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■短め■トイレの個室で…

中編5
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■短め■トイレの個室で…

真夏の猛暑の中、僕は喉が渇いてコンビニに入ったんだ。

でも汗まみれでクーラーのかかった店内に入ったもんだから、急に腹が痛くなる。

それで仕方なくその店でトイレを借りた。

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トイレの内部は男女で個室が別れており、その奥に手を洗う所があった。

僕は急いで男性の個室に駆け込み、カギを閉めた。

………

……

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用を済ませたので個室から出ようとしたのだが。

ガチャッ

どうやらトイレの個室の外に誰かが入ってきたようだ。

どうやら電話をしていて、女性の声が聞こえる。

今出るとちょっと気まずいので、少し留まることにした。

するといきなり、

コトン!

と何かが落ちる音がして、その声が止んでしまった。

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「な、なに、こないで!」

さらにその一瞬後、大きな悲鳴が個室の外から。

そして逃げるかの様な足音が聞こえた。

……もしかして、この個室の外に、誰か、ヤバい奴がいる?

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ビビリな僕は、もちろんガクブルしながら個室で縮こまった。

そうだ、友達にメールして外に誰かいるか見に来てもらおう。

震える手でスマホを操作。

やっとの思いでメールを送信出来た。

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するとまたもや。

ガチャッ

誰かがトイレ内に入ってきたようだ。

「誰かいますかー。」

今度は男性の声。そうか、さっきの女性が店員に何かを伝えたんだろう。

冷静になれば当然の事だった。

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僕も個室から声をかける。

「さっきの悲鳴なんだったんすか!外に誰かいるんですか!」

店員が返事をする。

「ちょっと待ってください。」

ドアの開け閉めの音が二回、女性の個室と掃除用具入れの確認だろう。

「落ち着いて下さい。個室の外には誰もいませんよ。」

「そうですか?」

「はい。大方、あのお客様は疲れてたんでしょう。」

なんだ、本気でビビってしまったじゃないか。

僕はもう出ようとカギを開けようとしたが、あることに気付いた。

個室のドアの下には少しの隙間がある。

そこから外を確認できるのでは?

……覗いてみよう。

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恐る恐る覗き込むと

外の床には

赤い液体が水溜まりを作っていた。

え……これって……

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「見ました?」

外から冷たい声が。

「大丈夫ですよ。男性には危害与えないので。」

「く、来るな!!」

僕は狭い個室の中でもなるべく奥に避難した。

ピロリン

スマホが鳴った。メールの返事だろう。

「スマホで通報とかやめてくださいね。」

と言うと同時に

ドンッ

とドアを思いきり叩かれた。

ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ!

僕は無我夢中で110番に通報した。

「はい、事件ですか事故ですか?」

「助けて下さい!○○公園の横のセ○ンにいます!」

「電話やめてくださいねー!」

ドアをバンバン何度も叩いてきた。

「ヤバイ人に捕まって、トイレ!トイレにいます!」

バンバンとドアが叩かれる

「少し待ってください、今すぐ向かいます!あ、出来れば電話は切らないで下さい!」

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バンッ!

ひときわ思いきりドアを叩いてきた。

「もういいです。」

外の男が一言言った。

はぁ、とため息のようなものも聞こえた。

一瞬の静けさ。

しかし、また

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バンッバンバン

何度も何度もドアを叩かれる。

バンッバンッバンッ

やっぱり何度もめちゃくちゃに叩かれる。

……これドア……外れるんじゃないか?

「早くッ警察さんはやく!!」

「今向かってます!!あと少しです!!」

バンッ!

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また音が止んだ。

その時、なぜか僕は電話を自分から切った。

恐すぎて少しおかしかったのかもしれない。

そして、もう一度、ドアの隙間を覗いた。

「え、あれ?」

そこに血の水溜まりは無かった。

夢?

寝た覚えも目覚めた覚えも無い。

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ガチャッ

誰かがまた入ってきた。

「おかーさん!トイレいってくる!」

女の子の声。

どうやら女の子は隣の女性個室に入ったようだ。

外で何かが起きてる様子は全く無い。

何が起きているのか?僕は茫然とドアの前で突っ立っていた。

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しばらくすると隣の個室のドアが開いた音と女の子の鼻歌が聞こえてきた。

さらに、手を洗う音。

「あー、ここ怖いー。」

女の子の声。

何が怖いんだ。

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女の子の走っていく音。

「あのねーおかーさん!」

声はどんどん遠ざかり聞こえなくなった。

僕は今度こそカギをあけた。

その瞬間、

「…ふふ……ふふふ…ふ」

個室の中に、誰かのかぼそい笑い声が響いた。

ドアを慌てて開き、外に飛び出た。

そこには、危ない男も居なかったし笑い声の主も居なかった。

もう、訳がわからなかった。

一応恐る恐る女性個室と掃除用具入れのドアも開け放ち、無人を確認した。

やっぱり完全に夢だった。

その場に座り込んでしまう僕。

「はあ、顔でも洗おう。」

ゆっくりうつむきがちに手洗い場まで歩き、前を見た。

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目の前の鏡には、真っ赤な手形が両頬についた自分の顔が映っていた。

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ダッシュでトイレから脱出して、店の外の水道で顔を必死に洗った。

それから思い付きで、ちょっと引いてる店員にこの店で何か事件が無かったか聞いてみた。

「事件って言ったって万引きは山ほどよ。」

思った答えは帰ってこない。

隠しているのか、本当なのか。

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やがてパトカーのサイレンが聞こえてきた。

慌てて飛び出た警察に、僕はおずおずと事の顛末を話すと、

警察は少しキレぎみで帰っていった。

僕だって納得いかず不機嫌で家に帰った。

家でくつろいでいると、不意にスマホが鳴った。

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でも、こんな着信音、知らない。

振動している右ポケットに手を入れた。

……なぜかネチャッとしている。

ゆっくりとスマホを取る。

血だ。血がべったりついている。

しかも……僕のスマホじゃ無い。

見覚えの無いボロボロになった熊のキーホルダーがついていた。

誰のかも分からないスマホはまだ呼び出している。

非通知からの電話。

よせばいいのに、なんだか、とても電話に出なければいけない気がして、

「…は、はい、……もしもし」

「……う…あ…」

「……どこからの…お、お電話ですか…」

「……ト」

「すみません、…あの…切りますね」

すると、いきなりはっきりした声で返事が

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「トイレの個室から」

Concrete
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