今回のお話は知り合いの絵梨花さんから聞いたお話です。
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最近、私はポケモンGOにはまりました。
私自身はスマホをもっていないのですが、あまりに世間の話題になっているので、興味が出てきました。
そこで普段ほとんど使っていない旦那の祖母のスマホを借りてやってみたところ面白くてはまってしまいました。
余りの楽しさにポケモン用にスマホを買おうかと考えたのですが、もちろん旦那に止められました。
それどころか私の過度なのめりこみ具合に危惧したのか、無課金の上にやっていい日を土曜日の空いてる時間だけに限定されてしまいました。
家事も仕事も忙しいので、旦那の言うことはもちろん正論だけど、ちょっと面白くなかったのでうじゃうじゃ出てくる芋虫のポケモンに旦那の名前をつけてやりました。
でも、そいつを進化させたら蜂のポケモンになって、プスプス刺すところもそっくりだけど、ちょっとフォルムがカッコよくなって複雑でした。
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そうして、土曜日限定のプレイでこつこつやってきたのですが、最近ミズキと名前を付けた一番お気に入りのポケモンが弱かったことが分かり絶望の淵に立たされました。
まさかおんなじ種族で強い奴と弱い奴がいるなんて思いもしませんでした。
反対にあまりに湧いてくるから、経験値稼ぎに進化させたアイと名付けた鳥のポケモンが意外に強いことが分かり、なんかむかつきました。
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ある日、私はあくまで健康のためと言い張り、土曜日の夜に一時間ほど家の周りをウォーキングに出ました。
もちろんポケモンGOのためですが、それは旦那も許してくれました。
ポケモンは公園でよく出るので、近くの公園を回っていきました。
そのうち、ある公園の前まで来たとき、その公園を見て思い出したことがありました。
私の娘は世間でいうところのいわゆる霊感の強い女の子なのですが、以前娘が変なのがいるから入りたくないと言って怖がった公園でした。
あの霊感の強い娘が言うんだから、本当に良くないところなんだろうと思い、その公園は入らずに行こうとしたのですが、ふとスマホの画面を見ると、近くにいるポケモンの欄に大きなとげとげのシルエットが・・・
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「げ、げげげ、げげげげげ、ゲンガーだ!!」
思わぬレアなポケモンの出現に慌てながらもうろうろ歩いてゲンガーの位置を特定しようとしたのですが・・・
どうも・・・目の前の公園の中のようでした。
「・・・ゲ、ゲンガーには代えられないよね、うん、さっとつかまえて、出てくれば大丈夫よ」
ゲンガーの誘惑には抗うことができず、私は恐る恐る公園の中に入っていきました。
早くしないとレアなポケモンは一定時間で消えてしまうので、私は大きな砂利の音を立てながら早足で公園の奥に進みました。
すると、公園の奥から若い女の人と小学生低学年ぐらいと思われる男の子が歩いて近づいて来るのが見えました。
その佇まいの不気味さにびくっとしましたが、私と同じ夜の散歩中の親子よと言い聞かせ、スマホ画面に集中していました。
すると、突然スマホの画面がとぎれとぎれに波打ち始めていました。
「えっ、なにこれ、こんな時に動作不良?」
衝撃でパニックになりそうなところだったのですが、正面から近づいてくる親子のおかしなところにも気が付いてしまいました。
「足音が・・・聞こえない」
私が公園で歩いた時はあんなに砂利の音がしたのに、前方のそれからは何にも足音が聞こえてきませんでした。
本気でやばいと思い、逃げようと思い立ったのですが、そのときスマホにポケモン発見の振動があり、画面にはレアポケモンのゲンガーの姿がありました。
私は心臓が破裂しそうになりながらも、現れたゲンガーをタップするのですが、指が震えて狙いが定まらないのと、指先のカサカサ乾燥でなかなか反応してくれませんでした。
その間にも足音のない親子はどんどん近づいてきました。
捕獲画面にさえ入れば、すぐにでも逃げるのに・・・私は涙目になりながらスマホ画面を狂ったようにタップし続けました。
「・・・ねえ、いっしょにあそぼ」
男の子の声は澱んでいました。
まるで水の底から聞こえてくるかのように・・・
そして見てしまいました。
街灯に淡く照らし出されたその親子はびしょびしょに汚く濡れていました。
そこで限界でした。
「うえええぇ、ごめんなさい!」
私はもう脇目もふらずに一目散に公園から逃げ出し、後ろも怖くて確認できないので、前だけ見て自宅に走って帰りました。
帰りながら旦那に電話をして塩の用意もお願いしました。
帰った後、事情を聴いた旦那から死ぬほど怒られ、スマホも取り上げられたのですが、泣きながら土下座して、ポケモンGO禁止だけは免れることができました。
作者ラグト
良い子は真似しちゃいけないお話です。
ちょっとシリーズ話数が増えてきましたので、わかりやすくするためにサブタイトルも付け加えました。