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中編5
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400円の代償

都内某所で働く、ある女性の話しです。

その女性が働く会社の近辺には、たくさんの飲食店があります。

どの飲食店もオフィス街という事もあり、こぞってランチ戦争をしているため、お昼には困りません。

ですが、どの店もほぼワンコインでランチを出しているため、贅沢な話ですがもっと安いお店はないかなぁ。と毎日お昼は色々なお店を捜し歩いていました。

そんなある日、女性がいつものランチメンバー3人でお昼を食べるお店を探していると、一軒の小汚い中華料理屋を発見しました。表にでている看板を見ると、薄汚れた看板にかろうじて「400円」という文字が見えます。

少し汚いけど安いしここでいいか、と3人はその中華料理屋に入ってみることにしました。

お店に入ると、小さな汚い店構えとは違い清掃がしっかり行き届いており、とても綺麗なお店でした。

ですが、お客が来たのに店員一人出てこず、感じ悪いなとは思ったそうですが、金額が安いこともあり、あまり気にせずにいたそうです。

早速メニューを見ると、とてもメニューが古くて文字が所々消えており、「ラーメン」「…納」の2つだけ辛うじて読み取る事ができました。

しかし、それを見たランチメンバー3人のうち1人が、ラーメン苦手だし気味が悪いから他で食べると言って外に出て行き、女性ともう一人の同僚の2人になってしまいました。

お互い、どうする?と顔を見合わせましたが、2人ともその奇妙な雰囲気に好奇心を抱いてしまい、やはりそこでお昼をとる事にしたそうです。

すみませーん。

呼んでもいっこうに店員は現れません。

すみませーんラーメンくださーい。

するとカウンターの奥から、はいはい、と老人の声が返ってきました。2人ともラーメンを注文するつもりでしたが、一緒に来ていた同僚は、どうしても名前が擦れて読めないメニューを注文したいと言い出しました。

この「…納」ってなんですか?読めないんですけど。

同僚は、店のシン‥とした雰囲気などお構いなしにカウンター奥に叫びました。

すると、はいはい、という言葉がまた返ってきたそうです。

2人はまた顔を見合わせ、もしかして注文されちゃった?と不安になりましたが、

時間もないし400円だし、まぁいいか「…納」が気になるし注文したほうが早いね。と同僚は詳細を聞くことを諦めたそうです。

料理を待つ間、2人で店内をなめるように隅々まで観察していると、壁に中華料理とは不釣合いな大きな絵画が飾ってありました。

油絵のようで、薄暗い夕焼けの中に衣服を身にまとっていない人間のような細長い肌色の生物が2人ゆらゆら寄り添って立っているような絵でした。髪の毛も顔もなく、本当にただ人間の形をした何かが描いてあるだけで、正直不気味でした。

二人でそわそわしながら料理を待っていると、その女性はトイレに行きたくなり、先に料理がきたら食べててねと同僚に伝えてお手洗いに向かったそうですが、お手洗いに向かう時に先ほど見た絵を近くで見てみたくなり、女性が絵に近づくと、

「……い」

一瞬。ほんの一瞬ですが、何かの声らしきものが聞こえた気がしたそうです。

店主がラジオを聞いてるのかもしれない。女性は特に気にせずにお手洗いを探してましたが、店内は狭いのですぐ見つかり、足早にテーブルへ戻りました。

ですが、女性が席に戻ると同僚の姿はなく、注文したラーメンだけがテーブルに置かれていました。女性は、もしかしてもう先に会社に戻ったのかな・・と思い、同僚に「帰ったの?」とメールを送って、早々にラーメンをたいらげて急ぎ足で会社に戻ったそうです。

女性はランチ仲間とは部署が違うため、会社ですれ違う人に、さっきまで一緒にいた同僚がお昼から戻ったかどうか確認しましたが、見ていないと返答が返ってきて、少し不安になりながらも仕事に戻ったそうです。

仕事が終わり、携帯を見てみると同僚からの返事はありませんでした。

念のため、同僚が働く部署に行き、お昼から同僚が戻ったか確認しに行くと、なんと同僚はランチから未だに戻らず、連絡しても繋がらないとの事でした。

女性は、あの奇妙な中華料理屋の事を同僚の上司に説明し、もしかしたらあの付近で何か事件に巻き込まれたかもしれないと伝え、もう一度中華料理屋へ行ってみることにしました。

偶然たどり着いた店だったため、記憶をたどりながら昼間のお店らしき道にたどりつくと、そこは昼間に見たお店の様子とは全く違う、

ボロボロの廃墟でした。

壁の板が所々剥がれ、ドアも壊れてテーブルもボロボロで、屋内が丸見えになっていたそうです。様子はまるで違いますが間取りや大きさからやはり昼間の店で間違いなさそうです。

女性が、恐る恐るドアだった場所をくぐり中に入ると、あの絵が飾られていました。やっぱりここで間違いないと確信した女性は、改めて絵を見て腰を抜かしました。

昼間見た時、絵には人の形をしたモノが2つ描かれていましたが、今改めて見てみると、人の形をしたモノは1つだけになっており、明らかにそのシルエットは昼間見たモノとは違い、女の形をしていたそうです。

そして、よく見るとその絵の足元に同僚が使っていた携帯電話と同じ色の小さな長方形のようなものが描かれていました。

女性には何がおきているのかしばらく理解ができず、店主が描き足したのか?吸い込まれた?いや非現実すぎる・・と一人で葛藤していると、女性はふと恐ろしい事に気がつきました。

最初に描かれていた2人はどこにいった?

その瞬間、奥から何かの気配を感じ、奥の暗闇を凝視していると、2つの顔の無い人のようなものが、ゆらりゆらりとゆっくり近づいてくるのが見えたそうです。女性は恐ろしくなり、すぐにその場から逃げました。

会社では、同僚が仕事が嫌で逃げたのだろうという噂が流れ始め、女性はいたたまれなくなり、辞職したそうです。

もともと描かれていた2つの人のようなモノは、一体どこに行ってしまったのでしょうか。新たに絵に描かれた女はなんだったのでしょうか。

そして、あのメニューはなんと書かれていたのでしょうか。

皆様も、安すぎるランチにはご用心ください。

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ラグト様
コメントありがとうございます。
そうですね、はたして絵の中に格納されたのか消滅したのか……なんのメニューだったのか。
自分にも謎が残ります(笑)
余談ですが、わたくし納豆は大の好物でございます(´ω`)

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