お昼休み、あっちの店こっちの店とサラリーマンやらOLやらで町は活気づいています。
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そんなある種お祭り騒ぎの中、夏でもクーラーは必要ないんじゃないのか?と不気味にひっそりと店をかまえる○○食堂
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で、学生達の間で名付けられた呼び名は「恐怖食堂」。
夏合宿、修学旅行、または不良達がたむろするコンビニ前でも怖い話の定番場所として度々登場するんですが無責任な物で会話の割に全然お客さんは来てくれない。
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でもその一番の理由は、学生達の噂話でも店の雰囲気でもない!!
店主の性格。
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実は店の雰囲気とは相反して、凄いおしゃべり好きの店主
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一見するとそのギャップで店も繁盛しそうな物なのですがなんせその会話内容が全~部ッ!!自分の自慢話ばっかり
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最初こそ普通に聞いていたお客さんも段々と苦笑いになっていき、食べ終わる頃には逃げるように会社に戻り、同じ客がこの食堂に訪れる事は二度とない。
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そんな壊れかけの店にある日一人の男が・・・
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店主「いらっしゃい、何にします。」
謎の男「この店一番のおススメ料理下さい。」
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すると店主が満面の笑みで生姜焼き定食を出しニコニコしながら
「これは美味いと思うよ~」、「豚肉のレベルがほかの店と比べもにならない!!」
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と料理の自慢話から始まり途中からは店主の武勇伝的な話まで・・・
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わずか15分そこそこで店主の半生まで聞かされそうになった所で謎の男からの
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「生姜焼き定食をまずく作る方が難しいわ!」
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と、ポケットから小瓶を取り出し
「これが本当に美味しい料理って物なんだよ」
と小瓶から謎の液体を振りかけた定食を差し戻しそれを店主が食べた瞬間
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今まで誰も褒めた事も認めた事もお世辞すら言った事のなかった店主からの
「う、美味い・・・」
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そして目を真っ赤に腫らした彼からの
「その小瓶を私に下さい」と言う涙の敗北宣言
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すると謎の男は
「あなたは本当の料理の美味さを感じ取れる舌を持っている」
「その味覚がある限りいつか絶対繁盛出来ますよ」
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とニコリと笑いその小瓶をテーブルに置き店を出ていく謎の男
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それからの店主は人が変わったように料理に打ち込み、それでも「自分はまだまだ」と夜遅くまでひたむきな努力をし続け、更にもともと料理の味がと言うより店主の性格部分が足を引っ張っていたんで謙虚な姿勢に生まれ変わった結果
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一人また一人とお客さんも徐々に増えていき
気が付けば他店と引けを取らない程店は繁盛するんですが
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どう~しても、あの謎の液体を振りかけた生姜焼き定食の味が忘れられない!!そして料理研究のため既に使い切った空の小瓶を眺めながら
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「こんな小瓶じゃ足らねえよ!」
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とぼやいた瞬間、玄関口からの謎の配達物
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もしや?と思い急いで段ボール箱を開けると、箱いっぱいに敷き詰められた小瓶の数!数!数!まさに狂喜乱舞で急いで台所に行きその液体をかけての夕食
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「う、美味い美味すぎる」
約二年ぶりとなる液体入りご飯は殺人級に美味く、何杯食べても満腹にならない
そして涙でくしゃくしゃになった顔を拭きながら半分以上の小瓶を使い切ってしまった所で
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「もう店なんてどうでもいいや」
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とその日の内に全ての小瓶を使い切ってしまった店主。しかし店主にとって幸運なのか?不幸なのか?次の日も又その次の日も段ボールいっぱいの小瓶が送られ
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更にこの液体をかけた食べ物、全然飽きがこないどころか同じ物を食べても一回目より二回目、二回目より三回目と食べる回数に比例して美味しく感じてしまうんです。
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それから一年後、細身だった店主の身体はブクブク激太りし、食糧を買い込むための貯金も底をつき、仕事や料理に対しての情熱もなくなり、あるのはただただ無限に続く食欲のみ・・・
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そしていまだに送り続けられる謎の液体
でも情熱もない!お金もない!食糧もない!私にとって残されてたのは自分の醜く太った身体のみ
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そして絶対やってはイケナイと言い聞かせてた禁断の扉を遂に開けてしまいます。
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shake
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まずは人差し指から・・・
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指を切断する痛みよりも上回る衝撃の美味しさ!
ドクドクと流れ出る手のひらからの血液がまた絶品に美味い!!
そして中指、くすり指と食べ続けたとこで気を失う私
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しかしその失神が出血多量のためなのか?指の美味しさのためなのか?私自身もまるで境がついていない。
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そして目覚めると次は唇、その次は耳、そして腕等々、店中が血の海となり正真正銘の「恐怖食堂」になった所で「ガラッ」と開く扉
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ぼんやりした意識の中で見えるのは金髪頭の不良少年、少女達・・・
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彼らが私を助けに来てくれたのか?ただただ店の物を盗みに来ただけなのか?もう死んでしまった私に確認する術はないがただ一つ確認出来たのはそのグループの一人が小瓶を店からこっそり持ち出してた事
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何も起きなければ良いが・・・
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数日後
小瓶を盗み出してた少女「あ、そういやこの前こんな小瓶が落ちてたんだけどこれって何だと思う?」
別少女「化粧品とかじゃね?」
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とキャッキャッさわぎながら小瓶の液体を顔にペタペタ塗りたくる少女達・・・
そして
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「なんかこれ臭くね?絶対化粧品じゃないよ~(笑)」
「臭いって言うかなんか食欲がそそる様な匂いって言うかなんと言うか~」
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そして顔を塗りたくったその手をじ~ッと見つめながら「ちょっと爪部分かじってみ?、私もかじるから」とゆっくり指先を口元に近づける二人の少女
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・・・
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・・・
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・・・
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「まずッ!!」
そしてその小瓶は少女達の手によって川に捨てられ二度と人の手に渡る事はありませんでした。
作者DQ