナニカ…私は小窓を破り散弾銃を撃ち続けた。
「来るなぁぁ!」
散弾銃を撃ち続けたが灰色のナニカは
ビクともせず向かってくる
散弾銃に弾を込め振り返ると
そこには何も居なかった…
「やったか?」
私は小屋の扉が開かないように固定して眠りに落ちた。
ズズズズズズッ…ズズズズズズッ…
ズズズズズズッ…ズズズズズズッ…
お前が殺したんだ…罪悪感から逃げていたんだ。
sound:9
逃げられないぞ…必ず…
「ハッ!」
雷の音で目が覚めた…溢れ出る汗を拭き、頭に手を当てる。
「夢?」
胸糞悪く
何故か罪悪感に胸が詰まる
キーン!耳鳴りが何かを呼び覚ますように響く…
手に血が広がる感覚が覆い尽くす
震えながら今までの出来事を思い出す
「確かにバケモノに襲われて…それから…それから?」
「何をしに、ここへ?小説を書く為?違う…本当は…」
散弾銃を手に取り猟奇連続殺人事件の記事を手に取り眺める
手に取ったまま小屋を見渡す
そして気付いた。
ここは私の小屋だ。
忘れていた狩猟するために籠るための小屋だ…だが、いつからか来なくなった。
なぜ?
耳鳴りが鳴り響く
sound:39
頭の中に様々な人の叫び声も聞こえる
「猟奇連続殺人事件の犯人は私…なのか…」
何気に自分を疑ったが
ふと床の扉に目を向けた
開いてみると血生臭い匂いとハエが漂い激臭が…それで確信した。
「あの忍び寄るバケモノは罪の意識から生まれた幻覚なのか…」
そっか…私は…殺人鬼なんだな
目の前に現れた灰色のバケモノを睨みながら
散弾銃を手に取り銃口を口に入れ
結局…また罪の意識から逃げるのか
情けないよな…そうやって呟いて
引き金を引いた。
これが私の物語だ。
作者SIYO